ふたりソロキャンプ 気持ち悪い？うざい？キャラクターへの賛否を深掘り！

「なんかこのキャラ…ちょっと気持ち悪いかも？」

そんな違和感から始まった違和感こそ、作品への深い入り口になることって、ありませんか。

『ふたりソロキャンプ』は、34歳のソロキャンパー・巌と20歳のヒロイン・雫の凸凹な距離感が話題を呼び、ネット上では「うざい」「無理」などの声も飛び交っています。

しかし、その“賛否両論”の奥にあるキャラクター構造や演出意図に気づいたとき、物語の印象はガラリと変わるんです。

今回は、そんな『ふたりソロキャンプ』のキャラ描写や感情表現に注目し、「気持ち悪い？うざい？」という評判の真相に深く踏み込みながら、原作ならではの奥行きも徹底的に掘り下げていきます。

『ふたりソロキャンプ』とは？原作とメディア展開の全貌

原作漫画の基本情報と物語構造

『ふたりソロキャンプ』は、出端祐大による青年漫画で、2018年から2023年にかけて講談社の『イブニング』『Comic Days』『モーニング』と掲載媒体を移しつつも連載された作品です。全20巻という長期連載にもかかわらず、読者から根強い支持を集め続けたのは、ただの“キャンプあるある”や“癒しグルメ”にとどまらない、キャラクター同士の繊細な心理劇が背景にあるからだと私は感じています。

主人公・樹乃倉巌（きのくらいわお）は、ひとりキャンプに没頭する無骨な34歳の男。ある日、強引で天真爛漫な女子大生・草野雫（くさのしずく）に絡まれ、なんだかんだで一緒にキャンプをするハメになります。「他人とキャンプなんてありえない」と豪語していた巌が、次第に雫との距離を縮めていく──そんな構図自体は王道なんですが、表面的な“仲良し描写”を避けて、あえてギスギスした空気感や、沈黙の間を丁寧に描いているのがこの作品の味なんです。

キャンプという“自然の中の孤独”が舞台である以上、会話よりも無言の時間や仕草に意味が宿る。巌のこだわりのギア、無骨な焚き火調理、雫の突拍子もない発言──そのどれもが、ふたりの“心のズレ”と“近づいていく予感”をじわじわと伝えてくる構成になっています。

特筆すべきは、連載の中盤以降で垣間見える“巌の過去”と“雫の本音”の変化です。巌は過去に人との関わりで深く傷ついたことがあり、孤独を選んだわけではなく“孤独に逃げた”人物として描かれます。その彼が、雫という陽の存在に引っかき回されながらも再び他人との関わりに向き合っていく……この構造が胸に沁みるんですよね。

そして、原作ではその心理の変遷がセリフだけでなく、表情・仕草・料理のチョイスにまで落とし込まれていて、何気ない1コマ1コマがすごく深い。たとえば、ある巻で巌が“他人のために多めに作ったスープ”を黙って差し出すシーンがあるんですが、それってもう完全に“好き”ってことでしょ……と、思わず声に出してしまいました。

このように『ふたりソロキャンプ』は、表面的には“年の差ラブコメ風キャンプマンガ”に見えて、内実は“再生と自己開示の物語”になっている。読むほどに、キャラの言動ひとつひとつの意味を深読みしたくなる構造が仕込まれているんです。

ドラマ・アニメ版の評価と注目点

実写ドラマは2025年1月から放送され、主演は森崎ウィン（巌役）、本田望結（雫役）という注目キャスト。さらに2025年7月からはアニメ版も放送スタート。制作はSynergySPで、TOKYO MXほかでの放送とCrunchyrollでの配信が予定されています。

実写版は「キャンプロケが本格的」「キャンプ飯が美味そう」と、視覚的な満足度は高い一方で、「演技が浮いている」「雫のキャラがうざく見える」といった賛否両論も浮上しています。この“賛否”こそ、作品の魅力を浮き彫りにする鏡のようなもの。キャラの言動が“わざとらしい”と感じるのは、それだけ感情をリアルに描いているからなんですよ。

アニメ版への期待は、「表情演技の補完」「セリフの間」「音楽と焚き火の音」がどこまで“ふたりの間に流れる空気”を再現できるかにかかっています。漫画では1コマの余白や沈黙が物語っていた部分を、アニメは音と動きでどこまで翻訳できるのか──そこが最大の見どころだと私は思っています。

そして原作ファンとして注目すべきは、“心の声”の扱い。巌は外見以上に繊細で、作中では多くのモノローグで本音が描かれます。この“脳内独白”がアニメでどう演出されるかによって、視聴者のキャラへの印象は大きく変わるでしょう。うまくいけば、「気持ち悪い」から「共感できる」へと印象がガラリと変わる瞬間になるはず。

実写・アニメと展開することで、原作の“行間に宿る感情”がどこまで届くのか。その試金石として、今まさに『ふたりソロキャンプ』は新たな局面を迎えています。

なぜ「気持ち悪い」「うざい」と言われるのか？

巌のキャラ造形と演出が与える印象

『ふたりソロキャンプ』の主人公・樹乃倉巌（きのくらいわお）は、34歳の無骨なソロキャンパー。見た目も性格もゴツくて無愛想、他人との距離を極端に保ちたがる“孤高キャラ”として描かれています。原作漫画の中では、まるで誰とも交わりたくないかのように焚き火をいじり、酒を飲み、食事を黙々と楽しむ巌。その姿が“硬派でカッコいい”と映る一方で、一部読者からは「偏屈すぎて無理」「こだわりが気持ち悪い」といった声も。

特にSNSやレビューサイトでは、「一人でブツブツ語る姿が怖い」「飯を食ってる時の表情が変態みたい」といった鋭い反応もありました。これは、巌の「独り言を通じて本音を語る構造」や「無骨さを強調する描写」が、見る人によっては“過剰に感じられる”からこそでしょう。わかります、あの“クチャっ”とした咀嚼描写や、食後の満足げな顔は、確かに人を選ぶんです……。

でもここで忘れてはいけないのは、巌という人物の“傷”です。原作では徐々に明かされるんですが、彼は過去の人間関係で心に深いトラウマを負っており、今の“孤高な自分”はそれを守るための鎧なんですよね。だからこそ、読者によっては「気持ち悪い」と映る部分こそが、本質的には“人間臭さ”の証拠とも言える。

この“過剰なリアリティ”をどう受け止めるかは、読者の価値観や読書体験に委ねられているのだと思います。たとえば、巌の独特な食事描写も、「ソロキャンプの醍醐味が詰まってる」「料理愛が伝わる」と高評価する読者も少なくありません。ある意味で『ふたりソロキャンプ』は、“キャラクターを好きになれるかどうか”で、作品全体の印象が180度変わる稀有な作品なのかもしれません。

私自身、最初は「巌、ちょっとクセ強すぎない？」と距離を感じていた側ですが、読み進めるうちに「この不器用さが愛しい」と思えるようになっていったんですよ。人間って、完璧よりも、どこか不器用で抜けてる方に心を預けたくなる瞬間ってあるじゃないですか。巌はまさに、そんな“じわじわと好きになる”キャラなんです。

雫の“押しかけヒロイン”像に対する賛否

もうひとつ、賛否を大きく分けているのが、ヒロイン・草野雫のキャラクターです。20歳の女子大生で、ノリと勢いで巌に「キャンプに連れてってください！」と頼み込み、勝手に食材を持ってきて、一方的に居座る。いわゆる“押しかけヒロイン”タイプの典型的な立ち回りですが、それゆえに「うざい」「図々しい」「なぜ巌が許すのか分からない」といった厳しい評価が目立ちます。

これはある意味、今の時代ならではの感性の反応かもしれません。かつてのラブコメでは、こうした“グイグイくる系ヒロイン”がある種のテンプレとして愛されていましたが、現代読者の一部には「自立していない」「空気を読まない」と感じられるのかもしれません。

でも原作を読んでいて私が感じたのは、雫の“強引さ”はただのテンプレじゃないということ。彼女もまた、巌に惹かれつつも自分の居場所を探している不安定な若者として描かれていて、その一見「空気読めない」行動の奥には、“つながりたいけど不器用なまま突っ込んでしまう”感情が滲んでるんです。

特に印象的なのが、雫が一人で焚き火をつけようとして失敗し、泣きそうになるシーン。そこには、ただの“お調子者ヒロイン”とは違う、ちゃんと傷ついてる等身大の女の子が描かれていました。だからこそ、彼女の言動にイライラすることがあっても、私はどこかで「この子、放っておけないな」と思ってしまうんです。

最初は“うざい”と切り捨てられがちな雫ですが、読み進めると「実は誰よりも素直で、人と向き合おうとする姿勢」が見えてくる。巌とは真逆の性格だけど、だからこそ惹かれ合うという構図もまた、美しいバランスで描かれています。

年の差恋愛・キャンプ描写は受け入れられるか

34歳×20歳の関係性に漂う微妙な温度差

『ふたりソロキャンプ』を語る上で外せないのが、主人公・樹乃倉巌（34歳）とヒロイン・草野雫（20歳）という14歳差の年の差設定です。この年齢差があるからこそ、作中で描かれるふたりのやりとりには、どこか噛み合わない温度感や、埋めきれない“時差”が漂っている。そしてそれが、視聴者や読者から「気持ち悪い」「不自然」「どうしてそうなるの？」という違和感として跳ね返ってきているのも事実です。

特にSNSでは「30代男が女子大生とキャンプするのはリアルじゃない」「倫理的に危うく見える」といった声も多く見受けられます。年の差恋愛モノには常につきまとう“気持ち悪い”というラベル──これは単なる好みの問題ではなく、現代社会が抱えるジェンダー感覚や年齢ギャップに対する敏感な反応でもあるのだと思います。

けれど、この作品の面白いところは、あえて“歳の差ゆえの噛み合わなさ”を誤魔化さず、正面から描いている点にあります。巌は終始、「お前は若すぎる」「俺とは住む世界が違う」と突き放そうとするし、雫もそんな巌の冷たさに時に拗ね、時に食い下がる。その対話の一つひとつが、「年齢差」というテーマに対して誠実に向き合っている証なんです。

たとえば、雫が巌に対して「もっと笑えばいいのに」と無邪気に言う場面。巌はそれに対し、「簡単に笑えるような生き方、してきてない」とポツリと返す。若さゆえの無垢な感情と、年齢を重ねたがゆえの重さ。この交差こそが、このふたりの関係性の“切なさ”や“リアル”を生み出していると私は思います。

この14歳差は、単なる恋愛のスパイスではなく、“人生のタイミングが違う者同士が交わろうとする物語”そのものなんです。だからこそ、「うざい」「気持ち悪い」と一言で片づけるには、あまりにももったいない。年の差を描くことの意味が、物語全体にきちんと織り込まれていると感じました。

キャンプという舞台が持つ“濃密な距離感”演出

そしてもう一つ、この物語の“違和感”が際立つ理由に、舞台設定の巧妙さがあります。ソロキャンプというシチュエーション。これ、普通のラブコメのような学校や職場と違って、逃げ場のない“濃密な距離感”が発生するんですよ。

広い自然の中で、テント一張りの空間。焚き火を囲んで、食事を作って、夜は一緒に過ごす。日常から切り離された“非現実の中の現実”が、ふたりの距離をぐっと縮めてしまう。それは同時に、相手の息遣いやクセ、価値観が否応なく見えてしまう舞台でもある。キャンプって、実はラブコメにおいてものすごく“リアルな関係性”を描くのに適した舞台なんです。

『ふたりソロキャンプ』がユニークなのは、そうした環境を利用して“言葉じゃなく、沈黙や行動で関係性を描く”ことに成功している点。たとえば、巌が雫に何も言わずにコーヒーを淹れて渡す場面。言葉で「気を遣ってるよ」と言うよりも、その一杯の湯気が感情を語っている。

また、キャンプ道具の選び方や焚き火の組み方ひとつにも、それぞれの性格や価値観がにじみ出ているのも面白い。巌は無骨で効率重視、雫は直感と楽しさ優先。この“違い”を互いが受け入れていく過程こそが、物語の進行に呼応しているんです。

つまり、“ふたりきりのキャンプ”というシチュエーション自体が、年齢差や価値観のズレをあぶり出す鏡のような装置になっている。そしてその装置の中で、ふたりがどんな距離の取り方をするのか──それを見届けることこそが、この作品の最大の魅力なんです。

“うざい”は計算？キャラの裏設定と感情構造

巌の不器用さはトラウマが原因？原作で語られる背景

『ふたりソロキャンプ』の主人公・樹乃倉巌（いわお）の“うざさ”は、本当にただの性格の問題なのか。原作を丁寧に読み込むと、そこには明確な“理由”が仕込まれていることに気づきます。巌は過去に深く人間関係で傷ついており、その経験が彼の現在の「ソロ」スタイルの源になっている──つまり、孤独を選んだのではなく、“孤独に逃げざるを得なかった”人物なんです。

物語の中盤以降、巌の口から少しずつ語られる過去。それは“信じていた人に裏切られた記憶”や“居場所をなくした経験”に繋がっていて、彼が人との距離を極端に取るのも、「また裏切られたくない」「自分が傷つきたくない」という防衛本能から来ているのが分かるんです。

読者の中には「なんでそんなに頑ななんだよ」「いい歳して素直になれよ」と感じる人も多いかもしれません。でも、それは“巌という人間がまだ癒されていない”証拠でもある。感情のカサブタがめくれるたびに、その下から滲んでくる人間らしさ。私はそこに、ただの無骨キャラとは一線を画す、深い情感を感じました。

そしてこの“不器用さ”を意図的に描いているのが、原作の巧妙な点です。たとえば、雫が何気なく発した「誰かと一緒に食べると美味しいですね」という一言に、巌が固まるシーン。この反応、普通なら「そうですね」で終わる会話なのに、巌はそれすら返せない。彼の中で、言葉ひとつ交わすことすら“覚悟”なんですよね。

このように、巌の“気持ち悪い”“うざい”とされる描写の裏には、しっかりと構築された感情の履歴書がある。そこに気づくかどうかで、この作品の見え方は180度変わると、私は思っています。

雫の“強引さ”に隠された想いと視点の反転

一方、ヒロインの草野雫は、その“押しの強さ”ゆえに「図々しい」「空気読めなすぎ」とたびたび批判されがちな存在です。たしかに初見では、「なんでこんなにしつこいの？」「距離感近すぎない？」と思ってしまう。その反応はごく自然です。私も最初は「ぐいぐい来るな〜！」と、やや引き気味に見ていました。

でも、雫というキャラクターは、ただの“お調子者”ではありません。彼女もまた、家庭環境や自身の孤独を背負ったうえで巌に近づいている。その証拠に、原作では彼女の過去や心の寂しさが描かれるシーンがいくつもあります。雫の“うざい”行動は、実は“自分を見てほしい”“ここにいてもいいと思わせてほしい”という、切実な願いの裏返しなんです。

それを象徴するのが、ある夜のキャンプシーン。雫が巌に「そろそろ、私のことちょっとだけ認めてくれてもいいんじゃないですか？」と笑って言う場面。ここ、グッときました。言葉こそ軽めですが、その裏には「自分の居場所を探している」彼女の本音がにじんでいる。

視点を変えれば、雫の強引さは“本気で誰かと向き合おうとする力”の現れです。巌が自分を閉ざしているからこそ、彼女は明るく、まっすぐぶつかっていく。その結果として「うざい」と思われることもあるけれど、それってむしろ、彼女が誰よりも“巌に真剣”である証なんですよね。

だから私は思うんです。“うざい”っていう評価は、実はキャラの感情が真に迫ってる証明でもある。感情の輪郭が濃いからこそ、人の反応も強くなる。雫の行動にイラッとしたとしたら、それは彼女が“キャラを超えて生きている”証拠なんじゃないでしょうか。

原作でしかわからない“伏線”と読者への問いかけ

モノローグと間で描かれるキャラの心の揺れ

『ふたりソロキャンプ』をアニメやドラマで楽しんでいる方にこそ、私は声を大にして伝えたい。「原作を読んだ方が、もっと深くキャラの心に触れられる」と。なぜならこの作品、セリフの“間”や“モノローグ”、つまりキャラの“言わなかったこと”こそが本当の物語の核になっているからなんです。

たとえば巌が雫を前にして何も言わず、焚き火を見つめるだけのシーン。ドラマでは無言、アニメでは音楽や効果音で処理されるその瞬間、原作ではふとした“心の声”が挿入されます。「……バカみたいだな、俺」──たった一行だけど、それが入ることで巌の内面がまるで別人のように感じられる。こうしたモノローグの存在が、作品の温度を決定的に変えているんです。

また、表情の“微差”が描き込まれているのも原作の大きな魅力。巌の眉の角度、唇の揺れ、雫の目線の方向。たとえばある巻では、雫が少しだけ巌に背中を向けて泣きそうになるシーンがあるんですが、そのコマにはセリフもモノローグもありません。でも、読者には伝わるんです。「あ、これ、自分を強く見せようとしてるな」って。まるで行間から感情が滲み出てくるような表現力、それこそが原作漫画ならではの醍醐味なんですよね。

巌と雫、ふたりの気持ちが完全に交わることはない。でも、その交わらなさを埋めようとする“もどかしい心の揺れ”が、この作品をただのラブコメに留めない重層性を持たせています。そしてそれを最も繊細に、最も豊かに伝えてくれるのが、原作なんです。

原作を読むと、何気ないシーンのひとつひとつに「えっ、こんな気持ちだったの!?」という再発見がある。映像だけでは届かない“心の湿度”まで感じ取れるんですよ。私は正直、原作を読んでから改めてドラマを観たとき、全然違う物語に見えました。たぶんそれは、キャラクターの“沈黙の裏”が見えるようになったからなんだと思います。

“嫌われヒロイン”が“愛されヒロイン”になるまで

草野雫は、最初の登場時からかなりインパクトのあるキャラクターです。「うざい」「図々しい」「テンプレすぎ」と言われがちで、初見ではなかなか感情移入しづらいのも事実。でも、原作を読み進めると、その評価が徐々に変わってくる。むしろ「彼女がいなければ、この物語は始まらなかった」と思えてくる瞬間があるんです。

そのターニングポイントとなるのが、原作6巻から7巻にかけて描かれる、雫の“本音の吐露”の場面。普段は明るく軽やかにふるまう彼女が、自分の孤独や家族との関係、自分が「誰かに必要とされたい」と願っていることをぽつりと語る。ここで初めて、読者は“うざい”と感じていた行動の裏側にある「自己肯定感の低さ」や「居場所のなさ」を知るんです。

そしてそれが見えた瞬間に、雫というキャラクターがガラリと変わる。彼女の明るさが“作られたもの”だったと気づいたとき、それまでの“騒がしさ”がむしろ愛おしく感じられるようになる。私はこのとき、雫のことが一気に好きになった。ああ、この子、めちゃくちゃ頑張ってたんだなって。

『ふたりソロキャンプ』は、読者の“キャラへの視点”が変化していく物語でもあります。最初は表層的なイメージでラベリングされるキャラたちが、読み進めるごとにどんどん“別人”のように見えてくる。その変化を体験するには、やっぱり原作という媒体がいちばん適しているんです。

アニメやドラマだけでは分からない、“嫌われヒロイン”が“愛されヒロイン”に変わるまでの過程。そこには、誰もが経験する「分かってほしい」「受け入れてほしい」という願いが詰まっていて、だからこそ読者の心を打つ。雫の“うざさ”は、感情がむき出しであることの証。そして、それこそがこの作品のリアルで、愛おしいところなんです。

考察まとめと、原作を読むべき決定的な理由

アニメ・ドラマでは描ききれない余白の魅力

『ふたりソロキャンプ』という作品の本質は、“言葉にならない想い”にあります。アニメやドラマでは、その表情やセリフ、演技で多くの感情を描こうとしてくれているけれど──それでも、どうしても描ききれない「余白」があるんです。それは、原作漫画にしか宿らない“行間の温度”と“沈黙の意味”。

巌がふと目をそらしたとき、雫が言いかけてやめたとき。その一瞬に込められた“感情の揺れ”は、原作では絵とコマの間に生きている。たとえば、料理をシェアする場面で、巌が少しだけスプーンを雫の方に向ける。それだけの動作に、「いつの間にか、ふたりの距離が近づいていた」ことが込められているんです。

アニメやドラマも素晴らしい表現媒体ですが、映像ゆえに“見せすぎてしまう”側面があります。一方、原作漫画は「読者が想像して補完すること」を前提に作られているからこそ、自分自身の経験や感情を乗せて読める。だから、同じシーンでも人によって全然違う意味に感じられる。この“余白”があるからこそ、『ふたりソロキャンプ』は何度でも読み返したくなる作品なんです。

私はこの原作を読むたびに、「あ、前に読んだときは気づかなかったな」という発見があります。それって、キャラが成長してるんじゃなくて、自分の方の目線が変わったってことなんですよね。読む側の変化まで受け止めてくれる作品って、そう多くはありません。

だからこそ、アニメやドラマで興味を持った人にこそ、原作を読んでみてほしい。ふたりの言葉の裏側、目線の意味、沈黙の理由──そのすべてが、ページの中で静かに、でも確かに語られているから。

キャラの印象が180度変わる、ある1巻の決定的シーン

『ふたりソロキャンプ』の真価が一気に開く瞬間。それが訪れるのは、原作第7巻の中盤──巌が雫の存在を“受け入れる”決定的なシーンです。それまでは頑なに拒絶してきた巌が、焚き火の前でそっと言葉を漏らす。「……お前といると、悪くない」たったそれだけ。でも、その一言に至るまでに、どれだけの葛藤と感情が積み重ねられてきたか……もう、胸がぎゅっとなりました。

このセリフは、アニメやドラマでも演出されるでしょう。でも、原作ではその前後の“空白のコマ”と、巌の目線の変化、手の動き、そして何より“ページの間”に詰まった感情が、読む側の心に静かに、そして鋭く刺さってくるんです。

また、雫の側にも同じような変化があります。彼女がただの“押しかけヒロイン”から、“対等な相手”として巌に向き合おうとする、その決意が語られる場面──それが描かれるのが原作9巻。自分の弱さも認めて、でも巌の中にある“強さ”を信じて、そっと手を差し出すあのシーン……私は何度もページをめくっては戻り、また読んでしまいました。

キャラクターの印象がガラリと変わる瞬間。それは一気に来るのではなく、じわじわと、でも確実に心を染めてくる。その積み重ねがあるからこそ、「このふたりの物語をもっと見届けたい」と思えるんです。

原作は、巌と雫の“これまで”と“これから”を、時間をかけて、丁寧に描いてくれます。そしてその描写の細やかさが、「うざい」「気持ち悪い」と感じていた読者の印象すらも、静かにひっくり返してくれる。その体験こそが、『ふたりソロキャンプ』という作品の、最大のごちそうなんじゃないかと思います。