『薬屋のひとりごと』で猫猫と壬氏が恋愛感情を伴うキスを交わすのは、原作小説5巻の最終話です。アニメでは第12話の間接キス、第35話の人工呼吸が描かれていますが、それぞれ意味の異なる接触です。
あれほど壬氏を避けていた猫猫が、少しずつ彼の気持ちを受け止めていく。その変化を追うと、キスそのものよりも、二人が口にできなかった感情の重さに胸を締め付けられます。
『薬屋のひとりごと』キスシーンは何巻何話?小説・漫画・アニメを整理
『薬屋のひとりごと』のキスシーンを探すと、原作小説1巻、3巻、5巻という異なる答えが出てきます。
これは情報がすべて食い違っているわけではありません。指先を介した間接キス、救命のための人工呼吸、恋愛感情を伴う直接のキスが、それぞれ別の場面として存在するためです。
まずは確認しやすい収録先を整理しておきます。
場面 原作小説 漫画・アニメ
指先を介した間接キス 1巻最終話 ガンガン版4巻・サンデーGX版3巻・アニメ12話
滝つぼ脱出後の人工呼吸 3巻19話 ガンガン版12巻63話・サンデーGX版13巻51話・アニメ35話
壬氏から猫猫への直接のキス 5巻最終話 アニメ第2期までには未登場
猫猫から壬氏への自発的なキス 小説12巻以降の展開 アニメ第2期までには未登場
ここで注意したいのは、『薬屋のひとりごと』には漫画版が2種類あることです。
ねこクラゲさんが作画を担当するスクウェア・エニックスのビッグガンガン版と、倉田三ノ路さんが作画を担当する小学館のサンデーGX版では、同じエピソードでも収録巻数が異なります。
そのため、漫画の巻数だけで調べると目的のシーンにたどり着けないことがあります。
なお、原作小説の後半に登場するキスについては、Web掲載版と書籍版の違いや、紹介記事ごとの場面の数え方にも注意が必要です。猫猫からの口づけは12巻以降の展開として紹介されますが、13巻の15〜16話付近を挙げる資料もあります。
ただ、物語の大きな流れは共通しています。
壬氏が先に距離を縮めようとし、やがて猫猫自身も彼へ近づくようになる。
この変化こそが、二人の関係を読み解くうえで最も重要なのだと僕は思います。
アニメで最も話題になったのは第35話「狩り」
2026年8月5日、ABEMA TIMESのアニメニュースでは、第35話の人工呼吸が改めて取り上げられました。
壬氏役は大塚剛央さん、猫猫役は悠木碧さん。二人が命の危機に直面する場面で、壬氏が猫猫へ人工呼吸を行います。
視聴者からは、人工呼吸でありながらキスのように見えることへの興奮や、猫猫を抱えて滝つぼに飛び込む壬氏の行動を称賛する反応が寄せられたと報じられています。
ただし、この場面を恋愛上の初キスと呼ぶかは慎重に区別したいところです。
目的はあくまで猫猫を救うこと。二人の恋愛関係が成立したことを示す場面ではありません。
それでも、僕にはこの人工呼吸が非常に大切な転換点に見えます。
なぜなら、いつも美しい表情で周囲を翻弄する壬氏が、その瞬間だけは自分をどう見せるかなど気にしていられなかったからです。
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アニメ12話の間接キスはなぜ重要?壬氏が猫猫に見せた初めての本音
最初に振り返りたいのは、アニメ第12話「宦官と妓女」です。
原作小説では1巻の最終話、サンデーGX版では3巻13話、ビッグガンガン版では4巻にあたります。
このエピソードで描かれるのは、後宮を解雇された猫猫と、彼女を失った壬氏の再会です。
壬氏は猫猫を後宮から去らせることになり、後悔を抱えていました。
本当はそばにいてほしかった。けれど、猫猫自身が何を望んでいるのかを十分に理解できなかったのです。
そんな壬氏を見かねた高順の働きかけによって、二人は緑青館で再び顔を合わせます。
そこで壬氏は、妓女として働く猫猫に触れようとします。
しかし、猫猫は簡単には応じません。
この距離感が、いかにも二人らしい。
壬氏が一歩踏み込もうとすると、猫猫は半歩引く。けれど、完全に拒絶しているわけでもないのです。
猫猫の唇に触れた指へ壬氏が口づけする
やがて壬氏は、猫猫の唇に自分の指を触れさせ、その指を自分の唇へ運びます。
直接唇を重ねるわけではありません。
それでも、指先を通じて間接的に触れ合うという、非常に大胆な行動でした。
猫猫も思わず顔を赤らめます。
普段の猫猫は、壬氏の美貌にも甘い態度にも、ほとんど動じません。
むしろ面倒な相手を見るような目を向けることさえあります。
ところが、この場面では一瞬、その冷静さが揺らぐ。
僕が興味深いと思うのは、壬氏が単に猫猫を照れさせたことではありません。
彼は自分の美しさを利用することに慣れている人物ですが、猫猫に対しては、その武器がなかなか通用しない。
だからこそ、再会の喜びをうまく言葉にできず、あのような回りくどい接触を選んだのではないでしょうか。
間接キスは壬氏にとって、自分を意識してほしいという願いの表れだった。
僕にはそう見えます。
猫猫が頬を赤らめた瞬間、壬氏はようやく、彼女の心にも自分が入り込める余地があると感じたのかもしれません。
けれど、ここで二人が恋人になるわけではありません。
その先には、もっと深刻な事情が待っています。

アニメ35話の人工呼吸は実質キス?滝つぼで壬氏が見せた覚悟
第12話の間接キスが駆け引きだったとすれば、第35話「狩り」の人工呼吸は、その駆け引きが通用しなくなった瞬間でした。
原作小説では3巻19話、ビッグガンガン版では12巻63話、サンデーGX版では13巻51話にあたる場面です。
第35話はアニメ第2期の第11話に相当します。
物語の舞台は、子昌に招かれた狩りの場です。
壬氏は事情があって覆面をつけており、食事の席でも自由に飲食できませんでした。
暑さも重なり、体調を崩してしまいます。
心配した猫猫は、高順からの指示を受けて壬氏の様子を確認しに向かいました。
ここまでは、いつもの二人の関係にも見えます。
体調の悪い人間がいれば、薬師として状態を確認する。それが猫猫にとって自然な行動だからです。
しかし、二人が移動しようとしたところで状況は一変します。
何者かが銃撃してきたのです。
猫猫を抱えた壬氏は滝つぼへ飛び込んだ
襲撃を受けた壬氏は、猫猫を両腕で抱え上げます。
そして、驚かせることを短く詫びながら、滝つぼへ身を投じました。
普通なら、ここでためらいが生まれても不思議ではありません。
滝つぼへ飛び込むこと自体が危険であり、相手を抱えたままでは自由に動くことも難しいからです。
しかし、壬氏はその選択をします。
猫猫を置いて逃げるという選択肢が、彼の中になかったのでしょう。
二人は滝の裏側にある洞窟へ逃れますが、猫猫は水を飲んで溺れ、意識を失ってしまいます。
そこで壬氏が行ったのが人工呼吸でした。
ABEMA TIMESの2026年8月5日付の記事でも、アニメ映像の16分23秒ごろから確認できる印象的な場面として紹介されています。
唇が触れ合う様子から、視聴者の間では実質的なキスだと受け止める声が広がりました。
もちろん、人工呼吸は救命行為です。
相手への恋愛感情を示すための行動ではなく、生命を守ることが第一の目的にあります。
それでも、壬氏が迷わず猫猫を救おうとする姿には、彼女を失いたくないという強い思いがにじんでいます。
なぜ人工呼吸の場面は特別なのか
僕がこの場面で忘れられないのは、壬氏の行動から普段の余裕が消えていることです。
第12話で彼は、自分の魅力も相手との距離も計算しながら、猫猫を翻弄するように振る舞っていました。
ところが第35話では、そのような余裕がありません。
猫猫が意識を失っている以上、相手からどんな反応が返ってくるかを楽しむこともできないのです。
ただ、息を吹き返してほしい。
その一点に行動が集中しています。
そして猫猫が意識を取り戻したあと、壬氏は自分の行為について申し訳なさそうな態度を見せます。
ここも見逃せません。
あれほど猫猫へ近づきたがっていた人物が、ようやく唇を重ねる形になった場面で、喜ぶのではなく気まずさを覚えている。
自分の望みと、相手の命を救うための行為を混同したくなかったのではないでしょうか。
猫猫を大切に思うからこそ、彼女の意思を伴わない接触には複雑な感情が残る。
そう考えると、人工呼吸のあとの気まずさにも、壬氏らしい不器用さが見えてきます。
恋愛的な初キスではない。
でも、壬氏が猫猫をどれほど大切にしているかが、言葉以上にはっきり表れた場面だったと思います。

原作小説5巻のキスは何が違う?嫉妬した壬氏と猫猫の反撃
では、恋愛感情を伴う直接のキスはどこで描かれるのでしょうか。
答えは、原作小説5巻の最終話です。
この場面では、壬氏の妃候補に関わる食事会が開かれます。
壬氏にとって、特別な相手はすでに猫猫でした。
しかし、猫猫はそのことを、壬氏が望むほど単純には受け止めていません。
そして宴の場で、猫猫はほかの男性と踊ることになります。
その姿を目にした壬氏の感情が大きく揺れ動くのです。
壬氏の嫉妬が抑えきれなくなる
壬氏は猫猫が妃候補の一人であることを示そうとし、強引にキスをします。
ここで注意したいのは、この接触をただ情熱的な恋愛表現として片づけることはできないという点です。
壬氏には強い嫉妬があり、同時に猫猫を自分の望む関係へ引き寄せたいという焦りも感じられます。
相手の意思を十分に確かめずに距離を詰める行為には、問題もあります。
その危うさまで含めて、壬氏という人物の感情が露わになる場面だと思います。
彼はこれまで、身分や容姿、立ち居振る舞いによって周囲の反応をある程度コントロールできる立場にいました。
しかし、猫猫だけは違います。
壬氏が何を望んでいても、彼女には彼女自身の考えがあります。
しかも猫猫は、壬氏が思うほど恋愛関係を最優先にしていません。
だから壬氏は焦るのでしょう。
どれほど近づいても、猫猫が本当に自分を選んでくれる保証がないのです。
猫猫の反撃が二人の関係を変える
一方、猫猫もただ圧倒されるだけではありません。
花街の緑青館で育った彼女は、妓女たちから人の心を揺さぶる振る舞いを学んでいます。
壬氏に迫られた猫猫は、その知識を生かして反撃するのです。
ここが実に猫猫らしい。
普段は恋愛感情を表に出さない彼女ですが、いざとなれば相手を動揺させる方法を知っている。
しかも壬氏のような人物に対して、それを実行できる。
壬氏が一方的に主導権を握る場面にはならないのです。
僕は、この反撃に二人の関係の可能性を感じます。
猫猫は壬氏の思いどおりに扱われる存在ではありません。
どれほど身分に差があっても、彼女は自分の意思や判断を簡単には手放さないのです。
その一方で、壬氏の感情を理解しているからこそ、彼を動揺させることもできる。
二人の距離は縮まりますが、まだ安定した恋人関係になったとはいえません。
むしろ、このキスによって、二人が抱える感情の複雑さがはっきり見えてくるのです。
猫猫から壬氏へのキスはいつ?受け身だった彼女の心の変化
壬氏から距離を縮める場面が続いていた二人ですが、原作小説の後半では猫猫自身が口づけをする展開も描かれます。
関連する紹介記事では、小説12巻から13巻にかけての場面が取り上げられています。
なかでも印象的なのは、休んでいる壬氏へ猫猫が自分から近づくことです。
それまでの猫猫は、壬氏からの好意に対して距離を置くことが多い人物でした。
彼の容姿を美しいと認識していても、それだけで態度を変えることはありません。
まして、権力者との恋愛には非常に慎重です。
そんな彼女が、自分から相手に触れようとする。
僕には、この変化が直接のキス以上に大きな意味を持っているように思えます。
猫猫はいつから壬氏を好きになったのか
猫猫が壬氏へ特別な感情を持ち始めた瞬間を、一つの場面だけで特定するのは難しいでしょう。
そもそも猫猫は、自分の感情を恋愛という言葉で整理することに積極的な人物ではありません。
相手を心配すること。
相手の体調を気にかけること。
相手の置かれた立場を考えること。
こうした行動が、少しずつ積み重なっていきます。
だからこそ、後半で猫猫自身が行動を起こすことには大きな価値があります。
壬氏が望んだから応じた、というだけではない。
猫猫にも、壬氏へ近づこうとする意思が生まれているのです。
ただし、猫猫の感情を壬氏と同じ熱量の恋愛感情だと決めつけるのも違う気がします。
壬氏の愛情が目に見える炎だとすれば、猫猫の愛情は、表面からは分かりにくい熱のようなものです。
大きく燃え上がることはなくても、完全に冷めているわけではない。
彼女が自分から距離を縮めたという事実は、その静かな熱が行動として表れた瞬間なのかもしれません。
壬氏が眠っている場面に意味がある
ここで注目したいのは、猫猫が自分から口づけをする相手が、休息している壬氏だという点です。
普段の壬氏は、猫猫へ近づくためにさまざまな表情や態度を見せます。
ときにはからかい、ときには拗ね、ときには強い嫉妬を露わにします。
しかし、眠っているときには、そのような駆け引きはありません。
猫猫が向き合うのは、誰かに何かを要求する壬氏ではなく、ただそこにいる一人の人間です。
僕は、この構図にとても惹かれます。
相手の反応を計算しなくても、自分から近づきたい。
そうした気持ちが生まれているのだとすれば、それは猫猫にとって相当に大きな変化でしょう。
もちろん、眠っている相手への接触には同意という問題もあるため、無条件に理想的な行為として描くべきではありません。
それでも物語上は、猫猫の側にも積極的な感情が育っていることを読み取れる場面です。
相手の働きかけに反応するだけだった彼女が、自分の気持ちによって行動する。
この変化が、二人の関係を一段深いものにしているのではないでしょうか。

壬氏と猫猫は結婚する?キスしても簡単に結ばれない理由を考察
ここからは、原作小説の進んだ展開にも触れながら、二人の関係について僕なりに考えてみたいと思います。
まず重要なのは、壬氏と猫猫の間には、恋愛感情だけでは乗り越えられない問題があるということです。
壬氏の本名は華瑞月。
表向きは皇帝の弟であり、皇位継承に関わる立場にあります。
一方の猫猫は、花街で育ち、薬師としての知識を持つ女性です。
彼女は後宮の複雑な人間関係や、権力に近づくことの危険性をよく理解しています。
二人が惹かれ合ったとしても、それだけで結婚を決められる状況ではありません。
壬氏が自分の体に焼印を入れた理由
原作では、壬氏が自分の体に焼印を入れるという衝撃的な行動も描かれます。
この行動には、玉葉后とその息子をめぐる皇位継承の問題が深く関わっています。
玉葉后の息子にも皇位継承に関わる立場があり、壬氏が子どもを持つことになれば、政治的な対立が生まれる可能性があります。
猫猫は、玉葉后にとって敵となるような状況を避けたいと考えています。
壬氏もまた、自分の立場が猫猫との未来を難しくしていることを理解しています。
そこで彼は、玉葉后に関わる焼印を自分の体に刻むという行動に出るのです。
その意味は、単に恋人への愛情表現という言葉では片づけられません。
政治的な立場、自分の将来、そして他者にどう見られるかという問題が絡んでいるからです。
僕はここに、壬氏の愛情の危うさを感じます。
猫猫と共にいるためなら、自分自身の立場や体さえ犠牲にしかねない。
それは強い覚悟である一方、相手に大きな心理的負担を与える行動でもあります。
猫猫は、誰かにすべてを捨ててもらうことを望んでいるのでしょうか。
僕には、そう単純な話には思えません。
綺麗な恋愛に見えて、実は二人とも何かを失うことを恐れている
壬氏が猫猫を追いかけ、猫猫が少しずつ心を開いていく。
その流れだけを見れば、身分差を乗り越える美しい恋愛物語に見えるかもしれません。
しかし僕は、この関係を単なる純愛として受け止めきれません。
壬氏には、猫猫を失うことへの恐怖があるように思えます。
そして猫猫には、壬氏を受け入れることで、これまで大切にしてきた生活や人間関係が変わってしまうことへの警戒があるのでしょう。
つまり二人は、同じ相手を大切に思いながら、まったく違うものを恐れているのです。
ここで第12話と第35話を思い出してみてください。
第12話の壬氏は、自分の魅力によって猫猫の反応を引き出そうとしていました。
第35話の壬氏は、彼女を生かすことだけを考えていました。
そして小説5巻では、猫猫を自分の望む関係へ引き寄せようとして、感情を制御できなくなる。
この三つの場面を並べると、壬氏の感情が単純に成長しているわけではないことが見えてきます。
愛情が深まれば、それに比例して振る舞いも成熟する。
普通ならそう期待したくなります。
けれど壬氏の場合、気持ちが強くなるほど、嫉妬や焦りが表に出てしまうことがあるのです。
好きだから守りたい。
でも、好きだから独占したくなる。
その二つの感情が、壬氏の中でぶつかり合っている。
もう、しんどすぎる。
相手を大切にしたいという願いと、相手を自分のそばに置いておきたいという欲求は、似ているようで違います。
壬氏が本当に猫猫と幸せになるためには、この違いを受け止める必要があるのではないでしょうか。
猫猫が視線を逸らす理由は、嫌悪だけではないのかもしれない
僕が特に気になるのは、猫猫が壬氏の好意を受け流す場面です。
表面的には、彼女は壬氏を面倒な相手として扱います。
強い好意を向けられても、期待どおりの言葉を返そうとはしません。
けれど、猫猫は他人の感情を理解できない人物ではありません。
むしろ、人間の行動の裏にある事情を観察し、論理的に読み解くことに優れています。
そんな彼女が、壬氏の感情だけを理解できないというのは、少し不自然にも感じます。
もしかすると、理解できないのではなく、理解した先にある現実を簡単には受け入れられないのかもしれません。
相手が何を望んでいるのかを認めてしまえば、自分も答えを出さなければならなくなる。
壬氏の立場を考えれば、その答えは二人だけの問題では済まない。
だからこそ、猫猫は話題を逸らし、感情を整理する時間を確保しているようにも見えるのです。
もちろん、これは僕の解釈です。
すべての素っ気ない態度を隠れた愛情に結びつけるのは適切ではありません。
ただ、猫猫が少しずつ自発的な行動を見せるようになる流れを踏まえると、彼女の沈黙にも以前とは違う意味が生まれているように感じます。
言葉にすれば、もう後戻りできない。
その怖さを知っているからこそ、簡単には言葉にしない。
そんなふうに考えると、二人の何気ないやり取りにも、ずっしりとした感情の重さが宿っているように思えます。
二人に必要なのは、キスよりも互いを選べる自由ではないか
ここで僕は、一つの疑問に行き着きます。
壬氏と猫猫の恋愛において、本当に重要なのはキスをすることなのでしょうか。
もちろん、触れ合う場面は大切です。
とりわけ猫猫のように感情表現が控えめな人物にとって、自分から距離を縮める行動には特別な意味があります。
しかし、彼女が壬氏を選んだとしても、それが立場や義務に押された結果であれば、二人が望む幸せとは違う気がします。
壬氏も同じです。
猫猫との未来のために、自分自身を傷つけなければならない関係が、果たして望ましい結末なのでしょうか。
僕は、二人が互いを守るために犠牲を競い合うような結末にはなってほしくありません。
猫猫が薬師としての自分を失わず、壬氏も自分の人生を自分で選べること。
そのうえで、二人が隣に立つことを望む。
そんな未来が実現するなら、どんな情熱的なキスシーンよりも深く心に残るはずです。
そして、おそらくこの作品の魅力は、そこにあるのでしょう。
恋愛感情さえあれば、すべてが解決するわけではない。
むしろ、誰かを好きになったからこそ、今まで見えていなかった問題が姿を現す。
それでも相手と向き合おうとする。
僕は、そんな不器用な二人の姿を最後まで見届けたいと思っています。
まとめ|『薬屋のひとりごと』のキスシーンが描く本当の変化
『薬屋のひとりごと』で、壬氏と猫猫が恋愛感情を伴う直接のキスを交わすのは、原作小説5巻の最終話です。
それ以前にも、1巻の間接キス、3巻の人工呼吸という重要な場面があり、アニメではそれぞれ第12話と第35話で描かれています。
どちらも二人の関係を理解するうえで欠かせません。
第12話では、壬氏が猫猫に自分を意識してほしいと願う姿が描かれました。
第35話では、彼女の命を救うために迷わず行動する姿が描かれました。
そして小説5巻では、抑えきれなくなった嫉妬と、それにただ従わない猫猫の反応が描かれます。
こうして振り返ると、キスという同じ言葉で括られる場面にも、それぞれ異なる感情が込められていることが分かります。
僕にとって最も印象的なのは、猫猫が自分の意思で壬氏へ近づくようになる変化です。
美しい容姿にも高い身分にも簡単には動じなかった彼女が、壬氏という一人の人間に特別な感情を抱いていく。
その静かな変化にこそ、二人の恋愛の核心があるように思います。
願わくば、壬氏には猫猫を自分のものにすることよりも、彼女が自分の意思で隣にいてくれる喜びを知ってほしい。
そして猫猫にも、誰かを大切に思うことを、必要以上に恐れなくてよい未来が訪れてほしい。
二人が本当の意味で対等に向き合える日を、僕は静かに願っています。
よくある質問
『薬屋のひとりごと』で壬氏と猫猫が初めてキスするのは何巻?
恋愛感情を伴い、直接唇を重ねる場面は原作小説5巻の最終話です。
それ以前にも、小説1巻最終話で指先を介した間接キス、小説3巻19話で人工呼吸が描かれています。
どの場面をキスとして数えるかによって、答えが異なります。
アニメで壬氏と猫猫のキスシーンは何話に登場する?
間接キスは第1期12話「宦官と妓女」、人工呼吸は第2期35話「狩り」に登場します。
第35話では、壬氏が猫猫を抱えて滝つぼへ飛び込み、意識を失った彼女に人工呼吸を行います。
原作小説5巻に登場する恋愛感情を伴う直接のキスは、アニメ第2期までには描かれていません。
壬氏と猫猫はキスしたあと結婚する?
原作小説では二人の関係が進展しますが、キスをしたことで正式に結婚が決まったわけではありません。
壬氏の皇位継承に関わる立場や、玉葉后とその息子をめぐる政治的事情など、解決しなければならない問題があります。
二人がどのような形で未来を選ぶのかは、引き続き物語の重要な焦点です。
漫画版で人工呼吸のシーンを読むには何巻?
ビッグガンガン版では12巻63話、サンデーGX版では13巻51話に収録されています。
『薬屋のひとりごと』には2種類の漫画版が存在するため、収録巻を確認するときは出版社と作画担当者の違いにも注意してください。
猫猫は壬氏のことが好きなの?
物語が進むにつれて、猫猫が壬氏を特別な相手として意識していることが読み取れるようになります。
ただし、その感情の表し方は壬氏とは大きく異なります。
壬氏が積極的に好意を示すのに対し、猫猫は自分の感情にも慎重です。だからこそ、彼女が自発的に距離を縮める場面には大きな意味があると考えられます。
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