タコピーの原罪 アニメ制作会社はどこ？ENISHIYAの代表作と注目スタッフを紹介

「あの不穏な可愛さ、どこが作ってるの？」――そんな疑問を抱いた方、多いはず。

2025年6月配信開始のアニメ『タコピーの原罪』は、異色のビジュアルとストーリーで早くも話題沸騰中。その制作を担うのは、若き実力派スタジオ・ENISHIYA（エニシヤ）。

本記事では、アニメ『タコピーの原罪』のアニメーション制作会社ENISHIYAとは何者か？ 代表作や注目スタッフ、演出スタイルまで徹底紹介します。

なぜ彼らが“初の元請け作品”として『タコピー』を選んだのか。その背景にあるセンスと覚悟を、構造と感情の両面から読み解いていきます。

『タコピーの原罪』アニメの制作会社ENISHIYAとは？

アニメ『タコピーの原罪』はENISHIYAが制作を担当

2025年6月28日からNetflixなどで配信される話題のアニメ『タコピーの原罪』。そのアニメーション制作を担当するのは、ENISHIYA（エニシヤ）という新進気鋭のスタジオです。公式Xでも「アニメーション制作を担当します」と名言され、SNSでは「この映像美、どこが作ってるの？」という声が多数上がっていました。

ENISHIYAにとって『タコピーの原罪』は、初の“元請けアニメーション制作作品”。つまり、スタジオとして初めて全体を取り仕切る立場で手がけるシリーズアニメとなります。これまではMVや短編アニメ、他作品の制作協力に携わってきた彼らが、ついに本格的なアニメシリーズ制作に踏み出す──そんな節目の挑戦なのです。

しかも、題材はうっすら不穏で切ない雰囲気を持つ『タコピーの原罪』。コミック時代から「読後に胸をえぐられる」と言われてきた本作を、どのように映像で再現するのか。これはもう、ENISHIYAの感性と力量を測る“真価の試金石”だと思っています。

筆者が感じたのは、「この作品でスタジオの名前を刻もう」という気概。まだ無名に近いENISHIYAが、敢えて“簡単には扱えない原作”を選び、それを元請けで作る──これ、普通なら怖くて手が出ない。でも彼らはやった。そこに映像づくりへの信念と戦略が透けて見えるんです。

アニメ『タコピーの原罪』が「誰が作ったのか気になるアニメ」として注目されている背景には、ENISHIYAという制作会社の挑戦がある。その事実だけでも、この作品は要チェックだと思わせてくれるんですよ。

ENISHIYA株式会社の設立背景と企業プロフィール

ENISHIYA株式会社は2018年11月に設立された、比較的新しいアニメーション制作会社です。本社は東京都中野区。代表取締役の細井駿介氏は、かつて東宝やマッドハウスでアニメプロデューサーを務めた経験を持ち、そこで得た知見を活かして独立。わずか数年で『タコピーの原罪』のような元請け案件を任されるまでに成長しました。

従業員数は2024年度時点で約19名。大手と比べれば小規模ですが、その分、個々のクリエイターの感性やセンスが色濃く反映されやすい環境でもあります。実際、MVや短編アニメで見せた彼らの映像は、ひと目で「ENISHIYAらしさ」が感じられる個性を放っています。

設立当初から「アニメに限らない表現」を目指してきたスタジオであり、アニメーション制作だけでなく、ゲーム、出版、クリエイターマネジメントなど多様なメディアに関わっているのも特徴。つまり、単なるアニメ制作会社ではなく、“表現集団”としての意志があるんです。

その柔軟性と創造性が、今回の『タコピーの原罪』にも強く反映されている予感がしています。しずかの表情ひとつ、タコピーの動きひとつに、彼らの積み重ねた感性がにじみ出る。ENISHIYAという会社を知れば知るほど、『タコピー』という題材との相性の良さに納得がいくんですよ。

そしてなにより、制作会社ENISHIYAが持つ“語りの強度”。静かに、でも確かに心を動かす映像を作るスタジオ──そういう立ち位置で、『タコピーの原罪』はまさにその本領が試される舞台なのだと思います。

ENISHIYAの代表作を紹介｜過去の映像作品とアニメ制作歴

ミュージックビデオ『レーゾンデートル』で注目された映像表現

ENISHIYAの名前が広く知られるきっかけとなったのが、Eveの楽曲『レーゾンデートル』のアニメーションMV。ロッテとEveのコラボプロジェクト「トッポ × Eve」によって生まれたこの作品は、アニメーションの演出と構図センスで視聴者の心を瞬時に掴みました。

正直、筆者も初見で「誰が作ったんだこの映像…」と驚かされた記憶があります。色彩のレイヤー、時間の流れを感じさせるカット割り、そしてキャラの“心のざわめき”を絵で語る演出──すべてが、ただのMV以上の完成度でした。

この作品で特筆すべきは、“数分で完結する物語”としての構造美。ENISHIYAは短尺作品においても起承転結を明確にし、感情の起伏を視覚化する能力に長けています。だからこそ、わずかな尺でも観る者を惹きつける。これって、実はアニメシリーズの演出にも通じる超重要スキルなんですよ。

『タコピーの原罪』のような心理描写の多い物語では、このMV制作で培ったセンスが必ず生きてくるはず。表情の変化、カメラの距離、静と動の切り替え。ENISHIYAが得意とする“情緒の映像化”が、あの不穏な日常をどう彩ってくれるのか……想像するだけでワクワクします。

MV『レーゾンデートル』は、ENISHIYAという制作会社の“構図感覚”と“感情表現”を知る上で最適な入口です。そして、そこから『タコピーの原罪』へと繋がる映像演出の軌跡が、ちゃんと一本の線になっているのがまた面白い。

短編アニメ『まっさら』に見る感性と構成力の融合

ENISHIYAの“表現力”をさらに強く印象づけたのが、オリジナル短編アニメ『まっさら』です。数分という限られた尺で、登場人物の内面と感情の変遷、そしてその背景にある日常のドラマを、極めて繊細なアニメーションで描き切ったこの作品は、多くのアニメファンやクリエイターから高い評価を得ました。

この『まっさら』で演出を担当したのは、なんと『タコピーの原罪』でもキャラクターデザインを務める長原圭太さん。つまり、この作品はENISHIYAの“演出面での信頼構築”と“制作スタイルの方向性”を決定づけた、重要な原点でもあるんです。

筆者としては、この短編で見せた「説明しないのに伝わる演出」が特に印象深い。たとえば、キャラがふと目をそらすワンカットに、その人の抱える過去や関係性がにじみ出るんです。音や台詞に頼らず、画で語る。その潔さと余韻が、ENISHIYAらしい。

そして、この“画で語る”スタイルこそが、まさに『タコピーの原罪』で必要とされる表現力だと思うんです。感情を言葉で説明するよりも、静かに描くことで逆に観る側の想像が広がる──その演出哲学は、視聴者の記憶に深く刺さるんですよ。

『まっさら』は、ENISHIYAの感性と構成力の融合を体感できるショートアニメ。『タコピーの原罪』という次なるチャレンジに至るまでの“確かな下地”がここにあります。

『タコピーの原罪』注目スタッフと制作陣の特徴

監督・飯野慎也の演出力とシリーズ構成センス

アニメ『タコピーの原罪』の監督とシリーズ構成を務めるのは、飯野慎也（いいの・しんや）氏。これだけで、「あ、演出が本気だ」と察した人も多いはず。飯野氏はこれまで『Dr.STONE』の第1期・第2期で助監督・監督を担当し、テンポ感のある会話劇と緻密な物語運びで評価された実力派です。

筆者が個人的に感銘を受けたのは、『Dr.STONE』での“科学と感情のバランス”の取り方。理屈で進む物語に、しっかりと人間ドラマを重ねてくるその手腕が、『タコピーの原罪』という“暗くて優しい”物語にピッタリはまる気がしたんですよ。

本作では、コミック原作の持つ不穏さと切なさをいかにしてアニメとして再構築するかが大きな鍵。飯野監督の手腕にかかるところが非常に大きい。キャラ同士の沈黙、目線のすれ違い、台詞の裏にある“言えなさ”をどう映像に落とし込むのか。そこがこの作品の命だと思っています。

また、シリーズ構成としての飯野氏の起用は、「この物語の時間軸をどう整理するか」という構造的な課題に応える選択でもあります。しずかとタコピー、それぞれの視点で進む物語を、どの順序で観せるかによって印象は大きく変わる。そういう意味でも、“構成に強い演出家”という人選が本当に理にかなっている。

『タコピーの原罪』という繊細な原作を、丁寧かつ戦略的に映像化できる人は限られている。その中で飯野慎也という監督の名前は、制作側の“わかってる感”が滲む抜擢だと感じました。

キャラクターデザイン長原圭太と音楽藤澤慶昌の強み

キャラクターデザインを担当するのは、長原圭太（ながはら・けいた）氏。『すずめの戸締まり』『機動戦士ガンダム 水星の魔女』など、感情の“機微”を描く名作に多く参加してきた実力派アニメーターです。『まっさら』では演出も手がけ、ENISHIYAとの関係性も深く、彼の感性が今回の『タコピーの原罪』にも色濃く投影されています。

長原氏の描くキャラクターには、いわゆる“記号的なかわいさ”ではなく、視線や指先、姿勢といった細部に宿るリアルな息遣いがあります。特にしずかのような内に秘めた感情を持つキャラを、どう表情に落とし込むか──ここがこの作品の肝だとすれば、長原圭太という選択は本当に適役。

そして音楽を手がけるのは藤澤慶昌氏。『ラブライブ！』『宇宙よりも遠い場所』といった“青春の一瞬”を音で包み込む名手であり、場面に溶け込む旋律作りに定評があります。彼の音楽が、タコピーの可愛さと物語の痛みにどう橋をかけてくれるのか、個人的にもめちゃくちゃ楽しみなんです。

音楽というのは、言葉では埋めきれない感情の余白を補ってくれる力があります。特に『タコピーの原罪』のような、心のすれ違いや孤独、淡い願いが渦巻く物語においては、その余白を埋める音の存在が欠かせません。

つまり、『タコピーの原罪』というアニメは、キャラクターデザインと音楽という“感性の両輪”を、信頼のおける作家たちに預けた作品。ENISHIYAが本気で“作品の感情密度”に向き合っている証明でもあるのです。

ENISHIYAが『タコピーの原罪』で見せる制作の本領

「元請け」初挑戦に込められた意気込みと戦略

アニメ『タコピーの原罪』は、ENISHIYAにとって“初の元請け作品”という大きな節目に位置づけられています。これまでMVや短編、制作協力を通して実力を蓄えてきた同社が、ついに自らの看板を掲げて世に放つ本格的シリーズアニメ。これはただの新作発表ではなく、ENISHIYAというアニメ制作会社の“宣言”なんですよ。

筆者が注目したのは、その「一発目」に『タコピーの原罪』という難易度の高い原作を選んだこと。可愛らしいキャラ造形と裏腹な、痛ましくて重たいテーマ。多くの制作会社が“二の足を踏む”タイプの原作に、ENISHIYAは真正面から挑んだ。そこには「自分たちが描きたいものは何か」を突き詰めた戦略と覚悟があると感じました。

これは推測ですが、彼らにとって『タコピー』は単なる業務ではなく、“表現したい物語”だったのではないでしょうか。だからこそ、元請けという責任と自由の両方を引き受けてまで、自分たちの手でこの世界を描く決断をした。そう思うと、アニメの1カット1カットにも、その気概がにじみ出ているように見えてきます。

また、「元請け作品」という立場は、スタジオのブランドイメージ形成にも直結します。『タコピーの原罪』が世に出たとき、それが名刺代わりになる。そのことを見越したうえで、ENISHIYAは“自分たちらしさ”を余すところなく詰め込んでくるはず。つまりこれは、作品の完成度と同時に「制作会社としての声明」でもあるのです。

『タコピーの原罪』という選択は、ENISHIYAという制作会社が、業界にどう名を刻みたいのか。その意志表明としての意味合いを、どうしても見逃せません。

短編アニメで培われた空気感演出の集大成

ENISHIYAがこれまで手がけてきたMVや短編アニメ。その中で彼らが一貫して磨き続けてきたのが、「空気を描く力」だと筆者は思っています。具体的には、キャラが言葉にしない気持ち、部屋の温度、時間の流れ、静寂の中のざわめき──そういった“感情の間”を、アニメーションという手法でいかに伝えるかという試行錯誤です。

『まっさら』に代表される短編作品群では、そうした微細な演出が何よりも印象に残りました。登場人物のまばたきのタイミングひとつ、背景の照度、光と影のコントラスト。そのすべてが、キャラの心情や場面の意味を物語っていたんです。

この“空気感の演出力”は、シリーズアニメ『タコピーの原罪』においても最大の武器になるはず。特に、しずかとタコピーの“関係性の揺れ”を映像で描くには、言葉では表現できない感情の層を丁寧に積み重ねる必要があります。そこに、ENISHIYAの映像設計がピタリとハマるんですよ。

加えて、今回のアニメでは各話6話構成という短めのフォーマットも、彼らの短編ノウハウを活かす構造になっています。無駄な演出を削ぎ落とし、必要な感情だけを浮かび上がらせる技術──それを活かすには、まさに“短編を作ってきた人たち”が最適なのです。

『タコピーの原罪』という作品を通して、ENISHIYAがこれまで培ってきた「空気の演出」と「感情の翻訳」が、どう集約されるのか。それは単なる制作技術を超えた、“表現哲学”の発露に近いと思っています。

ENISHIYA制作による『タコピーの原罪』はなぜ注目なのか

他スタジオと差別化される独自演出と映像美

アニメ『タコピーの原罪』がここまで注目されている理由のひとつは、やはり制作会社ENISHIYAが持つ“独自の映像演出スタイル”にあります。ENISHIYAは大手スタジオとは一線を画す、小規模ならではの密度と温度を映像に込めることができるチーム。そのクリエイティブの中核には、「個の感性を研ぎ澄ませる」という方針が見え隠れします。

たとえば、大手スタジオが分業制で効率的に作品を仕上げていくのに対し、ENISHIYAは少人数体制を活かして、1カット1カットに強烈なこだわりを注ぎ込む。これは“工業製品”ではなく、“手作りの表現”としてのアニメを目指しているという姿勢なんですよ。

その結果として生まれる映像には、どこか“生活の気配”が宿っています。たとえば、タコピーの仕草ひとつにも愛らしさと異質さが同居し、しずかの沈黙ひとつにも「語らない感情」が染み込んでいる。これは、ENISHIYAの過去作品──『まっさら』や『レーゾンデートル』でも明確だった表現の“匂い”なんです。

映像美についても、ENISHIYAは色彩設計や背景の処理に独特の工夫を施しており、いわゆる「アニメらしいアニメ」とはまた異なるリアリティを演出します。色を盛るのではなく、“削って光らせる”スタイル。光の反射、影の沈み方、そして無音の活かし方に、他スタジオとは異なる美意識がにじみ出ているんですよ。

だからこそ、『タコピーの原罪』のように空気や心情が重要な作品において、ENISHIYAという制作会社の手腕は、圧倒的な説得力を持つ。これは演出と映像が物語と完全に呼吸を合わせる、稀有な一例だと思います。

『タコピー』の世界観を支える制作哲学とは

ENISHIYAが制作するアニメ『タコピーの原罪』には、ただ映像を“作る”のではなく、“届ける”という哲学が根底にあるように感じます。それは単なる演出技術や映像設計を超えて、「視聴者の心の中に何を残すか」を最初から意識している姿勢。筆者はそこに、このスタジオの真の“つよさ”を見ています。

たとえば、原作の持つ“社会問題的な暗さ”や“子どもゆえの残酷さ”といった要素を、どう扱うか。過剰にドラマチックにせず、かといって淡々と処理するのでもなく、「観る人の心に余白を残す形」で差し出す。そのバランス感覚が、ENISHIYAの映像哲学として強く機能していると思うんです。

これは、おそらくスタジオの体制そのものと深く結びついています。ENISHIYAは2018年の設立当初から、MVや短編など“短く深く刺さる映像”に特化してきました。そこでは一言の台詞、一瞬の視線の変化が、物語のすべてを決定づける。その感性が、今、長編アニメ『タコピーの原罪』の中で拡張されているのです。

さらに言えば、ENISHIYAの作品には「キャラクターを見つめる眼差しのやさしさ」があります。キャラを動かすだけでなく、“寄り添っている”。しずかの心の痛みも、タコピーの無邪気な歪さも、観る側の心にそっと差し込んでくる。それは、作り手たちがキャラに対して“愛ではなく理解”を持って接している証だと思うんです。

こうした制作哲学が支えているからこそ、『タコピーの原罪』はただの“話題作”で終わらず、「観た人の中にずっと残る作品」になる。その予感が、筆者には確かにあります。

タコピーの原罪 アニメ制作会社まとめ

ENISHIYAはアニメ『タコピーの原罪』で本領を発揮する注目制作会社

ここまで見てきたように、『タコピーの原罪』というアニメ作品は、ENISHIYAという制作会社の“表現力の集大成”とも言える一本です。アニメーション制作会社ENISHIYAは、2018年設立の若いスタジオながら、その短編アニメやMVで磨いた映像演出力、構図感覚、感情表現において、他スタジオとは一線を画す存在へと進化しています。

『レーゾンデートル』や『まっさら』といった代表作で魅せた“空気の映像化”は、今回の『タコピーの原罪』でもしっかり活かされており、まさに“元請け初挑戦”にふさわしい意欲作となっています。ENISHIYAという制作会社が、どんな物語に向き合い、どんな風に観る人の心を動かそうとしているのか──その答えが、全6話の中に込められているのです。

筆者としても、『タコピーの原罪』という題材がENISHIYAと出会ったことには、なにかしら“必然”を感じています。不穏で優しくて、可愛いのに怖い。その微妙な“言葉にならなさ”を、ENISHIYAだからこそ、映像という形にできたのではないかと。

今後、ENISHIYAがどのような作品を手がけていくか──それはまだ未知数です。でも、ひとつ確かなのは、『タコピーの原罪』という作品を通して、彼らの名前は確実に多くの視聴者の記憶に残るということ。少なくとも、私はこの作品を観終えたとき、「ENISHIYAという制作会社を、ずっと追いかけたい」と思える気がしています。

アニメ制作会社ENISHIYA、そしてアニメ『タコピーの原罪』。この2つの名前を、今のうちから心に留めておいて損はありませんよ。

ENISHIYA制作の『タコピーの原罪』は“心をえぐる優しさ”の結晶

最後に改めて言いたい。アニメ『タコピーの原罪』は、ただ可愛いだけじゃない。ただ悲しいだけでもない。その中間にある、どうにも名前をつけられない感情を描いた作品です。そして、それを実現するには、ENISHIYAのような制作会社の“細部への眼差し”が必要だったのだと思います。

演出、音楽、美術、キャラクターデザイン、すべてが物語の“呼吸”に寄り添い、静かに、でも確かに観る者の心を動かしていく。その繊細な構造のひとつひとつが、ENISHIYAの手によって緻密に設計されているのです。

これはある意味、アニメとしては異質な作品かもしれません。派手なバトルも、テンプレ的な感動演出もない。けれど、“映像で語る”という本質において、ここまで真摯に作られた作品はそう多くありません。

筆者は、『タコピーの原罪』を観た後、きっと多くの人が“自分の中の何か”と対話することになると信じています。それはもしかすると、自分が子どもだった頃の感情かもしれないし、今うまく言葉にできない誰かへの思いかもしれません。

そんな時間を与えてくれる作品に出会えたとき、私たちはきっと、「アニメって、やっぱりすごいな」と思えるはず。そしてそれを叶えてくれる制作会社がENISHIYAだった──このこと自体が、何よりも感動的なんです。