瑠璃の宝石の連載開始から現在までの歩み｜ハルタでの掲載変遷と話題の巻数一覧

「こんなにも地に足のついた冒険があったなんて」──『瑠璃の宝石』に出会った読者が、最初に抱くのはそんな驚きかもしれません。

本記事では、KADOKAWAの漫画誌『ハルタ』で2019年から連載が始まった本作『瑠璃の宝石』の歩みを、巻数ごとの変遷や掲載状況とともに詳しく振り返ります。

鉱物というユニークなテーマを軸に、少年少女の成長を丁寧に描くこの作品は、地味に見えてその実、骨太で繊細。だからこそ「今どこまで進んでいるの？」「どの巻が特に注目されてるの？」と気になる方も多いはず。

アニメ化の影響で一気に話題沸騰中の今だからこそ、連載初期からの流れと、各巻で何が語られてきたのかを整理する意味がある──そう感じて、この記事をまとめました。

“静かなる熱狂”とも呼ぶべきこの作品の魅力、その足跡を一緒にたどっていきましょう。

『瑠璃の宝石』連載開始の背景と掲載雑誌ハルタとは？

『ハルタ』という雑誌の個性と連載開始時期の意義

『瑠璃の宝石』は、KADOKAWAが発行する青年漫画誌『ハルタ』にて2019年8月10日発売のvolume67から連載がスタートしました。『ハルタ』は月刊誌ではなく、年10回（近年は実質的に年6回ペース）刊行されるという独特な出版形態を持っており、商業誌でありながら同人誌的な熱量と自由度を併せ持つ媒体として知られています。

そんなハルタの中で『瑠璃の宝石』は、鉱物学という非常にニッチな題材を真正面から扱う作品として際立っていました。作者・渋谷圭一郎さん自身が鉱物学の知識を持ち、それを物語の中に丁寧に溶け込ませているのが特徴で、“知の冒険”とも言える世界観が、ハルタ読者の心に深く刺さったのです。

連載開始時期である2019年は、ちょうどハルタが新たな読者層を拡大しようとしていた過渡期にあたります。そこで投入された『瑠璃の宝石』は、少年少女のひたむきな探求心とリアルな科学的背景が織り交ぜられた異色作として、雑誌の中でもひときわ異彩を放つ存在でした。

振り返ってみれば、この作品の登場がハルタの多様性をより象徴づける出来事だったように思います。時代や流行に左右されない“本物の面白さ”──それを貫こうとする『ハルタ』の編集方針と、『瑠璃の宝石』が見事に共鳴していたのです。

作品のテーマである鉱物や地質学の魅力が、物語の核心を担う構造になっている点は、まさにハルタならではの挑戦であり、2019年という時代の空気に静かに抗う意志表明でもありました。

結果としてこの連載は、創刊から長年にわたり多くのファンタジー作品を掲載してきたハルタに、新たなジャンルの風を吹き込むきっかけにもなったのです。

年6回掲載という独特なリズムが生んだ読者体験

『瑠璃の宝石』は当初から『ハルタ』において定期的に掲載されており、2025年現在でもその基本姿勢は変わっていません。ただし、その掲載頻度は通常の月刊連載作品とは異なり、年6回、偶数月号を中心に掲載されるという独特のペースで続いています。

この「半年で6話」という緩やかなリズムは、読者にとっては「次を待ち望む時間」が長い反面、一話ごとの密度と余韻を深く味わえるという贅沢な体験をもたらします。まるで天然鉱石が長い年月をかけて結晶していくように、物語も少しずつ形を成していく──そんな感覚です。

しかも、この掲載リズムがある種の“緊張感”を保ち続けていることも事実です。「いつ載るかわからない」「次号に載るかどうかドキドキする」という、今ではあまり味わえない読書体験が、『瑠璃の宝石』の読者には根付いています。

筆者自身も、掲載号の目次に『瑠璃の宝石』の文字を見つけるたび、「あった！」と声が出てしまうほど。掲載ペースの不定期さは、一見するとマイナスに映るかもしれませんが、この作品に関してはむしろ読者との“結晶的な関係性”を生み出すプラス要素になっていると感じます。

また、年6回という頻度は、作者が鉱物という専門性の高いテーマを丁寧に描くための制作環境としても理にかなっています。科学的考証や調査、フィールドワーク的取材を必要とする『瑠璃の宝石』にとって、クオリティ維持のための時間的余裕は必要不可欠。その意味でも、ハルタの柔軟な掲載スタイルが作品を支えているのです。

連載の掲載号とその変遷｜ハルタvolumeごとの追跡

volume67からスタートした連載の歩み

『瑠璃の宝石』の連載は、KADOKAWAの青年誌『ハルタ』volume67（2019年8月10日発売）からスタートしました。そこから2025年7月現在に至るまで、連載はおよそ年6回のペースで続いており、掲載号は偶数月中心の号に集中しています。確認されている掲載号はvolume67、124、125、127、129、130など、多くの号をまたぎながら着実に歩みを進めてきました。

このvolumeというナンバリングは、月刊誌や週刊誌とは異なり、『ハルタ』が独自の刊行スタイルを持っているからこそのもの。『瑠璃の宝石』はその柔軟で実験的な雑誌の文化の中で、地に足のついた物語を一話ずつ重ねてきました。

volume67号から始まった連載が、volume130号以降も続いているという事実は、単純な長期連載という言葉だけでは語りきれません。この物語は“ゆっくりとした進行”を選んだ代わりに、読み手に深い満足感を提供してきたからです。

また各掲載号では、話ごとにテーマや学びの焦点が異なり、鉱物の成分や採集技術、地質学の歴史などが物語の中に溶け込んでいます。それが単なる説明ではなく、キャラクターたちの成長や関係性のなかで描かれるからこそ、読み手の記憶に残るのです。

読者にとって、volumeというナンバリングは単なる発行管理の単位ではなく、「この号はどんな石と出会えたんだろう？」という物語のマイルストーンでもあります。掲載号の変遷を辿ることは、そのまま『瑠璃の宝石』という作品の呼吸を感じる行為なのかもしれません。

特定号への不定期掲載が与える影響と魅力

『瑠璃の宝石』は、定期的に毎号載るわけではなく、不定期ながらもおおよそ偶数月号に登場するというスタイルをとっています。volume124、125、127、129、130号など、ある程度の周期を持ちながらも「予測できない」という点が、この作品の読者体験に独特のスパイスを加えています。

この“掲載されるかわからない”という状況は、漫画ファンにとってはある種の焦燥感を生み出すものですが、『瑠璃の宝石』に関してはむしろ、それが毎号のハルタにページをめくる楽しさを与えている。筆者自身も「今月は載ってるか？」という期待を胸に、目次を確認するその一瞬が、ちょっとした儀式のようになっています。

こうした不定期掲載は、物語のテンポ感にも独特の味わいを与えています。連載のない号を挟むことで、前話の余韻がじんわりと体に残る。そのうえで次のエピソードが届くと、まるで久しぶりに鉱山へ戻ってきたような感覚を味わえるのです。

また、『瑠璃の宝石』が扱うテーマそのもの──鉱物や地質学──が、短期消費ではなく、時間をかけて蓄積する知識や経験の世界であることも、この不定期連載と妙にフィットしています。一話一話をじっくり消化し、記憶に残しながら読む……そんな「反復と熟成の読書」が、この作品には合っているのです。

不定期だからこそ、掲載されたときの喜びは格別。静かに、でも確実に“次を待つ読者”が根付いている──それが『瑠璃の宝石』の持つ深い信頼の証でもあるのだと、筆者は感じています。

コミックス各巻の発売日一覧と内容ダイジェスト

1巻〜6巻までの発売スケジュールと話数構成

『瑠璃の宝石』の単行本は、2020年10月15日に発売された第1巻を皮切りに、2025年7月15日発売の第6巻まで、現在までに全6巻が刊行されています。刊行ペースは約1年に1巻ほどと比較的ゆったりしていますが、それもまた本作の“丁寧に磨かれた物語”という特徴を象徴しています。

以下に巻数ごとの発売日をまとめておきましょう。

• 第1巻：2020年10月15日
• 第2巻：2021年8月12日
• 第3巻：2022年10月15日
• 第4巻：2023年8月12日
• 第5巻：2024年9月13日
• 第6巻：2025年7月15日

このリズムの中で、各巻はだいたい5〜7話前後のエピソードを収録しており、いずれも連載時の読み味を損なうことなく、まとめて読んでも余韻がしっかり残る構成になっています。

筆者としては、刊行ペースのゆるやかさがかえって“鉱物をじっくり観察するような読書体験”を後押ししているように思えます。急がず、焦らず、物語の粒子を一つずつ拾い上げていく──そんな楽しみ方ができるのも、本作ならではの醍醐味です。

各巻の収録エピソードと感情曲線の見どころ

『瑠璃の宝石』の単行本には、巻ごとに一貫したテーマ性があり、それが物語全体の構造を支える骨組みになっています。たとえば第1巻では、主人公・瑠璃と地学部の仲間たちが出会い、鉱物という未知の世界に触れていく“出発の物語”が描かれます。

第2巻・第3巻では、彼らが実際にフィールドに出て鉱物採集を行いながら、それぞれの価値観や個性が少しずつ表に出てきます。特に岩石の見分け方や結晶構造の話は、鉱物への興味を引き寄せる導入口として優秀で、地学に詳しくない読者でも自然に入り込めるよう工夫が凝らされています。

第4巻あたりからはキャラクターの心情にも深みが増し、物語はやや内省的なトーンに。特に“自分にとっての宝石とは何か”という問いが中心に据えられ、読者の感情にもダイレクトに触れてくる構成が印象的でした。

そして最新刊である第6巻では、「化石探し」編が展開されます。青い化石“アクアドラゴン”を探す旅が、登場人物の進路選択や将来への不安とリンクしながら進み、読後にはまるでひとつの青春映画を見終えたような満足感が残ります。特に、新キャラの笹屋夏樹（なっちゃん）が持ち込む“化石ロマン”が、物語に新たな風を吹き込んでくれました。

全体を通して、『瑠璃の宝石』は鉱物というモチーフを使いながらも、人の想い、葛藤、成長を丁寧に描く構造になっています。それが巻を追うごとにじんわりと広がっていくのを、読者として体験できる──それこそが、このコミックスの本質的な魅力だと私は感じています。

話題を呼んだ巻数はどれ？SNS・読者評価から読む人気の波

化石編と“なっちゃん”登場が引き寄せた読者の声

『瑠璃の宝石』の中でも特にSNSで話題を集めたのが、2025年7月15日に発売された最新刊・第6巻です。この巻では、新キャラクター・笹屋夏樹（通称“なっちゃん”）が初登場し、物語に“化石”という新たなテーマが加わりました。彼女が語る古生物への情熱や、進路に悩む姿が多くの読者の共感を呼び、X（旧Twitter）を中心に大きな反響を生み出しました。

とりわけ、青く美しい化石“アクアドラゴン”を探すフィールドワークの描写は、鉱物に焦点を当ててきた従来の『瑠璃の宝石』とはまた異なる魅力がありました。地層や時代背景、化石の形成過程など、知的好奇心をくすぐる要素が満載で、読後には「地質と生物のロマンに触れた」といった声も多く寄せられていました。

この“化石編”の魅力は、単に科学的に面白いだけではなく、キャラクターたちの成長や未来への不安といった人間ドラマとも深く結びついていた点にあります。特に“なっちゃん”の「進路どうしよう」という悩みは、高校生読者はもちろん、大人読者にも刺さるリアルな問いかけとして機能していた印象です。

また、SNSでは「なっちゃんに惚れた」「彼女のまっすぐさに泣いた」といったコメントも散見され、彼女の登場が作品全体の温度感を一段階上げたことは間違いありません。既存キャラとの化学反応も抜群で、読者層の裾野が一気に広がった巻だといえるでしょう。

作品としての深化と、新キャラの魅力が見事に噛み合った第6巻は、今後の展開に対する期待感を一気に高めたターニングポイント。その熱量は、SNSの拡散力によってさらに加速し、新規読者の取り込みにも繋がっています。

アニメ化と重なった6巻の特別感と注目度

2025年7月に刊行された『瑠璃の宝石』第6巻が大きな注目を集めたもう一つの理由──それが、同年7月6日から始まったTVアニメ版の放送タイミングと見事に重なっていたことです。まさに“この夏一番の話題作”として、多方面からの視線が集まりました。

アニメ放送の開始とともに、新刊の発売が控えているという状況は、ファンにとってこれ以上ない贈り物。既存読者はもちろん、アニメから入った新規読者が「もっと読みたい！」とコミックスに手を伸ばす動機になりました。特に6巻は“新キャラ登場・化石編・青春の選択”と三拍子そろっており、初見の読者にも入りやすい構成になっていたこともプラスに働いたといえます。

書店の店頭でもアニメ放送と連動した展開が行われ、6巻を中心とした平積みが多くの店舗で見られました。KADOKAWA公式のプロモーションもアクティブで、「6巻から読む“瑠璃の宝石”」という形での布教活動も目立ちました。

また、アニメで描かれる範囲と6巻の内容がリンクしていることもあり、メディアミックスとしての完成度も非常に高い。アニメ視聴後にそのまま6巻を読むことで、世界の奥行きをさらに深く感じる──そんな読者体験が生まれていたのです。

このように、第6巻は物語の転機でありながら、作品全体の魅力を再認識させてくれる“ハブ”的存在。アニメ化という外的要因を味方につけた絶妙なタイミングでの刊行は、まさに戦略と情熱が一致した成功例だと感じます。

『瑠璃の宝石』今後の展開予測と次巻刊行の可能性

次巻はいつ？発売予測と連載状況から見える未来

『瑠璃の宝石』の第6巻が2025年7月15日に発売された現在、読者の関心は当然ながら「次巻＝第7巻はいつ出るのか？」という一点に集まっています。これまでの刊行スケジュールを見ても、約1年〜1年2ヶ月おきに新刊が出ている傾向があるため、順当にいけば次の第7巻は「2026年5月頃」になる可能性が高いと予想されます。

ただし、この作品は年6回の掲載というゆったりとした連載ペースで進んでおり、制作にもかなりの時間と取材を要することが公式でも明かされています。そのため、「遅れても良いから丁寧な続きが読みたい」という読者の声が大半を占めており、刊行ペースの緩やかさはむしろ“信頼の証”として受け止められています。

実際、現在のハルタ連載状況（volume130号以降）を見る限りでは、連載自体は堅調に続いている様子です。掲載号はやや飛び飛びですが、それでも内容の密度と読者の満足度は右肩上がり。第7巻には、おそらく「アクアドラゴン化石編」の後日談、または新たな地域への鉱物採集旅が収録されるのではと予想されます。

筆者としても、「次はどんな鉱物が登場するのか」「新たなテーマは何か」など、物語の続きに対するワクワクは尽きません。連載の時間感覚がリアルな四季や地層のスピードと一致しているようで、まるで“時間そのものを読む”ような気持ちになります。

次巻発売までは少し間が空くかもしれませんが、それは“待つ時間が作品を育てる”という本作の哲学そのものでもある──そう感じながら、次の鉱物との出会いをじっくり待ちたいと思います。

アニメ放送との連動で変わる可能性と期待される進化

2025年7月6日から放送開始されたTVアニメ『瑠璃の宝石』は、すでに原作ファンのみならず、アニメファン層にも強い印象を残しています。このアニメ化によって、『瑠璃の宝石』という作品は一気に注目度を高め、今後の展開にも大きな影響を与えることが期待されます。

アニメで描かれているのは、主に原作コミックス1巻〜5巻までのエピソード。これはまさに作品の“基礎”を築く部分であり、視聴者が世界観や登場人物の関係性にしっかりと浸れる構成です。そこに、第6巻の“化石編”が続くことで、より深く、より広い『瑠璃の宝石』の魅力が浮き彫りになっていくのです。

アニメの成功によって、次巻＝第7巻の刊行タイミングにも影響が出る可能性は大いにあります。たとえば「続巻早期刊行」や「新キャラの先出し」「読者アンケートで次のテーマを決定する」など、メディアミックス的な仕掛けが今後展開されるかもしれません。

また、アニメ化を機に読者層の幅が広がったことで、ストーリー面でもさらなる飛躍が期待されます。より多彩なキャラクター、新しいフィールド、未知の鉱物たち──『瑠璃の宝石』は今まさに、第二の黄金期を迎えつつあるのかもしれません。

物語がこれからどう転がっていくのか、その行方はまだ未知数。でもひとつだけ確かなのは、“アニメと原作の両輪”が回り始めた今、作品としての厚みと深みは、間違いなく新しいフェーズへと入っているということです。

『瑠璃の宝石』歩みの全体像まとめ

連載開始から6年、静かな軌跡が残した確かな熱量

『瑠璃の宝石』が『ハルタ』volume67号で連載を開始してから、2025年でついに6年が経過しました。年6回という少ない掲載ペースの中で、6巻までの単行本を刊行し、そしてアニメ化までたどり着いたこの軌跡は、まさに“静かなる情熱”の結晶だといえるでしょう。

鉱物という一見地味に思われがちなテーマを扱いながらも、『瑠璃の宝石』はその構造的な緻密さと、キャラクターたちの生きた感情によって、読者の心に強く残る物語を紡ぎ続けてきました。1話1話がまるで標本箱に収められた鉱石のように、それぞれに違う輝きを持っている──そんな印象があります。

そして、その歩みを可能にしたのが、『ハルタ』という自由で実験的な雑誌の土壌でした。年6回のリズム、volumeという独自の号数表記、専門的なテーマへの寛容さ──すべてがこの作品にとっての“理想的な土壌”だったのだと、今あらためて思います。

巻を追うごとに深まっていくテーマ性と、SNSでの反響を呼んだ“なっちゃん”の登場によって、6巻はひとつの節目となりました。物語のスケールも、登場人物の心情も、確実に次のステージへと歩を進めています。

『瑠璃の宝石』は、これからも“すぐには結論が出ない問い”を投げかけてくる作品でしょう。でもだからこそ、読み手の中にじんわりと根を張っていく。時間とともに輝きを増す鉱石のように、読むほどに深く、長く心に残る──その価値は何年経っても変わりません。

『瑠璃の宝石』を読むということ、それは“時間”と向き合う読書体験

『瑠璃の宝石』という作品を語るうえで欠かせないのが、その“時間感覚”です。年6回というゆっくりとした連載ペース、1年に1巻という刊行ペース、そして鉱物という題材自体が持つ、悠久の時間の流れ──それらが作品全体に深い呼吸を与えています。

この作品を読むことは、派手な展開や怒涛の伏線回収を味わうのとは違う、“ゆっくり育っていく物語”を見守る体験です。次の話を待つ間に前の巻を読み返したり、紹介された鉱物をネットで検索してみたり──読者一人ひとりの中で物語が反芻され、深まり、静かに結晶化していくのです。

アニメ化によって広がった読者層にとって、この“時間の濃度”こそが驚きであり、魅力なのではないでしょうか。アニメではスピーディに展開される物語が、原作コミックスでは緻密な背景や感情描写を伴って描かれている。その対比もまた、この作品の楽しみ方のひとつです。

筆者自身、この『瑠璃の宝石』を読みながら、「待つ」ことの価値を思い出しました。スマホで何でも即座に手に入る時代において、“今は読めないけれど、そのぶん深く染み込む読書”がある。そこにこの作品の強さと、これからも読み継がれていく理由があると思います。

次巻が出るまでの時間も、そして一話一話が描かれるまでの時間も、“読むという行為の延長線上”として楽しめる──そんな作品は、そう多くありません。『瑠璃の宝石』は、読者と一緒に時を過ごし、育っていくタイプの物語なのです。