映画『カラオケ行こ！』続編はあり得る？“その後”を描くならどうなるか徹底妄想！

あの異色バディがもう一度スクリーンに帰ってきたら──そんな妄想が止まらない。

映画『カラオケ行こ！』は、ヤクザ×合唱少年という奇妙な関係を描いた傑作として話題を呼びました。

続編の可能性が囁かれる中、原作や現在の展開を踏まえて「その後」が描かれるならどうなるのか？筆者なりに全力で“想像”してみました。

映画からTVアニメ化、そして続編『ファミレス行こ。』へと広がる世界に、あの二人の未来を探しに行きましょう。

『カラオケ行こ！』とは何だったのか

原作漫画の位置づけと作者・和山やまの世界観

『カラオケ行こ！』は、和山やま氏による短編漫画を原作とした作品で、2020年に単行本化された後、瞬く間に口コミで評判が広がり、“漫画読み”たちの間ではカルト的な人気を誇っていました。初出は2019年の同人誌という、まさに異端から這い上がってきた一作。和山作品特有の、あえて多くを語らず、沈黙や“間”でキャラクターの内面を語らせる筆致は、この『カラオケ行こ！』にも色濃く反映されています。

物語の軸は非常にシンプル。合唱部の中学生・岡聡実が、ヤクザの成田狂児から突然「歌の指導をしてほしい」と頼まれる──ただそれだけです。でも、その“ただそれだけ”の中に、笑いと痛みと、少しだけの切なさが凝縮されている。筆者が初めて読んだときも、「こんな関係、見たことない…！」と目を奪われた記憶があります。

和山やま作品には、物語の“出口”をはっきりさせないことで、読者に余白を渡す設計があると思っています。『女の園の星』もそうでしたが、キャラクターの何気ない視線や、言葉にならない感情の揺れを拾っていくうちに、読者の中で物語が勝手に“育っていく”感覚。『カラオケ行こ！』はまさにその究極系と言っていい。

だからこそ、「続きが読みたい」と思ったときにすぐ答えが出ない。そのもどかしさすら、愛おしい。何かが決定的に変わるわけじゃない。でも、何かが確実に始まってしまった──そんな“物語の始まりだけ”を切り取ったような感覚。それがこの漫画の魔力です。

さらに補足すると、和山やま氏は作中の台詞や構図に“反復”を多く用いる作家です。『カラオケ行こ！』でも、狂児が繰り返す「紅（くれない）」の歌唱指導や、聡実の淡々とした返しには、“おかしみ”だけでなく、“怖さ”や“居心地の悪さ”が微かに忍び寄る。そのバランス感覚が絶妙で、笑っていたはずなのに、なぜか胸が締めつけられる……。

そんな和山やまの世界観に触れたことがない人は、この漫画を入口にするのが正解だと思います。『カラオケ行こ！』は、シンプルだけど奥が深い、何度も読み返すことで味が染み出すような一冊です。

映画版で描かれた関係性と演出の妙

2024年1月に公開された実写映画『カラオケ行こ！』は、和山やま作品の“空気感”をそのままスクリーンに落とし込んだ奇跡のような実写化でした。監督は山下敦弘氏、脚本は野木亜紀子氏。主演には成田狂児役として綾野剛さん、岡聡実役には当時新人の齋藤潤さんが抜擢され、驚くほどの化学反応を見せてくれました。

筆者が劇場で観たときの第一印象は、「とにかく空気がうまい」。中学生の教室、カラオケボックス、ヤクザの事務所……それぞれの空間に“何かが起きそうで起きない”緊張感が漂っていて、演出が徹底して余白を尊重している。これは原作の世界観に忠実である以上に、映画としての完成度を高めている部分でもありました。

綾野剛さんの演技は、もはや原作を超えた“成田狂児”の完成形だったと言っていいでしょう。粗暴で恐ろしくて、でもどこか愛嬌がある。彼の「紅（くれない）」の歌唱シーンには、文字通り“命を懸けて歌う”男の滑稽さと悲壮さが同居していて、観客席からも笑いとどよめきが同時に漏れていました。

そして聡実。斎藤潤さん演じる少年は、ただ“冷めた中学生”にとどまらず、確かに心が動いていく。その変化が微細な演技に込められていたのが素晴らしかったです。筆者は特に、彼が狂児に「ちょっと黙ってください」と真顔で言う場面が好きで……そこにこの作品のトーンがすべて詰まっている気がしました。

演出面でも、極端に抑えたBGMや無音の使い方が光っていました。映画音楽がないことで、逆に“声”や“沈黙”の重みが浮かび上がる。これって、演出家としての山下敦弘監督の矜持なんですよね。「音を使わないことで、音を際立たせる」──カラオケという題材とこれほど相性がいい演出は他にありません。

あの映画は、「これは実写じゃないと無理だった」と思わせる数少ない漫画原作映画です。そして同時に、「まだまだこの二人の物語を観ていたい」と、心から思わせてくれた。だからこそ、続編の可能性を考えると、筆者の心はどうしても騒がずにはいられないんです。

続編の“公式情報”と現在の展開

TVアニメ化決定！映画リバイバルやBD展開の動き

映画『カラオケ行こ！』の人気は、劇場公開が終わっても衰えを見せていません。2025年7月24日からは待望のTVアニメ化が決定し、制作は映像表現に定評のある〈動画工房〉が担当。AT-X・TOKYO MXをはじめとする地上波・BS各局でも放送が予定されており、映画版からアニメ版へとその魅力が広がろうとしています。

筆者としては、このアニメ化は“次なる入口”になると思っています。映画であのふたりに出会い、アニメで彼らの日常をもう一度追体験する。原作ファン・映画ファンどちらの視点でも楽しめる構成が期待されます。

さらに2025年8月7日にはBlu‑ray／DVDの発売が決定しており、ここでは特典映像の存在が大きな鍵となります。詳細はまだ明らかになっていませんが、山下敦弘監督や野木亜紀子氏によるメイキング、舞台裏トークなどが収録されるという噂も。あの独特の“間”がどう作られていったのかを知れる機会は、ファンにとって非常に貴重です。

また、2025年5月には映画リバイバル上映イベント「大感謝祭2025」も開催予定。新規映像の追加や、応援上映形式での展開も計画されており、単なる再上映では終わらない盛り上がりを見せそうです。このような動きは、続編を望む声の多さと、その熱量の証と言えるでしょう。

筆者もリバイバル上映のニュースを見たとき、「まだ“狂児と聡実”を終わらせたくないという、みんなの想いが届いたんだ」と、素直に胸が熱くなりました。アニメ、BD、リバイバル……これらは単なる商品展開ではなく、“物語が生き続けている”証なのだと感じています。

続編漫画『ファミレス行こ。』とは何か？

2023年12月に上巻が発売された和山やま氏の新作『ファミレス行こ。』は、事実上の『カラオケ行こ！』続編と位置づけられています。現在も月刊コミックビームにて連載中で、ファンの間ではすでに“聡実の新しい章”として話題沸騰中です。

物語は大学生となった岡聡実がファミレスでアルバイトを始める場面からスタート。そこに再び成田狂児が現れ、物語が再び静かに動き出す。カラオケボックスからファミレスへ──舞台は変わっても、二人の関係性の“温度差”は健在です。

面白いのは、漫画の構造が“対話劇”である点。カラオケからファミレスという流れは、まるで日常の風景を横断していくようで、ひとつの“人生の時間”を感じさせます。そして今回も、セリフの“行間”が抜群に効いています。狂児の一言一言が、岡の心を揺らしていく様子は、まさに“あの頃”の延長線上にあります。

また、注目すべきは『ファミレス行こ。』の上巻巻末に掲載された作者コメントや、ちょっとした“描き下ろしおまけ”。ここには本編では語られない“ふたりの関係の裏側”が、微細な視線や間接的な台詞で描かれている。こうした要素こそ、原作ファンの“優越感”を刺激してやまない部分だと感じます。

筆者は何度も読み返すうちに、「これは映画やアニメでは絶対に描ききれない繊細さだな」と確信しました。逆に言えば、この原作があることで、続編映像化の“伸びしろ”がものすごく広がっているとも言える。もし仮に、『ファミレス行こ。』が映像化される日が来たら……それは、きっと“あのふたり”の奇跡がもう一度起きる瞬間になるはずです。

映画続編はあり得るのか？その可能性を探る

原作ストックと映画興収から見る「続編の条件」

『カラオケ行こ！』の映画続編を現実的に考えるとき、まず注目すべきは「原作ストックの有無」と「興行成績」という2つの要素です。前者については、既に紹介した通り、続編漫画『ファミレス行こ。』が2023年12月に刊行され、現在も連載中。この点から見れば、映像化可能な“ネタ”は充分に存在しています。

問題は後者──つまり、映画『カラオケ行こ！』の興行収入がどれだけ続編制作にプラスとなる結果だったのか。実は、話題性やSNSでの盛り上がりに対して、興行的には「やや控えめ」との見方が主流です。ヒットではあるが、大ヒットではない。そのあたりが、現時点で続編製作決定の報が届かない要因といえるでしょう。

しかしながら、近年の映画業界では“後追い人気”や“配信需要”が続編決定の鍵となるケースも多く、TVアニメ化やBlu-rayの販売動向が好調であれば、再び映画プロジェクトが動き出す可能性は十分にあります。特に和山やま作品の“リピーター力”を考慮すれば、今後の盛り上がり次第で状況が一変することも。

筆者の実感としても、『カラオケ行こ！』は観終わった直後よりも、時間が経ってから“また観たくなる”タイプの作品だと感じています。その余韻がじわじわ広がり、いま改めて観たいという人が増えてきている。リバイバル上映やアニメ放送が、まさにその熱を再点火する燃料になるのではないでしょうか。

そう考えると、「映画続編はすでにファンの中で始まっている」と言っても過言ではありません。数字だけでは測れない“待望の気持ち”が、作品を未来へと導いていく。その可能性は、まだ完全には閉ざされていないのです。

今だから描ける“聡実と狂児のその後”とは

もし映画『カラオケ行こ！』の続編が実現するとしたら──今、どんな物語が描かれるのか。筆者はここに、ものすごくワクワクしています。なぜなら、『ファミレス行こ。』によって“その後”の岡聡実と成田狂児の輪郭が、静かに、でも確実に描かれ始めているからです。

『ファミレス行こ。』では、大学生となった岡が、あの頃と同じように淡々と、でも確かに何かを抱えながら生きている。その姿は、中学生だった“彼”が大人になる過程を経て、なおも変わらず狂児に会い続けていることの証でもあります。しかも、成田狂児はヤクザから足を洗い、別の人生を模索している様子が描かれています。

この“変化”のなかでなお続く関係──それこそが、映画という表現媒体にふさわしいドラマなのではないか。特に映像として見せたいのは、時間が経過したぶんだけ言葉が減り、その代わりに“視線”や“沈黙”で通じ合う関係性の描写です。これは映画でしか表現できない領域だと感じます。

もう一つ、筆者が強く思うのは、彼らが再び“歌”を通じて交わる場面があってほしいということです。かつての「紅（くれない）」に代わる新たな選曲──例えば「別れの曲」や「卒業ソング」など、今の年齢と心情に寄り添う楽曲。その一曲が、二人の関係をまた新しい形に変えていく──そんなシーンが観られたら、きっと胸が締めつけられるでしょう。

今だからこそ描ける“静かなその後”がある。そしてそれは、無理に物語を膨らませなくても、ただあの二人が“また会った”という事実だけで、観る者の心に深く刺さる。そういう映画を、筆者は観たいと思ってしまうのです。

「もしも続編があるなら」筆者の妄想シナリオ

大学生・聡実とヤクザ・狂児の新たな再会

もし映画『カラオケ行こ！』の続編が制作されるとしたら──筆者の脳内では、すでにそのオープニングがはっきりと見えています。舞台は大学の学食。淡々とカレーを食べる岡聡実（大学2年生）が、ふとした視線の先に、かつての成田狂児の姿を見つける。しかもスーツでもなく、作業服姿でもなく、“ただの人”としてそこに立っている──そんな場面です。

この再会には、ドラマチックな演出は不要です。むしろ“偶然”というより“なんとなくそうなる必然”として描かれるのが理想。狂児は「たまたま近くで働いてたから」と言うかもしれないし、聡実も「まあ、そっすか」としか返さない。でも、その会話の奥には、あの冬の日のカラオケボックスの記憶が微かに響いている。

二人の関係は、あの頃と変わったようで、変わっていない。岡は成長し、世の中を少しずつ知っていく中で、狂児のことも“客観的に”見られるようになっている。一方、狂児も、ヤクザという肩書を捨てて“無職の成田さん”になったが、それでも彼の“人懐っこさ”と“執着のなさ”は変わらない。

この「変化と継続」のバランスこそが、筆者が描く“その後”の根幹です。会わない時間が長かった分だけ、会ったときに流れる空気がやたらと穏やかで、でもどこか“寂しさ”も感じさせる。映画で描くなら、この微妙な“空気の振動”を一つひとつ丁寧にすくい取ってほしいと願ってやみません。

そしてきっと、ふたりはまたどこかの飲食店──例えばファミレスで、意味のないような会話を続けながら、ほんの少しずつ、距離を詰め直していくのだと思います。それは“物語の続きを描く”というより、“会ってなかった時間を埋める”ような、静かで優しい行為になるはずです。

カラオケから“別れの歌”へ…変化する音と関係

筆者の中で、続編で最も描いてほしいと願うのは“歌”の変化です。『カラオケ行こ！』の映画版では、X JAPANの「紅」が象徴的に使われていました。それは“叫び”であり、“自我”であり、“不器用な男の本音”でした。では、次に狂児が歌うべき曲はなんだろう？

筆者はそれを“別れの歌”だと思っています。それも、壮大なバラードではなく、どこかふたりの時間に寄り添うような、優しくて、少し切ない歌。たとえば「なごり雪」や「卒業写真」みたいな、昭和歌謡でもいい。いや、逆に岡のほうがそれを選曲するという構図もいいかもしれない。

かつては“うまく歌うこと”にこだわっていた狂児が、今はただ“歌いたいから歌う”。その姿を見て、岡がふと笑う──そんな静かなシーンを想像すると、筆者の心はどうしようもなく揺れてしまいます。歌は変わる。人も変わる。でも、“変わらずに会い続けたい”という想いだけは、どこかに残る。

この続編では、歌が“関係の象徴”から“別れの予感”へとシフトしていく構成が望ましい。会話で言えないことを、選曲や歌詞で伝える。あのときの「紅」がそうだったように、今度は“岡が狂児の曲を選ぶ”という逆転も見てみたい。歌が、ふたりの関係をそっと包むクライマックス──それだけで、続編を作る価値は十分にあります。

筆者の妄想では、最終的にふたりは「またカラオケ行こか」とだけ言って、別れる。予定もなく、日付も決めずに。でも、その約束が果たされるかどうかは描かれない。その“余白”を残して終わる続編こそが、『カラオケ行こ！』らしい終わり方だと思うのです。

原作でしかわからない“感情の行間”を読む

『ファミレス行こ。』巻末や台詞の裏側にあるもの

『カラオケ行こ！』の“その後”をもっと深く知りたいなら、原作続編『ファミレス行こ。』を読むしかありません。というのも、ここにはアニメや映画ではどうしても描ききれない、“感情の温度差”が丁寧に編み込まれているからです。特に注目してほしいのが、巻末に収録されているおまけページと、台詞の“余白”。

たとえば、岡聡実がファミレスでアルバイト中、成田狂児と偶然（かどうかは微妙な距離感で）再会する場面。彼らは互いに、過去を語らない。でもその会話の“途切れ方”が、逆にすべてを物語っている。これ、文字通りの行間にある“空白”が、最も雄弁にキャラクターの心理を語っているんです。

筆者が特に震えたのは、狂児が何気なく「おまえ、歌ってるんか？」と尋ねるシーン。岡は答えません。ただ一瞬、視線を逸らす──それだけ。ここには言葉以上の“諦念”や“距離感”が漂っていて、読者は否応なしに彼らの現在地を想像することになります。アニメや映画のように音も動きもない中で、ここまで情感を伝えるのは、まさに和山やまの筆力あってこそです。

巻末のおまけページには、さらに核心に迫るような仕掛けも潜んでいます。聡実が一人になった帰り道、携帯の着信履歴を見てふと立ち止まる──それだけの1コマが、何とも言えない余韻を残します。誰からの電話なのか？何を話すつもりだったのか？読者に委ねられたその“問いかけ”が、読後の世界を何倍にも膨らませてくれるのです。

これらの描写は、単に「映像化されていない」情報ではありません。むしろ“原作にしか描けない領域”であり、“原作を読んだ人にだけ開かれた心象風景”なんです。筆者はこうした行間の読解こそが、ファン活動の醍醐味だと思っています。そして、それを知ってから映画やアニメを見直すと、またまったく違う風景が見えてくる。

読者にだけ開かれた「ほんとうの続き」

筆者が考える『カラオケ行こ！』という作品の“本質”は、あくまで「読者や視聴者の中に残る余韻」にあります。だからこそ、原作を読んだ者だけが触れられる“続き”は、誰かと共有するものではなく、個人の記憶として育っていくべきものなんじゃないか──そんな風にも思うんです。

『ファミレス行こ。』を読んでいて思うのは、和山やま氏が明らかに「映像にしにくい部分」にこだわって描いているということ。カラオケボックスでは音楽が支配していた空間が、ファミレスでは沈黙とざわめきの混在になっている。その静けさの中で、ふたりは“話さない”ことで会話している。

これって、ある意味で「観客を置いてきぼりにする表現」なんですよね。でも、そこが最高に魅力的なんです。だって、すべてを説明された物語は、もうそれ以上“想像できない”から。『ファミレス行こ。』は説明しないことで、むしろ読者の想像力を最大限に引き出してくれる構造になっている。

映画やアニメでは、ある程度の情報を“与える”ことが必要ですが、原作はあくまで“奪う”ことによって物語を立ち上げる。そのスタンスの違いが、原作読者にだけ与えられる「ほんとうの続き」という特権になっていると感じます。

つまりこうです──“続編”はまだ映像化されていない。でも、もう私たちの手の中にある。原作というかたちで、既に存在している。そしてそれは、読んだ人だけにしか届かない“もう一つの結末”を語りかけてくれるんです。

カラオケ行こ！続編を妄想する意味とは

変わる日常、変わらない関係──その先を信じて

『カラオケ行こ！』という作品は、“一瞬の出会いが人生を変える”という、ある意味とてもシンプルな物語です。でも、その一瞬がただの出会いで終わらず、じわじわと残り続ける──そんな感覚を私たち読者に与えてくれるのが、この作品の最大の魅力だと筆者は思っています。

もしも続編があるとしたら、それは“再会の物語”になるでしょう。でもそれは、過去に戻ることではありません。むしろ「今、ふたりがどう変わったか」を描くこと。そして“変わらないものが何なのか”を、そっと浮かび上がらせること。それこそが、続編が存在する意味なのです。

大学生になった岡聡実と、ヤクザを辞めた成田狂児。どちらも時間の流れとともに変わっていく存在です。でも、あのカラオケボックスで築かれた関係性は、何かの拍子でふっと戻ってくる。あれは「先生と生徒」でも「ヤクザと中学生」でもなく、もっと言えば「友達」とも少し違う。“他人同士がほんの少しだけわかり合えた”という関係性。

この距離感は、現実の人間関係にも通じるものがあります。大人になるにつれて、会わなくなる人も増えるし、簡単に連絡も取れなくなる。でも、ふと思い出して、「あの人、元気かな」って思う瞬間がある。『カラオケ行こ！』続編の可能性を妄想することは、そんな“会えない誰かへの手紙”のような行為なのかもしれません。

筆者としては、映像化されようがされまいが、この物語の続きを思い描けること自体が、もうすでに“続編の体験”なんだと思っています。そしてその体験が、作品の奥行きをどんどん深めてくれる。だからこそ、今もこうして“その後”を想像してしまうのです。

読者として「先に原作で出会う」ことの特権

『カラオケ行こ！』の続編を原作漫画『ファミレス行こ。』で先に読んでいるという事実──これ、実はとてつもない特権だと筆者は思っています。なぜなら、映像化される前にキャラクターたちの“変化”や“揺らぎ”を、自分のペースで、自分だけの解釈で感じられるからです。

原作にしかない描写、例えば岡がバイト後にひとりで店内を見つめる場面や、狂児が“誰かに会いに行く前”に鏡を直す仕草。これらはセリフもなく、ただの一コマかもしれない。でも、それらを読むことで「このふたりは、今どう思ってるんだろう？」と想像が広がっていく。

そして、その想像を携えてアニメや映画を観ることで、受け取る情報の解像度がまるで違ってくるんです。これが“先に読んだ者の特権”。ただストーリーを知るという意味ではなく、“彼らの心の中”により深く入っていける鍵を持つことができる。それが、原作読者だけに与えられた優越感なのです。

筆者としては、この“先に読む”という行為が、単なるネタバレを超えて、“作品世界を味わうための準備運動”になると考えています。だから、今まだ『ファミレス行こ。』を読んでいない人がいるなら、心からこう言いたい。「今読むと、映像が何倍も楽しくなるよ」と。

『カラオケ行こ！』の続編を妄想するという行為は、決して叶わない夢を追うのではなく、自分だけの感情と向き合うためのきっかけでもあります。そしてその入口は、まぎれもなく原作の中にあります。だからこそ──読むべきなんです。いま、このタイミングで。

カラオケ行こ！続編妄想まとめ

再会を描くなら、“時間”が主役になる

ここまで、映画『カラオケ行こ！』の続編がもしあるなら──という前提で、筆者なりに妄想を膨らませてきました。でも、やっぱり最後に思うのは、「続編を描くなら、“時間”そのものを主役に据えるべきだ」ということです。

人は変わる。でも、すべてが変わるわけじゃない。あのカラオケボックスで始まった奇妙な関係は、きっと大人になっても、形を変えながら続いていく。原作『ファミレス行こ。』がまさにそうであったように、描かれるのは“劇的な何か”ではなく、再会して少し会話して、また離れて──そんな“何でもない時間”。

そして筆者が続編で一番見たいのは、“それでもまだ関係が続いている”という静かな奇跡。岡聡実が、もう合唱部でもないし、声変わりも終わってるけど、成田狂児と再び向き合う。かつてのように歌の指導なんてしない。でも、ただ“会っている”という事実が、すでに物語なんです。

続編が映画で描かれるか、アニメで再構成されるか、それはまだわかりません。でも、“妄想”すること自体が、この作品を愛している証なんだと思います。そしてきっと、そうやって愛され続けた物語は、いつかどこかで、もう一度私たちの前に姿を見せてくれる気がしています。

『カラオケ行こ！』の続きが見たい。そう思う人が、今もどこかでページをめくり、画面を見つめている。だからこそ、この妄想のすべてに意味がある。筆者はそう信じています。

“会いたい気持ち”が物語をつくる

最後に、もう一度だけ言わせてください。『カラオケ行こ！』の続編を妄想する理由──それは、あのふたりに“もう一度会いたい”からです。ドラマチックな展開じゃなくていい。衝撃の真実が明かされなくてもいい。ただ、聡実と狂児が、またひとつのテーブルを挟んで座ってくれたら、それだけでじゅうぶんなんです。

この気持ちは、きっとファンの誰しもが抱えているものでしょう。映画であの二人に出会い、原作『カラオケ行こ！』を読み、『ファミレス行こ。』でその続きを感じた人たちの中に、今も確かに残り続けている“再会の願い”。それが、この記事をここまで書かせた理由でもあります。

筆者にとって、物語の続編とは“情報の補完”ではなく、“感情の再燃”です。そしてその火種は、常に読者や観客の中にあります。誰かが「また観たい」と思うことで、物語は未来へと繋がっていく。『カラオケ行こ！』もまた、そんな“観たい”という気持ちによって、新しい時間を生き始めるかもしれません。

だからどうか、この妄想を読んで「そんな続編、ちょっと観てみたいかも」と思ったなら、まずは原作を手に取ってほしい。そこには、今も生きているふたりがいます。まだ言葉にできていない想いを抱えて、静かにページの中で待っています。

“会いたい”という気持ちが、物語を生む──それが、筆者がこの作品から教わった一番大切なことかもしれません。