『わたしの幸せな結婚』7巻で描かれる出来事は?美世と清霞の物語の進展を紹介

春の桜が舞う神社の境内で白無垢姿の花嫁と銀髪の青年が向かい合う大正浪漫風の幻想的な結婚式の情景 未分類

『わたしの幸せな結婚』小説7巻では、美世と清霞が婚礼当日の危機を乗り越え、ついに祝言を挙げて正式な夫婦となります。

しかし、その幸せの裏には、元同級生・君緒による呪い、五道の父と因縁のある「土蜘蛛の脚」、そして清霞の不在という試練がありました。

なかでも忘れられないのは、息を切らせて戻ってきた清霞と、彼を信じて待ち続けた美世の再会です。……誰かに愛されることさえ怖かった少女が、ようやく自分の幸せを信じられるようになった。その変化を思うと、胸が熱くなります。

『わたしの幸せな結婚』小説7巻の結末は?あらすじと基本情報

小説7巻の結末は、美世と清霞が無事に結婚し、新しい家庭を築き始めるというものです。ただし、婚礼が実現しても、異形をめぐる事件や二人の将来の問題が完全に解決するわけではありません。

むしろ7巻は、結婚に至るまでの物語を締めくくり、夫婦として生きる物語へ移行する重要な節目です。

KADOKAWAの公式作品紹介でも、婚礼を境に、美世が愛されて幸せになるまでの物語から「家族」を描く物語へ進むことが示されています。

原作小説7巻の発売日・著者・出版社

まず、今回取り上げる作品の基本情報を確認しておきましょう。

項目 内容
作品名 わたしの幸せな結婚 七
著者 顎木あくみ
イラスト 月岡月穂
出版社 KADOKAWA
レーベル 富士見L文庫
発売日 2023年7月14日
ページ数 272ページ
ISBN 9784040750392
発売当初の定価 726円(税込)
2026年10月確認時の公式掲載価格 880円(税込)

価格は出版社の改定や販売形態によって変動するため、最新情報はKADOKAWA公式の商品案内で確認してください。

また、この記事で紹介するのは顎木あくみによる原作小説の第7巻です。

高坂りとが作画を担当する漫画版も刊行されていますが、小説と漫画では巻数の対応が異なります。

7巻で起きる重要な出来事を時系列で整理

物語の主要な展開を、出来事が起きる順番で整理すると次のようになります。

  • 美世と清霞が春の祝言に向けて準備を進め、清霞は軍からの退役と五道への引き継ぎを進める
  • 美世が葉月と訪れた料理の勉強会で、元同級生の長場君緒と再会する
  • 君緒のおまじないによって美世が呪われ、本心とは違う言葉を口にするようになる
  • 正清が呪いを見抜き、清霞が解呪する
  • 長場家で異形「土蜘蛛」の脚が発見され、清霞が婚礼前夜から封印作業に当たる
  • 対異特務第二小隊の救援によって清霞が式場へ駆けつけ、美世と祝言を挙げる
  • 祝言後、幸次から香耶の手紙が届けられ、さらに君緒による襲撃事件が起こる

こうして見ると、7巻は結婚式を中心に、過去から続く因縁と新しい事件が複雑に絡み合う構成になっています。

ただ、僕が興味深いと感じるのは、事件の数そのものではありません。

これまでは清霞が美世を救う場面が大きな転機になっていましたが、7巻では美世自身の判断や、二人を支える周囲の人々の力が目立つようになります。

幸せを与えられる物語から、幸せを守りながら生きる物語へ。

この転換こそ、7巻全体を貫いている変化なのではないでしょうか。

6巻までの物語と7巻のつながり

第1巻で久堂家へ送られた美世は、自分が大切にされる未来を想像できない少女でした。

斎森家では父や継母、異母妹の香耶から冷遇され、自分の希望を口にすることさえ難しかったのです。

その美世が清霞と出会い、少しずつ安心できる居場所を手に入れます。

さらに第6巻では、甘水直が率いる異能心教をめぐる大きな事件を経て、二人の絆は深まっていきました。

しかし、美世の「夢見の力」が特別な異能であることは変わりません。

大きな脅威を退けても、その力を利用しようとする人物が再び現れる可能性があります。

だからこそ清霞は、軍人としての立場と美世を守る責任の間で、新しい選択を迫られています。

7巻は、恋愛の進展だけでなく、二人がこれからどのように生活を築くのかを描き始める巻でもあるのです。


君緒のおまじないとは?美世が呪われた理由と解決まで

美世に呪いをかけたのは、小学校時代の同級生だった長場君緒です。

君緒は料理の勉強会で美世と再会し、新婚生活に関するおまじないを教えます。しかし、それが美世の言動をゆがめる呪いにつながっていました。

この事件は結婚式前の騒動ですが、君緒との問題は祝言後にも続いていきます。

料理の勉強会で再会した長場君緒の境遇

美世は清霞の姉・葉月とともに、塩瀬家で開かれる料理の勉強会に参加します。

そこで再会したのが、かつて本江という姓だった長場君緒でした。

二人は小学校時代の同級生ですが、現在の境遇は大きく異なっています。

美世は清霞との結婚を控え、周囲から祝福される立場になっていました。

一方、君緒は結婚した長場家で、夫や義母との関係に苦しんでいます。

義母の異常な言動への対応を押しつけられ、夫からも十分に尊重されない生活を送っていたのです。

かつて自分と似たような立場にいた美世が、今では名家の当主から大切にされている。

その落差が、君緒の感情を大きく揺さぶったと考えられます。

ただし、君緒の行動を単なる嫉妬だけで説明することには注意が必要でしょう。

彼女が苦しい生活を送っていたことと、美世を傷つける行動を選んだことは、分けて考えなければなりません。

僕には、この再会が「幸せになった人」と「幸せになれなかった人」を対比させるだけの場面には思えませんでした。

同じように傷ついてきた二人が、まったく違う方向へ進んでしまった。

その事実が、なんとも苦しいのです。

呪いによって美世が清霞に冷たい言葉を口にする

君緒のおまじないを受けた後、美世には奇妙な異変が起こります。

清霞を愛しているにもかかわらず、自分の意志に反して、彼を拒絶するような言葉が口から出てしまうのです。

特に印象的なのが、清霞が美世との距離を縮めようとした場面です。

美世は本当なら彼の気持ちを受け入れたいはずなのに、口から出るのは正反対の言葉でした。

慌てて自分の口を押さえ、その場から離れようとする美世。

その小さな仕草に、彼女の動揺が凝縮されているように感じます。

一方、清霞も美世の突然の態度に戸惑います。

普段の彼なら、異能に関わる不自然な現象を鋭く察知できるでしょう。

しかし、美世との結婚を目前にした彼は、相手の気持ちや自分の振る舞いについて悩むことに意識を向けていました。

五道や辰石一志に、女性への謝罪について助言を求めるほどです。

かつて冷酷無慈悲と評された清霞が、恋人との行き違いに頭を抱える。

微笑ましい変化ではありますが、同時に、愛情が判断を鈍らせることもあると示しているように見えます。

呪いを見抜いたのは正清|清霞による解呪と残った影響

美世の異変を見抜くきっかけを作ったのは、清霞の父・久堂正清でした。

正清は美世に呪いがかかっていることを指摘し、それが生命に直接関わるほど強力なものではないものの、言動に悪影響を及ぼしていると見抜きます。

その後、美世は清霞に事情を伝え、清霞自身の手で呪いが解かれます。

ただし、解呪した瞬間に影響が完全に消えるわけではありません。

美世は術の影響を受けやすいため、しばらくは言葉に残る異変を気にする必要がありました。

母・澄美の墓参りや薄刃家での花見の頃には、徐々にその影響が薄れていきます。

ここで大切なのは、呪いの原因が判明した後、二人が互いの本音を改めて伝え合えるようになることです。

清霞は自分が美世との結婚に浮かれていたことを認め、美世も清霞への愛情を失っていないと伝えます。

呪いを解くことは、異能による問題の解決です。

けれど、誤解を解くためには、相手の話を聞く必要がある。

その二つが別々に描かれているところに、僕はこの作品らしい丁寧さを感じました。

※画像はAIによるイメージ

君緒が清霞に助けを求めた場面の意味

君緒は美世に呪いをかけただけでなく、清霞本人に家庭の事情を相談する場面もあります。

長場家では義母に異形が憑いている疑いが生じ、君緒は夫とともに対異特務小隊を訪れます。

そこで彼女は、夫からひどい扱いを受けていることを訴え、清霞へ個人的な助けを求めました。

しかし清霞は、職務の範囲を超える問題に直接介入することを拒みます。

適切な機関へ事情を伝える意向は示したものの、君緒が望んだ形で救いの手を差し伸べることはありませんでした。

この対応には、軍人としての立場を守るという合理性があります。

一方で、苦しい状況にいる君緒からすれば、自分を救ってくれるかもしれない人物に拒絶された経験として受け止められた可能性があります。

清霞の判断を一方的に責めることも、君緒の反応を完全に正当化することもできません。

ただ、彼女が誰かに助けを求めたという事実は、後の事件を考えるうえで見落とせない要素です。

君緒には助けを必要とする事情があった。

そして、その苦しさを理由に美世を傷つけてもよいわけではなかった。

この二つの事実が同時に存在しているところに、彼女の物語のやりきれなさがあります。


土蜘蛛の脚とは何か?五道の父との因縁と結婚式当日の救援

婚礼前日に清霞が緊急出動した理由は、長場家で強力な呪物「土蜘蛛の脚」が発見されたためです。

清霞は夜を徹して封印作業に当たり、婚礼開始時刻が迫っても任務を離れられませんでした。しかし、対異特務第二小隊が救援に駆けつけたことで、清霞は式場へ向かうことができたのです。

ここは7巻の結末を理解するうえで、非常に重要な経緯です。

長場家の土蔵で発見された「土蜘蛛の脚」

長場家では、義母の異常な言動が問題となり、異形の関与を疑って軍へ相談が持ち込まれます。

調査の結果、屋敷の土蔵で発見されたのは、強い妖気を放つ呪物でした。

その正体が、土蜘蛛の脚です。

ここで区別しておきたいのは、7巻で直接対処する対象が、土蜘蛛本体ではなく、その一部である「脚」という呪物だという点です。

脚だけでも容易に移動させられないほど危険で、隊員たちは現場で封印作業に取り組むことになります。

では、なぜ長場家にそのようなものがあったのでしょうか。

清霞の追及によって、君緒が怪しい旅の僧侶から木箱を受け取っていたことが明らかになります。

君緒は、願いを叶えるという触れ込みで渡されたものを、義母への復讐に利用しようとしていました。

しかし、呪物の危険性は君緒が想定していたものを大きく超えていたのです。

僧侶の正体や、その呪物がどのような経路で持ち出されたのかについても、不穏な疑問が残ります。

単なる家庭内の揉め事として始まった相談が、強力な異形の存在へつながっていく。

この展開には、異能をめぐる新たな脅威が身近な生活の中にも入り込むという怖さがあります。

土蜘蛛が五道の父・壱斗と清霞に残した因縁

土蜘蛛は、五道佳斗の父である五道壱斗と深い因縁を持っています。

壱斗はかつて対異特務小隊の隊長を務めており、土蜘蛛と対峙した任務で命を落としました。

そして清霞にとっても、この出来事は軍人としての歩みに大きな影響を与えています。

壱斗が残した責任を引き受けることが、清霞の隊長就任につながっていたからです。

つまり、今回の呪物は、単に危険な異能案件というだけではありません。

五道にとっては父を失った過去を思い出させ、清霞にとっては自分が背負ってきた責任の原点を突きつける存在なのです。

しかも、この事件が起こったのは、清霞が退役へ向けた引き継ぎを進めている時期でした。

過去の責任を手放そうとする瞬間に、その責任を引き受けた理由そのものが再び目の前に現れる。

物語の構成として、非常に皮肉な重なり方をしています。

清霞はなぜ結婚式に遅れた?第二小隊の救援で間に合うまで

長場家の現場で、清霞たちは夜を徹して土蜘蛛の脚の封印に取り組みます。

封印作業は進みますが、危険な呪物を安全に移送するための対応も必要でした。

一方、結婚式の開始時刻は刻々と近づいています。

五道は清霞に式場へ向かうよう促しますが、清霞は任務を途中で放棄することに踏み切れません。

ここで状況を変えたのが、対異特務第二小隊の救援でした。

第二小隊から派遣された陣之内薫子や辰石幸次らが現場の対応を引き継いだことで、清霞はようやく婚礼へ向かえるようになります。

そして、予定の時刻を少し過ぎた頃、清霞は息を切らせて式場へ到着しました。

待っていた美世は彼のもとへ駆け寄り、二人は無事に再会します。

……この場面が、どうしても胸に残るのです。

清霞は誰より強い異能者として描かれてきました。

けれど、彼一人の力だけでは、すべてを解決して結婚式に間に合わせることはできなかった。

清霞が美世のもとへ帰れたのは、彼自身の力だけでなく、仲間たちが任務を引き受けてくれたからです。

美世と清霞の結婚を実現させたのは、二人の愛情であると同時に、周囲の人々とのつながりでもあった。

僕は、そこに7巻の大きな変化を感じました。

美世と清霞の祝言はどう描かれた?

清霞が到着した後、二人の婚礼は無事に執り行われます。

媒酌人を務めるのは、対異特務第二小隊の隊長であり、清霞の元上司でもある光明院です。

神社での厳かな儀式が進み、美世と清霞は三三九度を経て夫婦の契りを交わします。

美世は最初、目の前の儀式についていくことに精一杯ですが、少しずつ自分が本当に清霞の妻になるのだという実感を得ていきます。

僕がこの場面で注目したいのは、華やかな衣装よりも、隣にいる清霞の存在です。

結婚するという事実は、すでに二人の間で決まっていました。

それでも、隣にいる人の温かさや視線によって、初めてその事実が心に届く瞬間がある。

美世にとっての婚礼は、家同士の取り決めが完成する日ではなく、自分の望む未来が現実になる日だったのでしょう。

その後、帝都会館で開かれる祝宴には、家族や軍の関係者、二人を見守ってきた人々が集まります。

かつて美世が暮らしていた世界は、斎森家という閉ざされた場所でした。

それが今では、これほど多くの人々に祝福される場所へ広がっている。

その変化だけでも、ここまでの物語が決して無駄ではなかったと感じられます。

※画像はAIによるイメージ

清霞の退役と五道への引き継ぎはどうなる?

7巻の清霞は、すでに軍から退く意思を固め、五道への隊長職の引き継ぎを進めています。

単に退役を漠然と考えている段階ではありません。

ただし、婚礼の時点で軍の仕事がすべて終わっているわけではなく、長場家の事件にも引き続き対応しています。

清霞が退役を選ぼうとする背景には、美世の夢見の力をめぐる危険があります。

軍人である以上、任務や組織の判断に従わなければならない場面もあります。

しかし清霞は、美世を守るために、より自由に動ける立場を必要としているのです。

一方、五道は清霞の退役を素直に喜んでいるわけではありません。

尊敬してきた人物の後を継ぐことへの不安や、自分が新たな責任を背負うことへの複雑な感情があります。

それでも、清霞から役割を引き継ぐ未来へ向き合わなければならない。

僕には、この二人の関係も7巻の隠れた見どころに思えます。

かつて清霞が五道の父から受け継いだ責任を、今度は五道自身が引き受けようとしている。

親から子へ、そして次の世代へ。

美世と清霞の結婚と並行して、こちらでも一つの継承が始まっているのです。


祝言後の結末は?香耶の手紙と君緒の小刀による襲撃

7巻では、結婚式が終わってからも重要な出来事が続きます。

幸次が美世へ香耶からの手紙を届ける一方、君緒は後日、美世に小刀を向けます。しかし、清霞が贈ったお守りによって美世は無傷で守られ、君緒は警察へ引き渡されます。

結婚式の成功だけで物語が終わらないところが、この巻の印象をさらに深くしています。

幸次から届けられた香耶の手紙

祝宴で美世は、幼なじみの辰石幸次と再会します。

幸次は現在、対異特務第二小隊に所属しており、清霞が婚礼に間に合うための救援にも関わっていました。

かつて美世が心の支えにしていた少年が、今では自分の立場で役割を果たしている。

それだけでも、時間の流れを感じさせる再会です。

そして幸次は、美世に一通の手紙を渡します。

差出人は、異母妹の斎森香耶でした。

香耶はかつて美世を見下し、清霞との関係を壊そうとした人物です。

その相手から届いた手紙を、美世が何のためらいもなく受け取れるはずはありません。

しかし、実際の文面には相変わらず皮肉めいたところがありながらも、かつてのような敵意だけでは説明できない変化が感じられます。

美世もまた、香耶の言葉を以前とは違う気持ちで受け止めます。

僕は、この場面にかなり大きな意味があると思っています。

香耶が完全に優しい妹になったわけではありません。

美世も過去の出来事を忘れたわけではないでしょう。

それでも、相手の言葉を過去の恐怖だけで判断せず、今の自分の感覚で受け止められるようになった。

過去が消えたのではなく、過去に支配される度合いが少しずつ変わっている。

それが、美世の成長を示しているように感じました。

婚礼後、君緒はなぜ美世を小刀で襲ったのか?

祝言から数日後、美世は清霞への差し入れを持って屯所を訪れます。

そこで再び君緒と顔を合わせることになります。

君緒は会話の途中で小刀を取り出し、美世に向けて振り下ろしました。

しかし、美世は傷を負いません。

清霞から渡されていたお守りが働き、攻撃から彼女を守ったためです。

その後、君緒は取り押さえられ、警察へ引き渡されます。

襲撃が失敗した後、君緒は自分の苦しい境遇と、美世への強い不満をぶつけます。

彼女は、自分が夫や義母に尽くしても報われない一方で、美世が愛情を得て幸せになっていることを受け入れられなかったのでしょう。

もちろん、本人が抱えた苦しみは他人への攻撃を正当化しません。

しかし、君緒の叫びは、単に美世を嫌っていたという言葉だけでは整理できないものです。

彼女が求めていたのは、本当に美世の不幸だったのでしょうか。

それとも、自分も誰かに大切にされたかったのでしょうか。

この二つは似ているようで、まったく違います。

僕には、後者の願いが満たされないまま、前者の行動へ変わってしまったようにも感じられます。

彼女の行動を肯定することはできません。

それでも、あれほど追い詰められる前に、別の道がなかったのだろうか。

そんな問いが残る結末でした。

清霞のお守りが美世を守った意味

君緒の襲撃で美世を守ったのは、清霞が彼女に持たせていたお守りでした。

この結果は、清霞がそばにいない状況でも、美世を守るための備えが機能したことを示しています。

作品内でお守りの仕組みのすべてが詳細に説明されるわけではありませんが、少なくとも襲撃から美世を守ったことは明確です。

ここには、もう一つ興味深い対比があります。

結婚式では、清霞本人が美世のもとへ戻ることが重要でした。

ところが婚礼後の襲撃では、清霞が直接駆けつけて攻撃を防ぐのではなく、彼が用意していた守りが美世を救います。

愛する人を守る方法は、いつでも目の前に立つことだけではない。

自分がいない時間にも、その人が安全に過ごせるように考えておく。

その意味では、お守りは清霞の愛情が形になったものとして読むこともできるでしょう。

ただし、僕はこの場面を完全な美談とは考えていません。

お守りが美世を守った一方で、君緒が抱えていた問題まで解決したわけではないからです。

一人の幸福を守ることと、別の誰かの苦しみを救うことは、必ずしも同じではありません。

この難しさを残しているからこそ、7巻の結婚は単純な幸福の完成としては描かれていないのだと思います。

終章では新婚旅行の話題も登場

物語の終章では、初夏を迎えた美世と清霞の様子が描かれます。

土蜘蛛の脚に関わる事件の後処理などで清霞の忙しい日々は続いていますが、二人は昼休みに公園で会い、一緒に食事をする時間を持ちます。

そこで清霞は、仕事が落ち着いたら新婚旅行に行かないかと美世に提案します。

華やかな祝言とは違い、ここで描かれるのは夫婦の日常の一場面です。

一緒に食事をすること。

相手の疲れを気遣うこと。

これから行きたい場所について話すこと。

大きな事件を乗り越えてきた二人にとって、そんな何気ない時間こそ大切なものになっていくのでしょう。

僕は、この穏やかな終章が好きです。

物語のなかで二人が求めてきた幸せは、特別な儀式だけに存在しているわけではありません。

忙しい日の合間に、愛する人と同じ時間を過ごせること。

それを幸せだと感じられるようになった美世の変化が、静かに伝わってきます。


7巻の感想・考察|美世と清霞の結婚が描いた本当の変化

ここからは、7巻で描かれた出来事をもとに、僕自身の解釈を深めてみたいと思います。

結婚を迎えた美世と清霞の変化は、単純に「愛されて幸せになった」「冷たい男性が優しくなった」という言葉だけでは説明できない気がしています。

むしろ、二人がかつて持っていた弱さや恐怖が、別の意味へ変わっていく過程にこそ注目したいのです。

美世が清霞を待つ姿は、従属から信頼への変化だった

結婚式当日の美世は、清霞が帰ってくることを信じて待ち続けます。

一見すると、愛する男性を健気に待つ花嫁の美しい場面です。

けれど僕は、この描写をそれだけの美談として受け止めたくありません。

なぜなら、美世は以前から「待つこと」を強いられてきた人物だからです。

第1巻の斎森家では、自分の望みよりも他人の都合を優先し、相手の判断を黙って受け入れることが求められていました。

あの頃の美世にとって、待つことは自由な選択ではなく、自分を守るための手段だったのかもしれません。

しかし、7巻では違います。

清霞が戻らないことに不安を抱きながらも、美世は彼が交わした約束を信じようとします。

そして、清霞が到着したと知った瞬間には、自ら彼のもとへ駆け寄ります。

ここが、たまらなく大切なのです。

待っている間は、相手の言葉を信じる。

戻ってきたら、自分から会いに行く。

そこには、ただ指示を受け入れるだけだった美世とは違う、自分の意志で動く美世がいます。

同じ「待つ」という行動でも、恐怖から従うことと、信頼して選ぶことはまったく違う。

そして、その違いは外から見るだけでは簡単に分からないものです。

清霞が息を切らして戻ってきた姿と、美世が彼のもとへ急ぐ姿。

この二つが重なった瞬間、僕には二人の関係が対等なものへ近づいたように思えました。

助けに来てくれる人と、助けられる人。

その関係から、互いを信じて同じ未来へ進む二人へ。

……ここまで来たんだね。

第1巻の美世を思い出すと、その変化が本当に胸に迫ります。

美世が清霞の名前を呼べない理由と呪いの残酷さ

7巻では、美世が清霞を名前で呼ぶことにも注目が集まります。

これまで美世は清霞を「旦那さま」と呼んできました。

しかし、結婚を控え、葉月や清霞本人とのやり取りのなかで、名前で呼ぶことが意識されるようになります。

これは単なる呼び方の問題なのでしょうか。

僕には、そうは思えません。

「旦那さま」という呼び方には、美世が久堂家へ来た当初の立場が色濃く残っています。

自分を引き取ってくれた家の当主。

結婚相手として指定された男性。

もちろん、その呼び方自体が悪いわけではありません。

けれど、名前を呼ぶことには、相手を肩書きではなく一人の人間として見つめる意味があります。

そして、自分も相手にとって対等な存在として近づいていく勇気が必要です。

だからこそ、その時期に美世が呪いを受け、本心とは違う言葉しか口にできなくなる展開には、皮肉な残酷さを感じます。

やっと自分の気持ちを伝えられるようになってきた。

やっと、相手との距離を自分の意志で縮めようとしている。

その矢先に、言葉の自由を奪われるのです。

特に忘れがたいのは、美世が自分の口を押さえる行動です。

言いたくない言葉を止めたい。

大切な相手を傷つけたくない。

けれど、口から出た言葉は取り消せない。

幼い頃の美世は、周囲の圧力によって本音を飲み込んできました。

今度は呪いによって、本音とは反対の言葉を発してしまいます。

原因は異なりますが、どちらも自分の思いを正しく伝えられない苦しさです。

ここで清霞が呪いを解くことには、異能による救出以上の意味があると考えています。

美世が自分の言葉を取り戻し、相手へ思いを伝える可能性を守った。

それが、今回の解呪に込められた本質ではないでしょうか。

清霞の優しさは、君緒を救えなかった事実と切り離せない

清霞は美世と出会ったことで大きく変わりました。

第1巻では他人を簡単には信用せず、相手との距離を厳しく保っていた人物です。

しかし7巻では、美世への愛情を隠せず、恋愛について部下に相談するほど柔らかな一面を見せます。

その変化は微笑ましいものです。

ただし、それを「清霞は誰に対しても優しくなった」と受け止めるのは早いでしょう。

君緒が助けを求めた場面では、清霞はかなり厳しい態度を取っています。

もちろん、軍人である彼がすべての家庭問題を直接解決できるわけではありません。

職務上の線引きをすることには、合理的な理由があります。

それでも、僕はこの場面を読むと少し複雑な気持ちになります。

なぜなら、かつての美世も、誰かが自分を助けてくれることなど期待できない環境で生きていたからです。

清霞は美世の苦しみに気づき、彼女を大切にしてきました。

けれど、似たような苦境にある君緒を、同じようには受け止められなかった。

この違いは、清霞が冷酷な人物であることの証明ではありません。

むしろ、彼の愛情には明確な対象があり、できることにも限界があるという現実を示しているように思います。

誰かを深く愛することと、すべての人に救いの手を差し伸べられることは別なのです。

ただ、もう一つ考えたいことがあります。

もし君緒が、追い詰められる前に相談できる相手を見つけていたら。

もし彼女の苦しさが、誰かに受け止められていたら。

結末は違っていたのでしょうか。

その答えは作中でも単純には示されません。

君緒の行動を許す必要はありませんが、彼女が助けを求めたことまで無意味だったと考えたくない。

この苦さが、7巻の幸福をより複雑なものにしているのです。

[[IMG|挿絵|春の夕暮れの日本庭園で寄り添う和装の男女の後ろ姿と遠くに咲く桜の木を描いた

コメント

タイトルとURLをコピーしました