プリンセッションオーケストラ 上松の関与は？楽曲制作や関連作品とのつながりを検証

アニメ『プリンセッション・オーケストラ』がただの音楽バトル作品に見えるなら──それはきっと「音の本質」をまだ覗いていないから。

この作品を語るうえで避けて通れないのが、音楽プロデューサー・上松範康の存在。『戦姫絶唱シンフォギア』を生み出した彼の関与が、本作にも“音で戦う”美学と説得力を注ぎ込んでいます。

では実際に、上松は『プリンセッション・オーケストラ』のどこに、どれほど関わっているのか？ そして、楽曲制作における構造的な仕掛けや、過去作との“響き合い”とは？

この記事では、上松の関与ポイントから楽曲制作の深層、さらに関連作品とのつながりまでを徹底検証。音楽アニメの本質が“旋律の裏側”から浮かび上がってくる、その瞬間を一緒に目撃してほしい。

上松範康の関与はどこまで？製作総指揮としての役割とは

製作総指揮としての立ち位置とその意図

『プリンセッション・オーケストラ』における上松範康の名前は、単なる“音楽制作”にとどまりません。本作において彼は「製作総指揮」という立場で全体の舵取りを担っており、アニメの物語構成やキャラクター設定、音楽演出にまで影響を及ぼしています。

製作総指揮というポジションは、通常ならば商業的な判断を下す側──つまり“裏方”の象徴ですが、上松の場合は違う。むしろ彼はその立場から、物語の中心に“音楽”を据える構造を押し通したと言っていい。登場人物たちは音楽の力で戦い、音楽でつながり、音楽で運命を変えていく。その演出の起点に、彼の思想が深く息づいています。

実際、キャラクターたちのバックボーンや能力設定、さらには変身バンクやライブシーンに至るまで、「音楽が物語を動かす」という明確な軸が通っている。この“音を信じる物語”という設計思想こそ、上松がこれまでに手がけてきた『戦姫絶唱シンフォギア』や『うたの☆プリンスさまっ♪』と共鳴するものです。

筆者としても、初回放送を観た瞬間に「あ、これは上松範康の匂いがする」と感じたのをはっきり覚えています。楽曲だけではなく、演出の呼吸やセリフの間合い、物語の高揚感に至るまで、全体が“音楽の鼓動”で構成されているような感覚。この一体感は、ただのアニメ制作スタッフでは成し得ない、音楽家としての感性が全体設計にまで浸透している証です。

そして何より、企画原作に名を連ねるUNISONとキングレコードの布陣を見るに、このプロジェクトは最初から「音楽を中心に据えた世界観を創る」ために立ち上げられたことがわかる。上松が製作総指揮として起用されたのは、まさにこの企画意図を実現するための“最適解”だったのです。

「音楽で世界を変える」思想が貫かれる構造

本作のタイトルにもある「オーケストラ」という言葉。その意味を本気で掘り下げるなら、単なる楽団というよりも、“複数の旋律が共鳴し合って一つの世界を紡ぐ”という象徴的な表現と捉えるべきです。上松範康が紡ぐ音楽世界では、登場人物一人ひとりが“楽器”であり、“旋律”であり、物語そのものが一つの交響詩なのです。

特筆すべきは、OP楽曲「ゼッタイ歌姫宣言ッ！」に代表されるような「音楽がキャラの存在理由になる」設計。上松が得意とする“歌による感情爆発”と、アニメ演出が完璧に合致していて、もはやどちらが先に存在したのかわからないほどに融合しています。

こうした構造の裏には、上松自身が長年培ってきた「音楽を物語にする技術」があります。ただのBGMではない、物語を駆動する音楽。そこに彼は命を懸けてきた。『シンフォギア』で証明された「音楽で覚醒する物語」を、今回は“少女たちのプリンセス性”に乗せて再演しているわけです。

また、プロジェクトに参加するElements Gardenの他メンバー──菊田大介や笠井雄太たちも、上松の思想を深く理解した上で参加しており、全楽曲に共通する“物語との連動性”は見事としか言いようがない。この統率力こそが、製作総指揮・上松範康の真骨頂でしょう。

『プリンセッション・オーケストラ』が「音楽アニメ」であるだけでなく、「音楽で世界を変えようとするアニメ」であること──その真意は、上松範康という人物を深掘りすることで初めて見えてくるのです。

オープニング「ゼッタイ歌姫宣言ッ！」に宿る上松イズム

楽曲構成・転調に見る“上松節”の分析

『プリンセッション・オーケストラ』のオープニング主題歌「ゼッタイ歌姫宣言ッ！」は、アニメの幕開けを飾るにふさわしい爆発力を備えた楽曲だ。その作詞・作曲・編曲を担っているのが、上松範康自身。まさに、彼の真骨頂が炸裂した一曲である。

一聴して感じるのは、怒涛のように展開していく曲構成と、めまぐるしい転調の数々。序盤のパワフルなイントロから、サビ前に一瞬テンポを落とす緩急の演出、そしてサビで一気にスケールを広げて爆発させる──そのドラマチックな構成は、まさに“上松節”そのものだ。

この手法は、『戦姫絶唱シンフォギア』の数々の挿入歌でも繰り返し見られたスタイル。単なるキャッチーなメロディではなく、「感情を旋律で翻訳する」という上松の音楽哲学が貫かれている。それゆえに、聴いていて“高揚感”が段階的に積み上がっていくのだ。

筆者としても特に印象的だったのは、ブリッジ（間奏）部分での不意の短調転調からの盛り返し。まるで、キャラクターたちの葛藤や迷いを描き、それを乗り越えて立ち上がる瞬間を音で演出しているようだった。これはアニメソングというより、物語そのものを歌っているような感覚に近い。

こうした音楽設計は、オーケストラ的な多重構成ともリンクしており、タイトルの「オーケストラ」と呼応する形で、音の重なりと響きが物語世界を構築している。つまり、この1曲がすでに『プリンセッション・オーケストラ』という世界の縮図になっているのだ。

歌詞に仕込まれたキャラクターと世界観のリンク

「ゼッタイ歌姫宣言ッ！」の魅力は音楽構成だけではない。上松範康が自ら手がけた歌詞には、物語のエッセンス──いや、核心すらも詰め込まれている。彼がいつも得意とする、“言葉でキャラクターを生き生きと浮かび上がらせる技術”が冴え渡っているのだ。

例えば「音を信じて、刃に変えて」というフレーズ。これは、本作の主人公たちが音楽で戦うプリンセスであるという設定を、直接的に表現したものだ。同時に、歌というものが“ただの娯楽ではなく、命を賭けた戦いの手段”であるという、本作のシリアスな世界観も匂わせてくる。

また、「心のスコアを指揮するのは、わたし自身だ！」という一節は、キャラクターたちの自己決定権と成長を象徴している。歌姫であると同時に戦士である彼女たちは、自分の人生を他人に演奏されるのではなく、自分で“指揮”していく。それが“プリンセッション”＝プリンセス＋セッションという造語の意味を体現しているのだ。

筆者としては、この歌詞に触れたときに鳥肌が立った。なぜなら、アニメを通して感じていたキャラクターの強さや痛みが、この一曲の中で明確に言語化されていたから。音楽がただの装飾でなく、物語のもう一つの語り部として機能している。

そして、この楽曲がオープニングとして視聴者の耳に最初に届くことで、『プリンセッション・オーケストラ』という作品の“覚悟”が最初の3分で伝わる仕掛けになっている。歌詞と旋律、両方から物語を語る──それが上松範康の音楽であり、本作を“ただのアニメ”から“音楽アート”へと昇華させているのだ。

劇中歌・挿入歌におけるElements Gardenの連携力

キャラ性とバトル演出を音楽で支える構造

『プリンセッション・オーケストラ』を真に“音楽アニメ”たらしめているのは、オープニングだけではありません。作品の随所に散りばめられた劇中歌・挿入歌こそが、キャラクターたちの感情や戦いを支える“裏の主役”と言えるでしょう。そのすべてを音楽制作集団Elements Gardenが手がけていることは、もはや奇跡的とも言える布陣です。

このプロジェクトでは、菊田大介、笠井雄太、竹田祐介といった精鋭メンバーが、それぞれのキャラ楽曲を担当。各プリンセスたちのパーソナリティや戦闘スタイルに合わせて、曲調や構成が綿密に作り込まれています。明るくポップなキャラには華やかなアイドル調、クールな戦士タイプには重厚でドラマチックなロックナンバー──その緻密な対応が本当に見事。

筆者が特に心を揺さぶられたのは、戦闘シーンとシンクロする挿入歌の存在です。まるで戦いの高揚と音楽のビートが呼応しているかのように、場面ごとに“最適な旋律”が流れ込み、キャラの覚悟や怒り、決意が音楽によって倍加されていく。音が“武器”であり“感情の翻訳者”であることを、この作品は繰り返し証明してくれるのです。

そして驚くのは、それぞれの挿入歌が“単体でも物語になっている”こと。作中で流れる数分間に、そのキャラクターの人生が凝縮されているかのような深みがあり、まさに「歌うことで心を語る」という本作のテーマを体現しています。これぞElements Gardenの真骨頂。

単なるBGMでは終わらない。キャラクターの内面、世界観の軸、さらには物語のテンションまでをも背負う音楽──これが『プリンセッション・オーケストラ』における劇中歌の位置づけであり、その制作を担うElements Gardenの力量が遺憾なく発揮されているのです。

上松×菊田×笠井のチームワークが生む一体感

この音楽プロジェクトの真髄は、上松範康を中心に構築されたElements Gardenのチームワークにあります。それぞれが独立したクリエイターでありながら、共通する“音楽観”のもとに緻密な連携を図る──その調和が、『プリンセッション・オーケストラ』の楽曲群に確かな一体感をもたらしています。

菊田大介が手がけたED「君とつなぐオーケストラ」は、その代表格。優しく包み込むようなメロディと、余韻を残すコード進行に、菊田の“繊細さ”がにじみ出ている。そこにSpirit Gardenの詩世界が重なり、物語の“余白”を丁寧に照らしてくれています。

一方で、笠井雄太や竹田祐介が提供する劇中曲には、それぞれの“尖った個性”が光ります。たとえば、笠井の楽曲はクラシック調と現代ビートの融合が巧みで、竹田はリズムと電子音の立体構築が非常に映像演出とマッチしている。こうした“音の特性”を最大限に生かしながらも、上松が統括することで全体がズレなくまとまっているのです。

筆者はこのバランスに、思わず唸らされました。通常、複数の作曲家が関わる作品では、楽曲ごとに“方向性のズレ”が生じることもあります。しかし本作では、誰が作っても「これは『プリンセッション・オーケストラ』の音だ」と即座に感じられる。この感覚こそが、“音の統一美”とでも言うべき現象です。

その背後には、上松と彼の信頼する音楽仲間たちが築いてきた長年の連携がある。単なる職業的な分業ではなく、音楽への情熱と相互理解に根ざした“セッション”──この“響き合い”が、物語の奥行きと音楽の深みを生み出しているのです。

『戦姫絶唱シンフォギア』との構造的類似点とは

「歌×戦い×信念」の系譜を引き継ぐ作品性

『プリンセッション・オーケストラ』を語る上で、どうしても避けて通れない作品がある──それが『戦姫絶唱シンフォギア』だ。両作に共通する“音楽で戦う少女たち”という構造、そしてその背後にいる上松範康の存在。これはもはや偶然の一致ではなく、明確な“系譜”と言っていい。

『シンフォギア』は、音楽とバトル、そして信念が融合する前代未聞のアニメだった。そのスタイルは一見突飛に見えるが、上松の中では一貫して「音楽＝感情の解放」であり、「歌うことが戦うこと」という信念が根本にある。そして『プリンセッション・オーケストラ』でもその思想は生きている。

本作においても、少女たちは音楽を通じて自らの信念を貫き、世界の理不尽に立ち向かう。ただのライブアニメでもアイドルものでもなく、“信念の物語”が旋律に宿っている。たとえばOP「ゼッタイ歌姫宣言ッ！」に込められた“歌で自分を貫く”という主張は、そのまま『シンフォギア』的なメッセージの継承でもあるのだ。

筆者自身、両作を視聴していて一番心を揺さぶられたのは、歌が“応援”や“癒し”ではなく、“対話”や“抗争”の手段として描かれている点だ。それはとても現代的で、現実世界における「音楽の使われ方」ともリンクする構造。だからこそ、単なる空想ではなく、リアリティを伴った“響き”として心に残る。

このように『プリンセッション・オーケストラ』は、構造的に『シンフォギア』を下敷きにしつつ、新たな文脈で“音楽バトルアニメ”の可能性を押し広げている。いわば、上松範康が自らの代表作で得た哲学を、次なる形に翻訳した“第二の交響詩”とも言えるのです。

ファン心理に響く“音楽で覚醒する少女たち”の構造

『戦姫絶唱シンフォギア』が一大ムーブメントになった理由のひとつに、「音楽で覚醒する少女たち」という強烈なモチーフがある。そしてそれは、『プリンセッション・オーケストラ』にも引き継がれている。いや、むしろ本作では“よりパーソナルな覚醒”が描かれていると言っていい。

たとえば、あるキャラクターが自分の過去を乗り越える瞬間、その心情の変化が歌詞とメロディに同期し、その歌が“変身トリガー”になる。これはまさに“音楽で覚醒する”という構造そのもの。しかもそれが、演出や照明、美術と一体になって視覚化されることで、見る者の感情を一気に引き上げる。

この構造は、視聴者の“感情移入”にも直結する。歌が始まるとき、そこに必ずドラマがある。そしてそのドラマを知っているからこそ、楽曲が流れるたびに涙腺が刺激される。ファンにとっては、ただの挿入歌ではなく「物語の証言」として機能するわけだ。

筆者としても、この“音楽で覚醒する構造”には毎話感動させられている。しかもその覚醒は個々に異なり、誰一人として同じ旋律ではない──そこにキャラクターの個性、物語の深み、そして“多様性のオーケストラ”としての価値が詰まっている。

つまり『プリンセッション・オーケストラ』は、『戦姫絶唱シンフォギア』のように“音楽で変身する少女たち”というジャンルを継承しつつ、それをより精密に、より多層的に再解釈した現代的進化形。これこそが上松範康の“音楽で物語を紡ぐ力”の真骨頂なのです。

今後の展開予想と音楽的フラグの読み解き

未公開曲・サントラ・ライブ展開の可能性

『プリンセッション・オーケストラ』がここまで音楽的に厚みのある構成を打ち出してきた以上、今後の展開も“音”を軸に広がっていくと見るのが自然です。特に期待されるのは、未発表の劇中曲やサウンドトラック、さらにはライブイベント展開の可能性です。

すでに放送済みの話数でも、印象的なBGMや挿入歌が複数登場しており、その多くはフル音源が未公開。特に戦闘シーンやキャラの覚醒シーンに使用された“あの旋律”、ファンの間でも「早くフルで聴きたい！」という声が上がっています。Elements Gardenが手がけているからこそ、これらの楽曲はサントラ化に向けて丁寧に調整されている可能性が高い。

さらに、OP「ゼッタイ歌姫宣言ッ！」のヒットを受けて、ユニットライブや音楽イベントの開催も現実味を帯びてきました。過去に『戦姫絶唱シンフォギア』で成功を収めた“ライブ形式で物語を再現する”演出スタイルが、本作でも再現されるとすれば、それはファンにとってたまらない体験になるはずです。

筆者としても、ライブ展開への伏線をすでにいくつか感じています。各キャラに明確なソロ曲が存在すること、曲間に感情を語る“語り”が挿入されていること、そして「オーケストラ」というワード自体が“舞台演出”との親和性を強く示していること──これらはすべて、ステージ化への布石ではないでしょうか。

つまり、今後の展開は「物語が進む＝音楽世界が拡張される」という図式で進んでいく。アニメの範疇を超えて、“聴いて触れる体験”へと発展する可能性が高いのです。まさに“音楽で物語を生きる”時代が、ここに始まろうとしています。

上松サウンドが描く“感情のクライマックス”とは

『プリンセッション・オーケストラ』は、まだ物語の中盤。ですが、この時点で既に音楽面から“クライマックスの気配”を感じさせる構造になっています。特に、上松範康が描く楽曲の構成には“爆発前の静寂”とも言うべき伏線が張り巡らされているのです。

たとえば、主要キャラクターたちのソロ曲に、共通した旋律の断片が埋め込まれている点。これは、のちに全員が揃う“合奏（オーケストラ）”への伏線と読み取れます。それぞれが奏でる個の旋律が、物語終盤で一つの壮大なハーモニーに昇華される──そんな“音楽的集結”が待っているのではないでしょうか。

また、挿入歌の一部には未使用のフレーズやブリッジが存在しており、それらがいずれ“再構成”されて登場する可能性も高い。上松作品においては、「同じ旋律が違う形で蘇る」ことがクライマックス演出の常套手段。つまり、音楽が感情と構造のピークを飾る“仕掛け”が、すでに練られているというわけです。

筆者が一番期待しているのは、物語と音楽が“同時に完結する”瞬間。音楽が終わることで物語が終わり、物語が終わることで音楽が響ききる──そんな“音で物語を閉じる構造”。これは『戦姫絶唱シンフォギア』最終話でも見られた演出であり、上松が仕掛ける最大の“感情爆発装置”とも言えます。

『プリンセッション・オーケストラ』もまた、そのクライマックスで音楽の全容が明かされる。旋律の謎が解け、感情が重なり、世界が再構成される。その瞬間こそ、上松サウンドが本当の意味で“完成”するのだと、筆者は確信しています。

プリンセッションオーケストラ 上松関与まとめ

“製作総指揮”としての上松範康の全体統括力

『プリンセッション・オーケストラ』は、単なる音楽バトルアニメではありません。それは“音楽で世界を変える”という大命題を背負った物語。そして、その設計図を描いたのが、製作総指揮・上松範康です。彼が関与しているのは、作詞作曲だけではなく、作品そのものの骨格。

原作企画の段階から上松が携わっていることは、このアニメがただのタイアップ作品ではなく、「音楽と物語を融合させる」という彼の信念の延長線上にあることを物語っています。オープニング主題歌「ゼッタイ歌姫宣言ッ！」、ED「君とつなぐオーケストラ」、そして数々の劇中歌──そのすべてに、上松が主宰するElements Gardenのメンバーが関わり、彼自身が構成を統括しています。

そして何より注目すべきは、上松がかつて手がけた『戦姫絶唱シンフォギア』との構造的な共通点です。音楽で戦い、音楽で覚醒し、音楽で物語を閉じるという一貫した構造は、まさに彼の“音楽演出哲学”の粋。そこに“プリンセス”という新たなテーマ性を加えることで、全く異なる文脈に落とし込んだのが本作の妙です。

筆者としても感じたのは、この作品には“全体を鳴らす指揮者”が必要だったということ。キャラクターがそれぞれ違うメロディを持ちながら、一つのハーモニーに昇華されていく──それは、物語というより交響曲。上松範康はまさにその総指揮者として、物語と音を融合させているのです。

音楽、演出、感情、それぞれがひとつの旋律として共鳴し合うこの作品の在り方は、“上松アニメ”と呼ぶにふさわしい完成度。そのすべてが上松範康の関与によって可能になった、極めて戦略的で情熱的な構築です。

音楽×物語の“未来形”を示したプロジェクトの意義

『プリンセッション・オーケストラ』というタイトルが象徴しているのは、“歌う王女たち”の物語であると同時に、“音で織りなす構造美”の結晶です。このプロジェクトは、アニメという枠を超えて、音楽そのものが物語を牽引する新たなジャンルを提示してくれました。

上松範康の音楽には、常に「物語を描く力」があります。音は感情を映すだけではなく、時に運命を変え、人の在り方を定義する。そして本作では、それがさらに進化し、“音楽そのものがキャラクターの行動原理”になっている。この仕掛けは、音楽アニメというジャンルにおいても画期的です。

同時に、この作品はライブ展開やサウンドトラック展開、メディアミックス展開など、今後の多層的な展開も見据えた“音楽プラットフォーム”としての可能性を秘めています。まさに、音楽で世界を構築するというテーマの最前線を走る作品。

筆者としても強く感じたのは、『プリンセッション・オーケストラ』が提示した“音楽×物語”の融合は、未来のアニメ作品にとってひとつの道標になるだろうということです。ここには、商業主義とは別次元の、表現者としての熱意と挑戦がある。

上松範康が見据えているのは、“感情で奏でる未来”──その構想を形にしたのがこの作品であり、私たちはその音の波紋の中に、これからも浸っていくことになるのでしょう。