『アポカリプスホテル』キャラデザの魔法──絵柄・色・ディテールに宿る世界観を徹底解剖！

最初にこのビジュアルを見たとき、思わず息を呑んだ人も多いのではないでしょうか。

『アポカリプスホテル』のキャラクターデザインは、単なる可愛さや格好良さを超え、まるで“異世界から届いた手紙”のような繊細さと温度を持っています。

この記事では、原案・竹本泉の独自性、横山なつきによるデザイン解釈、色彩の設計思想まで、細部に宿るこだわりを掘り下げていきます。

きっと読み終わった頃には、あなたの中に〈もう一度あのキャラたちに会いたい〉という衝動が芽生えているはずです。

竹本泉が生み出した、やわらかい命──キャラクター原案の魔力

愛らしさと儚さが同居する独特の絵柄

『アポカリプスホテル』のキャラクター原案を手がけるのは、漫画家・竹本泉さん。彼女の描くキャラクターは、丸みを帯びたフォルムと淡い色彩が特徴で、柔らかく温かみのある世界観を作り出しています。

竹本泉さんの作風は、少女漫画的な柔らかさとポストアポカリプスの世界観が融合し、荒廃した世界の中に“違和感のない優しさ”を感じさせます。まるい目や細い線、あどけなさが、滅びの中の希望や感情移入のしやすさを生み出しています。

このようなキャラクターたちは、視覚的なヒーリング効果を持ち、視聴者に安心感を与えます。竹本泉さんの絵柄が、作品全体の雰囲気を柔らかく包み込み、物語に深みを加えています。

動くアニメーションとしての新たな魅力

竹本泉さんのキャラクターがアニメーションとして動くことで、彼女の絵柄に新たな魅力が加わりました。キャラクターデザインを担当した横山なつきさんは、竹本泉さんの独特なタッチを尊重しつつ、アニメーションとして動かしやすいデザインに落とし込むことで、原作の魅力を損なうことなく映像化しています。

特に、主人公のホテリエロボット・ヤチヨの動きには注目が集まっています。オープニングでは、ヤチヨがホテルのロビーでダンスをするシーンがあり、その動きは「竹本泉さんの絵が動いたらこうだよね」と感じさせるものです。髪の揺れや裾の広がり、ステップの一歩一歩までが丁寧に描かれ、視聴者を魅了します。

このように、竹本泉さんのキャラクターがアニメーションとして動くことで、彼女の絵柄に新たな命が吹き込まれ、視聴者に新鮮な感動を与えています。

横山なつきの解釈──“動く線”への昇華

原案の持つ温度を損なわない設計思想

『アポカリプスホテル』のキャラクターデザインを担当したのは横山なつきさん。竹本泉さんの原案は、言わば“止まった世界の宝物”です。それをアニメーションという“動く世界”に持ち込むとき、単に線をなぞるだけでは魔法は消えてしまいます。

横山さんは、竹本さんの線が持つ独特の温度──細いけれど命を感じさせるあの線──を、アニメ用の線画に置き換えるとき、そこに「動き」を先回りして織り込みました。柔らかい頬のふくらみ、瞳のかすかな潤み、髪先のカーブ──それらはすべて、動く前提で練り込まれた“計算された生命”です。

個人的にグッときたのは、ヤチヨの手。小さな指先に宿るぎこちなさが、アンドロイドらしさをにじませつつも、決して冷たさではないんです。横山さんの設計思想には、竹本泉の“生”を壊さない、でも映像として成立させるという覚悟が透けて見えます。

キャラクターの動きを支えるディテールの工夫

アニメのキャラクターデザインは、動きの中でどれだけ情報を伝えられるかが勝負です。横山なつきさんは、衣装や髪型の細部に動きのヒントを埋め込むことで、表情だけに頼らずキャラの個性を描き出しています。

たとえばタヌキ星人のポン子。ふわふわの尻尾と耳は、感情を視覚的に伝える“動くパーツ”として設計されていて、これがまた可愛い。尻尾がピンと立つとき、耳が後ろに寝るとき、感情のグラデーションが一瞬で伝わります。視聴者はセリフを待たずに、「あ、怒ってる」「あ、困ってる」と読み取れるんですね。

ディテールの工夫は、視聴者に余白を与えることでもあります。声や表情の間に、動きの“余白”を感じ取ることで、キャラはただの二次元の絵ではなく、生きた存在になる。横山さんの仕事は、まさにその境界を壊す魔術なんです。

色彩設計と背景美術が織りなす、ポストアポカリプスの彩り

砂子美幸の色選び──柔らかさと冷たさのバランス

『アポカリプスホテル』の色彩設計を手がけるのは砂子美幸さん。彼女の仕事を一言で表すなら、“空気を塗る人”。

竹本泉さんの原案が持つ、淡いパステル調の色合い──それは可愛さを強調するだけの装飾ではなく、世界観そのものを支える基盤です。荒廃した世界、滅びの気配漂うホテル、その中に宿る柔らかさ。この相反する要素を同居させるために、砂子さんは色の冷たさと温かさを絶妙に配置しています。

例えば、壁のひび割れや床の汚れは冷たい灰色や茶色で描き、そこにキャラクターが立つと、衣装のやわらかな色彩──ミントグリーン、薄桃色、乳白色──がほのかに浮き立つ。その対比が、彼女たちの存在の“かけがえなさ”を際立たせるんです。

筆者としては、ホテルの夜景シーンが特に刺さりました。窓の外に広がる壊れた街並みと、ロビーの優しい明かり。その境界に立つヤチヨの後ろ姿が、光と影のはざまで揺れていて──それはもう、色彩設計が作り出す物語そのものでした。

本田こうへいの背景美術──舞台装置としての美術の役割

背景美術を担当するのは本田こうへいさん。背景とは、単なる“飾り”ではありません。キャラクターの心情を受け止め、引き立て、時には物語の裏側を語る〈もう一人の登場人物〉なんです。

『アポカリプスホテル』の背景には、廃墟感や荒廃感が確かに漂っています。でもそれは決して冷たい死の風景ではなく、どこか人間の手の痕跡が残る、ぬくもりのある滅び。割れた窓ガラス、朽ちかけたソファ、朽ち果てた花瓶──本田さんはその一つひとつに、過去の物語を忍ばせています。

個人的に心を打たれたのは、ロビーの時計台。針は止まっているのに、そこに佇むキャラクターたちの息遣いが聞こえてくる。背景が語る物語が、キャラクターの現在と地続きになっているんです。本田こうへいさんの美術は、静けさの中に物語の音を響かせる、そんな舞台装置として機能しています。

コミカライズ『ぷすぷす』が描く、もうひとつの顔

竹本泉本人が描くスピンオフの世界

『アポカリプスホテルぷすぷす』──このタイトルを聞くだけで、ふっと頬がゆるむ人もいるのではないでしょうか。そう、これはアニメ本編とは別軸で展開される、竹本泉さん自身によるスピンオフコミカライズです。

無料WEBコミックサイト「ストーリアダッシュ」で連載中のこの作品は、アニメでは見られない日常や小さな裏話を、竹本泉らしいゆるさと優しさで描いています。そこに流れる空気は、いわば“肩の力を抜いたアポカリプス”。

個人的に、こういうスピンオフには本編では触れられない〈キャラクターの呼吸〉が詰まっていると感じています。本編では使命や危機に向き合うキャラクターたちが、コミカライズでは何気ないやりとりや小さな事件を通じて、その素の表情を見せてくれるんです。

そして何より、原案者である竹本泉さん自身が手がけることで、絵柄やセリフ回しの奥に“生みの親の視線”が宿っている。これが、ファンにとってはたまらないんですよね。

ファン必見！アニメでは語られない裏話たち

『ぷすぷす』の魅力は、アニメで語られなかった細部を埋める〈ファンブック的役割〉を果たしているところです。アニメだけでは拾いきれないキャラクターの関係性、小道具の意味、場所の由来──そうした裏話が、竹本泉の筆で軽やかに、でも確かに語られていきます。

たとえばポン子が好きな食べ物や、ヤチヨがメンテナンス中にぼんやり考えていること。そんな小さなエピソードは、ファンの“推し愛”をより深く、確かなものにしてくれるんです。

筆者自身、『ぷすぷす』を読むたびに、ああ、この世界はアニメの枠を超えて、ちゃんと息づいているんだなと実感させられます。物語の外側に広がるもうひとつの物語。それが、スピンオフの本当の価値なのだと強く感じます。

『アポカリプスホテル』キャラデザの魅力まとめ

ここまで『アポカリプスホテル』のキャラクターデザインを紐解いてきましたが、あらためて感じるのは、この作品が“奇跡のバランス”の上に立っているということです。

まず、原案の竹本泉さん。彼女が描くキャラクターたちは、ただ可愛いだけじゃない、どこかしら哀しみや儚さを帯びた存在です。それは、ポストアポカリプスという終わりの世界に、わずかに差し込む光のようなもの。

そして横山なつきさんがその絵を“動き”として設計し、砂子美幸さんの色彩が物語の体温を整える。背景美術の本田こうへいさんは、キャラクターたちを受け止めるための“もうひとつの物語”を作り出しています。こうした個々のプロフェッショナルが手を取り合うことで、初めてこの世界は立ち上がるんですね。

さらに、スピンオフ『ぷすぷす』が描く裏の顔。アニメを観るだけでは味わえない、キャラクターたちの素顔や関係性、そんな“小さな物語”が、私たちの心の中にもうひとつの居場所を作ってくれます。

『アポカリプスホテル』のキャラクターデザインは、単なるビジュアルではありません。それは、滅びの中に差し込む希望であり、視聴者の心に触れる温度であり、そして何より、この世界に生きる彼らの“生きた証”なんです。