『薬屋のひとりごと』の読み方は?作品名や登場人物の難読漢字を紹介

中華風の後宮を背景に薬草と薬研、古い書物が並ぶ机。難しい漢字が記された巻物と柔らかな光が作品の神秘的な雰囲気を表現する 未分類

『薬屋のひとりごと』の読み方は「くすりやのひとりごと」です。主人公の猫猫は「マオマオ」、壬氏は「ジンシ」と読みます。

この作品には、中国風の世界観を反映した難読漢字の名前が数多く登場します。読み方を知ると、人物同士の関係や名前に込められた意味まで、少し違って見えてくるのです。

  1. 『薬屋のひとりごと』の読み方は?作品名の意味と由来
    1. 原作者・日向夏の読み方は?
    2. 『薬屋のひとりごと』はどんな物語?
  2. 『薬屋のひとりごと』登場人物の名前はどう読む?主要キャラ一覧
    1. 猫猫(マオマオ)はなぜ同じ漢字を繰り返す?
    2. 壬氏(ジンシ)の読み方と名前の難しさ
    3. 玉葉妃・阿多妃・楼蘭妃など妃の名前
    4. 翠苓(スイレイ)と子翠(シスイ)の違い
  3. 趙迂(チョウウ)の読み方は?響迂(キョウウ)から改名した理由
    1. 趙迂の初登場は第41話「狐の里」
    2. 趙迂の母親と子の一族の関係
    3. 第45話で趙迂が生き残った理由
    4. 第48話で響迂から趙迂に改名した理由
  4. 『薬屋のひとりごと』で読み間違えやすい漢字や用語は?
    1. 後宮・宦官・四夫人の読み方
    2. 緑青館・翡翠宮・茘の読み方
    3. アニメのサブタイトルにも難読漢字が登場する
  5. 考察|『薬屋のひとりごと』で名前が持つ本当の意味とは?
    1. 趙迂の改名は本当に救いだったのか
    2. 名前の音だけが残ったことの切なさ
    3. 猫猫はなぜ過去の名前に似た音を残したのか
    4. 難読漢字を知ることは、登場人物の人生を知ること
    5. まとめ|『薬屋のひとりごと』の読み方を知ると物語の印象が変わる
  6. よくある質問
    1. 『薬屋のひとりごと』は「やくやのひとりごと」と読むの?
    2. 『薬屋のひとりごと』の猫猫と壬氏の読み方は?
    3. 趙迂と響迂は別人なの?

『薬屋のひとりごと』の読み方は?作品名の意味と由来

『薬屋のひとりごと』は、ひらがなで「くすりやのひとりごと」と読みます。

「薬屋」は「くすりや」、「ひとりごと」は文字どおり、自分自身に向けて語る言葉を意味します。

読み方そのものは難しくありません。しかし、タイトルに使われている「ひとりごと」という言葉には、物語の主人公を理解するうえで興味深い響きがあります。

主人公の猫猫は、毒や薬に関して並外れた知識を持ちながら、自分の感情を積極的に口にする人物ではありません。

周囲の人間を冷静に観察し、誰も気づかない違和感を拾い上げる一方で、自分自身の本音については驚くほど慎重です。

そんな猫猫の内面を想像すると、「ひとりごと」というタイトルが、単なる独白以上の意味を帯びてくるように感じます。

誰かに伝えるためではなく、自分の中で考えを整理するための言葉。

それは、猫猫という少女の思考そのものに近いのではないでしょうか。

原作者・日向夏の読み方は?

『薬屋のひとりごと』の原作者は、日向夏(ひゅうがなつ)さんです。

作品は2011年に小説投稿サイトで連載を開始し、2012年には第1作が書籍として刊行されました。

その後、2017年からは『ビッグガンガン』で、ねこクラゲさんが作画を担当する漫画版の連載が始まっています。

キャラクター原案は、しのとうこさんです。

原作小説だけでなく、スクウェア・エニックスと小学館からそれぞれ漫画版が展開されていることも、この作品の特徴です。

テレビアニメ第1期は2023年10月から2024年3月、第2期は2025年1月から7月に放送されました。

さらに2026年10月2日には、第3期が日本テレビ系の「FRIDAY ANIME NIGHT」枠でスタートしています。

第3期は分割2クール構成で、第2クールは2027年4月に放送予定です。

2026年12月11日には、日向夏さんが新たに手がけた物語による映画『劇場版 薬屋のひとりごと 亡妃の秘宝』も公開予定となっています。

長く展開されてきた作品だからこそ、登場人物も増え、読み方を確認したくなる名前が多くなっているのでしょう。

『薬屋のひとりごと』はどんな物語?

舞台は、中世中国を思わせる架空の大帝国・茘(リー)です。

主人公の猫猫は、花街で薬師として暮らしていましたが、ある日連れ去られ、後宮で働くことになります。

そこで皇帝の子どもたちをめぐる不可解な出来事に気づき、持ち前の薬学知識によって謎を解き明かしていきます。

やがてその能力を見込まれ、玉葉妃の毒見役を務めることになりました。

猫猫を取り立てたのが、美しい容姿で知られる壬氏です。

毒見役という立場から始まった物語は、宮廷の政治、家族の秘密、複雑な人間関係へと広がっていきます。

ただ、個人的に惹かれるのは、事件の規模が大きくなっても猫猫の視線があまり変わらないところです。

周囲が権力や身分を気にしていても、彼女はまず目の前にある事実を確かめようとする。

その姿勢を知ってからタイトルを読み直すと、「薬屋」という素朴な言葉が、作品全体を支える大切な軸に思えてきます。


『薬屋のひとりごと』登場人物の名前はどう読む?主要キャラ一覧

『薬屋のひとりごと』では、漢字の一般的な音読み・訓読みだけでは判断しにくい名前が登場します。

まずは、物語を理解するうえで押さえておきたい主要人物の読み方を整理します。

登場人物 読み方 主な立場
猫猫 マオマオ 主人公の薬師
壬氏 ジンシ 後宮を管理する人物
玉葉妃 ギョクヨウヒ 皇帝の妃
高順 ガオシュン 壬氏の補佐役
羅漢 ラカン 軍部の高官
小蘭 シャオラン 猫猫と親しい下女
梨花妃 リファヒ 皇帝の妃
阿多妃 アードゥオヒ かつての淑妃
楼蘭妃 ロウランヒ 子昌の娘である妃
翠苓 スイレイ 薬に詳しい官女
子翠 シスイ 猫猫と関わる少女
子昌 シショウ 子の一族の当主
神美 シェンメイ 子昌の正妻
趙迂 チョウウ 子の一族に関わる少年
響迂 キョウウ 趙迂が以前名乗っていた名前

とくに迷いやすいのは、「猫猫」「壬氏」「高順」「趙迂」などでしょう。

漢字を日本語として自然に読もうとすると、作品内で使われる発音とは異なる読み方になりやすいためです。

※画像はAIによるイメージ

猫猫(マオマオ)はなぜ同じ漢字を繰り返す?

猫猫の読み方は「マオマオ」です。

漢字を見て「ねこねこ」と読んでしまいそうになりますが、作中では中国語風の響きが採用されています。

主人公を演じる声優は悠木碧(ゆうきあおい)さんです。

猫猫は、薬や毒に並外れた関心を持ち、危険なものにさえ知的好奇心を向ける少女として描かれています。

一方で、人間関係には距離を置き、相手によって態度を大きく変えないところも印象的です。

僕が面白いと思うのは、「猫猫」という名前の柔らかさと、本人の性格との対比です。

名前には可愛らしい響きがあるのに、本人の思考は驚くほど現実的で、ときには容赦がありません。

しかし、その冷静さの奥には、他人を完全には見捨てられない優しさも隠れています。

猫という字を繰り返す名前と、他人になかなか心を開かない人物像。

それらが重なると、猫猫という名前は単なる可愛らしい呼び名以上のものに感じられます。

壬氏(ジンシ)の読み方と名前の難しさ

壬氏は「ジンシ」と読みます。

「壬」という漢字は日常生活ではあまり使われないため、作品を初めて知った人が迷いやすい名前の一つです。

壬氏は、後宮を管理する美貌の人物として登場し、猫猫の能力に注目します。

テレビアニメで声を担当するのは大塚剛央(おおつかたけお)さんです。

猫猫と壬氏の関係は、単純な主従関係では説明しきれません。

壬氏が猫猫を気にかける一方で、猫猫はその美貌や立場に必要以上の関心を示さないのです。

周囲の人間が壬氏の存在に特別な意味を見いだしているからこそ、猫猫の反応は彼にとって新鮮なのでしょう。

そして、この二人の距離は物語が進むにつれて、少しずつ変化していきます。

僕は、壬氏という名前を知ること以上に、その名前で呼ばれる人物が何を隠し、何を望んでいるのかが重要だと感じています。

彼を取り巻く立場と、本来の感情。

その二つが必ずしも一致しないところに、壬氏という人物の切なさがあります。

玉葉妃・阿多妃・楼蘭妃など妃の名前

玉葉妃は「ギョクヨウヒ」と読みます。

猫猫が毒見役として仕える妃であり、物語の序盤から重要な存在です。

阿多妃は「アードゥオヒ」、楼蘭妃は「ロウランヒ」と読みます。

阿多妃はかつて淑妃の地位にあった人物で、楼蘭妃はその後に淑妃となった人物です。

ここで覚えておきたいのは、名前の最後につく「妃」が、単なる呼び名ではなく宮廷での立場を表していることです。

登場人物の本来の名前と、役職や身分を含む呼称を分けて理解すると、物語の人間関係を整理しやすくなります。

また、同じ「妃」という文字がついていても、人物の性格や置かれた事情はまったく違います。

その違いが、後宮という閉ざされた場所に複雑な緊張感を生み出しているのでしょう。

翠苓(スイレイ)と子翠(シスイ)の違い

翠苓は「スイレイ」、子翠は「シスイ」です。

どちらにも「翠」という漢字が使われているため、混同しやすい名前です。

翠苓は薬草に詳しい官女として登場し、猫猫との間にも薬の知識をめぐる接点があります。

一方、子翠は猫猫と関わる少女として物語に登場します。

子翠については、物語が進むと楼蘭妃との重要なつながりが明らかになります。

読み方だけでなく、人物がどの名前で登場しているのかを意識すると、物語に仕掛けられた秘密を整理しやすくなるでしょう。

ここから先は、名前そのものが人物の運命に深く関わる例を紹介します。

アニメ第2期の終盤に関する内容を含むため、未視聴の方はご注意ください。


趙迂(チョウウ)の読み方は?響迂(キョウウ)から改名した理由

趙迂は「チョウウ」と読みます。

アニメ第2期から登場する少年で、もともとの名前は響迂(キョウウ)でした。

この二つの読み方は、単に別名として覚えるだけでは少しもったいない。

なぜなら、響迂から趙迂への改名には、少年が背負った過去と、これから生きていく未来の両方が関係しているからです。

趙迂の初登場は第41話「狐の里」

趙迂が初めてテレビアニメに登場するのは、第41話「狐の里」です。

この時点では響迂という名前で、子の一族に関係する隠れ里で暮らしていました。

猫猫にぶつかった際には、相手に強気な態度を見せるなど、やんちゃで生意気な少年として描かれています。

その一方で、子翠や翠苓を姉のように慕う無邪気な姿も見せていました。

趙迂の声を演じているのは、藤原夏海(ふじわらなつみ)さんです。

2026年8月15日に発表されたアニメ第3期のキャスト情報でも、藤原さんが引き続き趙迂を担当することが明らかになりました。

明るく元気な性格は、最初の印象だけなら微笑ましいものです。

しかし、その無邪気さの背景を知ると、同じ言動が少し違って感じられるようになります。

趙迂の母親と子の一族の関係

趙迂の母親は、子の一族の当主・子昌(シショウ)の正妻である神美(シェンメイ)に仕えていた人物です。

神美の身近にいる立場だったとされ、趙迂自身にも乳母や侍女などがつけられていました。

ただし、母親が子の一族の本家の血筋だったわけではなく、反乱を主導した人物として描かれているわけでもありません。

第44話では、神美の部屋から出てきた猫猫に対して、趙迂が母親の様子を尋ねています。

この場面で重要なのは、少年が母親のことを自分の目で確かめられていないという点です。

母親は元気なのか。今、どこで何をしているのか。

子どもにとって自然な疑問ですが、彼の置かれた状況では、その答えさえ簡単には得られません。

この小さな問いかけを知ると、趙迂の強気な態度の奥にも、不安や寂しさがあったのではないかと考えてしまいます。

その後、子の一族は反乱によって粛清される運命を迎えました。

趙迂の母親も粛清を免れなかったと考えられていますが、その最期の詳細まで明確に描かれているわけではありません。

ここは、作品で確認できる事実と、状況から考えられることを区別しておきたい部分です。

第45話で趙迂が生き残った理由

第45話では、子翠が罪のない子どもたちを守るため、蘇りの薬を使う展開が描かれます。

子どもたちを一時的に仮死状態にすることで、粛清の対象から逃がそうとするのです。

趙迂もその薬を飲みました。

しかも、渡された飲み物が危険なものだと察しながら、ためらうことなく飲み干しています。

この行動を、僕は単に少年の度胸を示す場面として片づけたくありません。

自分の身に何が起きるかわからない状況で、それでも差し出されたものを受け入れる。

そこには、子翠たちへの信頼と、自分ではどうすることもできない運命への諦めが入り混じっていたのではないでしょうか。

もちろん、趙迂自身がその瞬間に何を考えていたのか、すべてが言葉で説明されているわけではありません。

けれど、普段の生意気な姿との落差が大きいからこそ、この行動は印象に残ります。

生き残った子どもたちは、翠苓とともに阿多妃の離宮で秘密裏に保護されました。

しかし、趙迂だけは別の道を歩むことになります。

第48話で響迂から趙迂に改名した理由

第48話では、猫猫が響迂の名前を趙迂へと改めさせることになります。

その理由は、少年が子の一族と関わりのない、市井の子どもとして新たな人生を歩めるようにするためでした。

趙迂は蘇りの薬の後遺症によって過去の記憶を失い、左半身にもわずかな麻痺が残っています。

ほかの子どもたちと分けて育てる判断には、記憶を失った彼の事情が関係していました。

猫猫は、少年がかつての名前の音を覚えていたことから、響きの近い「趙迂」という名前を選んでいます。

ここが、本当に切ない。

過去の記憶は失われても、自分を呼んでいた名前の響きだけは残っていた。

その事実を踏まえると、改名は単純に過去を消し去るための行為ではなかったように思えます。

むしろ、かつての自分を完全には断ち切らず、それでも新しい人生へ進めるようにするための選択だったのではないでしょうか。

※画像はAIによるイメージ

『薬屋のひとりごと』で読み間違えやすい漢字や用語は?

『薬屋のひとりごと』には、人名以外にも難しい漢字が登場します。

物語の舞台となる後宮や、登場人物の身分を表す言葉を知ることで、セリフの意味がより理解しやすくなります。

後宮・宦官・四夫人の読み方

「後宮」は「こうきゅう」と読みます。

皇帝の妃たちが暮らす場所であり、猫猫が働くことになる物語の主要な舞台です。

「宦官」は「かんがん」と読みます。

作品では、壬氏が後宮を管理する宦官として登場します。

また、皇帝の上級妃を表す「四夫人」は「よんふじん」です。

四夫人には、貴妃・淑妃・徳妃・賢妃という呼称があります。

それぞれ「きひ」「しゅくひ」「とくひ」「けんひ」と読みます。

こうした役職や身分を表す漢字は、名前と一緒に登場することが多いため、区別して覚えると便利です。

緑青館・翡翠宮・茘の読み方

猫猫が育った花街にある緑青館は、「ろくしょうかん」と読みます。

緑青という漢字は、日本語では「ろくしょう」と読み、銅などの表面に生じる緑色のさびを指す言葉としても知られています。

この言葉が建物の名前に使われていることで、どこか古風で独特な雰囲気が生まれています。

玉葉妃が暮らす翡翠宮は、「ひすいきゅう」です。

翡翠は宝石の名前でもあり、宮殿の呼称として使われることで、美しい色彩や華やかな宮廷文化を連想させます。

そして、作品の舞台となる帝国・茘は「リー」と読みます。

この漢字も一般的な日本語の文章では目にする機会が少なく、読み方を知っておきたいものの一つでしょう。

アニメのサブタイトルにも難読漢字が登場する

テレビアニメの各話タイトルにも、普段あまり使わない漢字が登場します。

例えば第23話「鳳仙花と片喰」の「片喰」は「かたばみ」と読みます。

片喰は植物の名前であり、漢字だけを見ると読み方を想像しにくい言葉です。

また、第49話のタイトル「蝗」は「いなご」と読みます。

「蝗」という漢字は、昆虫を表す漢字として使われるもので、作品の物語にも関わる重要な言葉です。

ほかにも「麦稈」「膾」「曼荼羅華」など、難しい漢字を使ったサブタイトルがあります。

こうした言葉を見ていると、『薬屋のひとりごと』では、人物の名前だけでなく、植物や薬、自然現象に関する漢字も世界観の一部になっていることがわかります。

猫猫は、周囲の人々が見過ごしてしまう物事に意味を見いだす人物です。

だからこそ、サブタイトルに登場する一つの漢字にも、事件を理解するための手がかりが隠れているように感じられます。


考察|『薬屋のひとりごと』で名前が持つ本当の意味とは?

ここからは僕自身の考察です。

『薬屋のひとりごと』に登場する難読漢字は、単に中華風の雰囲気を演出するためだけのものではないと思っています。

とくに重要なのは、名前が人物の身分や過去、そして他人との関係を表す役割を持っていることです。

同じ人物でも、呼ばれ方が変わることで周囲からの扱いが変わる。

名前は個人を識別するものですが、この作品では、その人物が社会の中でどこに属しているかを示すものでもあるのでしょう。

趙迂の改名は本当に救いだったのか

響迂が趙迂という名前を得たことは、一見すると美しい再出発に見えます。

粛清されるはずだった少年が命をつなぎ、猫猫のそばで新たな暮らしを始める。

確かに、それは希望のある展開です。

しかし僕は、この出来事を単純な救済として受け取ることができません。

なぜなら、趙迂は新しい人生を得る代わりに、それまでの記憶を失っているからです。

かつて自分が誰と暮らしていたのか。母親はどんな人だったのか。

その記憶を取り戻せないまま、少年は別の名前で生きていくことになります。

ここで思い出したいのが、第44話で母親の様子を尋ねていた場面です。

あの時の趙迂には、会いたいと思う相手がいた。

母親が元気なのか確かめたいという、切実でありながら、ごく普通の子どもの願いがありました。

そして、第45話では危険を察した飲み物を飲み干しています。

この二つの行動を並べてみると、彼の中にあった感情の重さが浮かび上がるように思います。

母親のことを気にかける少年が、自分の命に関わる選択を引き受ける。

その先で命は助かったとしても、母親を思う記憶まで失ってしまうとしたら、それをどこまで救いと呼べるのでしょうか。

もちろん、記憶を失ったことを本人がどのように感じているのかは、慎重に考える必要があります。

記憶がないからこそ、過去の重荷から離れられる部分もあるかもしれません。

それでも、彼が失ったものが存在しなかったことにはならない。

僕には、そこがどうしても引っかかるのです。

名前の音だけが残ったことの切なさ

第48話の改名で、もう一つ見逃せないのが、趙迂が以前の名前の響きを覚えていたという点です。

記憶の大部分を失っても、自分を呼ぶ音は残っていた。

この小さな事実には、不思議な温かさと残酷さが同居しているように感じます。

名前とは、本人が自分を認識するためだけのものではありません。

誰かがその人に呼びかけるときにも使われます。

親が子どもを呼ぶとき。親しい相手が名前を口にするとき。

そこには、名前という文字だけでは表現しきれない関係が存在しているはずです。

趙迂が音を覚えていたということは、その音で呼ばれていた時間が、彼の中にわずかに残っていたとも考えられます。

これは作品内で明言された心理ではなく、あくまで僕の解釈です。

けれど、そう考えると猫猫が選んだ改名の意味も変わってきます。

猫猫は彼の過去を消し去るのではなく、失われずに残ったものを手がかりにして、新しい名前を与えたのではないでしょうか。

「響迂」と「趙迂」。

文字も読み方も違います。

それでも二つの名前の間には、切り離せないつながりがあります。

過去に戻ることはできない。

けれど、過去の自分をすべて捨てなければ未来へ進めないわけでもない。

そんな静かな願いが、二つの名前の間に込められているように思えてなりません。

※画像はAIによるイメージ

猫猫はなぜ過去の名前に似た音を残したのか

猫猫が趙迂の名前を変えるにあたり、過去の名前に近い響きを選んだことには、彼女らしさが表れていると感じます。

猫猫は、他人への感情を大げさに表現するタイプではありません。

しかし、だからといって他人の痛みに無関心というわけでもないのです。

趙迂を新しい環境で暮らせるようにしながら、少年の中に残っていた名前の響きも尊重する。

これは僕には、理性的な判断の中に隠れた、猫猫なりの優しさに見えます。

ただ優しい言葉をかけるだけでは、少年の置かれた状況は変わりません。

一方で、過去を完全に切り捨てることが、本人にとって最良とも限らない。

その二つの間で、猫猫は現実的な選択をしたのでしょう。

名前を変えることは、少年を守るために必要だった。

けれど、彼がかつて響迂として生きていたことまで、無意味にはしたくなかったのではないか。

そう考えると、猫猫が少年の名前を選んだ行為には、単純な保護者としての判断を超える意味があるように思えます。

そして、趙迂という少年が新しい生活の中で何を感じ、どのように成長していくのか。

そこに、改名という選択の本当の意味が少しずつ現れてくるのかもしれません。

難読漢字を知ることは、登場人物の人生を知ること

そもそも、『薬屋のひとりごと』では、一人の人物を理解するために複数の名前や呼称を覚える必要がある場合があります。

それは少し複雑ですが、同時に物語の面白さでもあります。

名前が異なれば、その人物が置かれている立場も、周囲からの見られ方も違うことがあります。

子翠と楼蘭妃の関係は、そのわかりやすい例でしょう。

同じ人物であっても、どの立場から見ているかによって、まったく別の存在として受け止められることがあるのです。

僕がこの作品に惹かれる理由の一つは、そうした複数の顔を持つ人物たちを、単純な善悪に押し込めないところにあります。

ある立場では誰かを傷つけた人物が、別の立場では誰かを守ろうとしている。

その矛盾が、後宮という世界の中で複雑に絡み合っています。

だから、名前の読み方を覚えることは、単なる漢字の勉強では終わりません。

その名前がいつ使われ、誰から呼ばれ、なぜ変わったのか。

そこまで目を向けると、登場人物たちが言葉にできなかった感情まで、少しだけ見える気がします。

趙迂の物語についても、明るい少年が新しい生活を始めたという事実だけでは語り尽くせません。

失った記憶の向こうには、確かに彼が生きていた時間があります。

どうか、新しい名前で呼ばれる日々が、彼にとって穏やかなものであってほしい。

そんなことを、僕は思わず願ってしまいます。

まとめ|『薬屋のひとりごと』の読み方を知ると物語の印象が変わる

『薬屋のひとりごと』の正しい読み方は「くすりやのひとりごと」です。

主人公は猫猫(マオマオ)、壬氏はジンシ、玉葉妃はギョクヨウヒ、趙迂はチョウウと読みます。

また、翠苓(スイレイ)と子翠(シスイ)のように、似た漢字を含みながら異なる読み方をする人物もいます。

こうした名前の読み方を整理すると、登場人物同士の関係や物語の流れを追いやすくなります。

そして、趙迂が響迂から名前を変えた経緯を知ると、名前が単なる文字の並びではないことにも気づかされます。

名前はその人物の過去を表すと同時に、未来へ向かうための新しい居場所を示すこともある。

『薬屋のひとりごと』に登場する難しい漢字の向こうには、そんな繊細な人間ドラマが隠れているのではないでしょうか。


よくある質問

『薬屋のひとりごと』は「やくやのひとりごと」と読むの?

いいえ、正しい読み方は「くすりやのひとりごと」です。

「薬屋」は一般的な日本語では「くすりや」と読み、薬を扱う店や仕事を指します。

作品の主人公である猫猫が、もともと花街で薬師として働いていたこととも関係するタイトルです。

『薬屋のひとりごと』の猫猫と壬氏の読み方は?

猫猫は「マオマオ」、壬氏は「ジンシ」です。

猫猫は薬に詳しい主人公で、壬氏は彼女の能力を見いだした人物です。

中国風の発音が使われているため、漢字の見た目だけで判断せず、名前ごとに覚えるとよいでしょう。

趙迂と響迂は別人なの?

いいえ、趙迂(チョウウ)と響迂(キョウウ)は同じ人物です。

もともと響迂という名前でしたが、子の一族の反乱を経て、猫猫によって趙迂と名づけられました。

記憶を失った少年がかつての名前の響きを覚えていたことが、新しい名前を選ぶ理由の一つになっています。

『薬屋のひとりごと』では、こうした名前の変化そのものが、人物の運命を読み解く大切な手がかりになっているのです。

相沢 透(あいざわ・とおる)

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