ふたりソロキャンプ 彰人ギア特集｜キャンプ上級者の使用道具を徹底解説

「ふたりソロキャンプ」って、ただのキャンプ漫画じゃないんです。

その真髄は、登場人物の“生き様”がそのままギア選びに現れていること。なかでも滝川彰人のギアは、上級者キャンパーなら思わずニヤつく玄人仕様ばかり。

この記事では、そんな彰人が実際に使っているキャンプ道具を全網羅。その選定基準やスタイルに込められた“哲学”までを深掘りします。

ギアマニアも、これからキャンプを始めたい人も──読むだけで「この装備、真似したい！」ってなるはず。読み終わる頃には、きっとあなたも“ギアで語るキャンパー”になっているかもしれません。

滝川彰人のキャラクター像とキャンプスタイルの関係性

無骨でスマート──“孤高”を体現するキャンプ哲学

「ふたりソロキャンプ」において、滝川彰人（たきがわ・あきひと）は第6巻から登場する中盤以降のキーパーソン。登場時から一貫して、言葉少なにして無骨、そしてどこか達観した雰囲気を漂わせる男だ。

その姿勢は、彼のキャンプスタイルにも如実に現れている。派手さや装飾は一切排除し、選び抜かれた道具だけを静かに、的確に扱う。自然との対話を最小限の装備で行うその姿は、まさに“野営の哲人”。

特にテント選びには、彼の信条が濃縮されている。愛用しているのは「Six Moon Designs Lunar Solo」。シンプルかつ軽量で、トレッカーやUL志向のキャンパーに人気のモデルだが、一般的なソロキャンパーからすれば“ややクセがある”とも言える逸品。だが彼は、そこにこそ“自分らしさ”を見出している。

この選択ひとつを取っても、彰人がキャンプを“自己表現の場”として捉えていることがわかる。自然を相手に、自分にとって最小限で最大効率な道具を選び抜く。そのプロセスそのものが、彼の“哲学”なのだ。

つまり彰人のギア選びとは、ただの趣味ではない。これは“対話”だ。自然との、そして自分自身との静かな語らい。そして彼の姿は、私たち読者にこう問いかけてくる。「あなたのギアは、あなたの何を語っている？」と。

焚き火と共に語る男：彰人のギアに映る人間性

彰人という男を語るうえで、焚き火の存在は欠かせない。彼の傍らにはいつも火がある。炎を囲みながら、ほとんど無言で過ごす時間──それは彼にとっての“自分を取り戻す儀式”のようにも見える。

使用する焚き火台は「GURU GURU FIRE」や「Delta △ Elite」といった、いずれも“風通しがよく、かつ高火力を維持できる”ものばかり。見た目は簡素だが、その使い勝手と火の回りは一級品。燃焼効率の良さは、まるで彼自身の“余計な感情を燃やし尽くすような潔さ”にも似ている。

そしてランタンには「Barebones Beacon Light 2.0」や「Railroad Lantern」など、機能性と雰囲気を兼ね備えたヴィンテージスタイルのLEDを選んでいる。光の“質”にまで気を配るのは、彼が“夜の静けさ”を誰よりも大切にしている証拠だ。

こうしたギアのひとつひとつが、彰人の内面世界を映し出している。無駄な言葉を削ぎ落としたようなキャンプ風景は、まるで“人生の編集”そのもの。彼のそばには常に“静かさを支える道具”がある。

それは決して自己満足ではない。道具を通じて語ること、それこそが彰人という男の“対人距離感”であり、“美学”なのだ。私はそう感じている。

滝川彰人の愛用ギア一覧とモデル解説

テント：Six Moon Designs Lunar Soloの機能性と選定理由

滝川彰人が愛用するソロテントは、米国発のウルトラライトブランド「Six Moon Designs」のLunar Solo。重量わずか740g、トレッキングポール一本で設営可能という超軽量仕様だ。

このテントを選ぶという時点で、彼のキャンプスタイルがただの“趣味”ではなく、“思想”であることがわかる。遮光性・通気性・耐風性を兼ね備えながら、設営の際には地面の形状を見極める繊細な判断が求められる──つまり「使い手を選ぶ」ギアだ。

彰人にとって、このテントは“己の五感を研ぎ澄ますフィルター”なのだと思う。便利さではなく、自然の声を聞くための“最低限のシェルター”。その選択は、まるで「自分と世界との距離を整える装置」のようにも映る。

そして何より、このテントを使う彼の姿が、本当に静かで美しい。風に揺れるシルナイロンの曲線、その中で火を起こし、湯を沸かす彼──まるで詩人のようだと感じてしまうのは、私だけではないはず。

チェア・テーブル：Helinox Tacticalシリーズの強み

座るという行為すら、彼にとっては戦略の一部だ。彰人が選ぶのは「Helinox Tactical Chair」。軍用スペックを意識したこのチェアは、軽量かつ剛性に優れ、収納性も抜群。

ただ、彼は“座る”という行為を長くはしない。あくまで“火の番”の合間や、湯が沸くまでの“隙間時間”に座る。それでも椅子を手抜きしないのは、「一瞬の静寂も、全力で味わいたい」という意志の現れなのだろう。

テーブルも同様で、ローテーブル型のミニマム構成。余白を活かすその配置は、まるで“日本庭園”のよう。必要な道具だけを静かに並べ、道具と道具の間に流れる“無音の美”こそが、彼のスタイルだ。

焚き火台・ランタン：玄人ならではの火と灯りのこだわり

彰人が選ぶ焚き火台は「GURU GURU FIRE Legend」や「Delta △ Elite」。いずれも火の回りと燃焼効率に優れ、風防や五徳としての安定性にも定評があるモデルだ。

興味深いのは、彼が“火を組む”こと自体を楽しんでいる点。道具に頼らず、薪と炭の置き方で炎のかたちを制御している。それはまるで“火の建築家”。道具はあくまで骨組みであり、彼にとって焚き火は“表現手段”なのだ。

ランタンに選ばれているのは「Barebones Beacon Light 2.0」や「Railroad Lantern LED」。暖色のLED光は、強く照らすのではなく、じんわりと周囲を包む。その光が彼の沈黙をより深くしているようにも感じられる。

「目立たないけど、確実に自分を支えるもの」──彼の道具選びには、そんな“信頼”と“愛着”が滲んでいる。だからこそ、読者としてもそのギアに“物語”を感じてしまうのだ。

食と道具に宿る“キャンプの流儀”

ホットサンドメーカーの使い方に見る技巧派キャンパーの姿

滝川彰人が登場するキャンプ回では、調理シーンひとつ取っても彼の“流儀”が強くにじみ出ている。その中でも特筆すべきは、ホットサンドメーカーの扱い方だ。

使用しているのは、アウトドアの定番ブランド「Coghlan’s（コフラン）」のホットサンドクッカー。鉄製の重厚なつくりで、火の通り方にも味が出るクラシックな一品だ。

だが、彼はこれをただの“焼き器”としては使わない。餃子の棒焼き、チーズとナッツのアレンジピザ、ベーコンと野菜の焦がしソテー……まるで“小さな鉄板料理人”のような発想で、次々と食を紡いでいく。

ここには、“無限の制限の中にこそ、創造が生まれる”という信念があるように思う。狭い火面積、限られた道具、単一素材──その中で“どれだけうまいものが作れるか”を自分に課しているような、そんな遊び心がたまらなく粋だ。

そして何より、彼の料理はすべて“無言で進行する”。それがまた、良い。誰かに見せるでも、褒められたいわけでもない。ただ、自分の時間を自分の舌と対話しながら噛みしめる──それが、彰人流の“キャンプ飯”なのだ。

YETI・STANLEYタンブラーに込められた温度管理の美学

そして、もうひとつ注目すべきは飲み物への“温度のこだわり”である。彰人が選ぶタンブラーは「YETI Ramblerシリーズ」や「Clean Kanteen」の真空マグカップ。後に巻末番外編などでも「STANLEYクラシック真空キャンプマグ」などが紹介されており、いずれも“保温・保冷性能”に妥協がない。

この選択に、私は「彼は時間を味わっているのだ」と気づかされた。たとえば──夜明けの冷え込みの中、まだ温もりが残る珈琲を口に運ぶ。あるいは、焚火が落ち着いた後に取り出す冷たいワイン。どちらも、“時間の演出”において温度は決定的な役割を持っている。

つまり彼にとってタンブラーとは、「液体を運ぶ道具」ではなく「時間を封じ込める容器」なのだ。この意識があるからこそ、彼は場面ごとに異なるマグを選び、手に取るたびにその場の“空気”を飲んでいるようにさえ見える。

とくに16巻以降で登場する他キャラクター──結衣や海が、それぞれYETIやSTANLEYの異なるモデルを使っている描写も印象深い。同じ時間を過ごしていても、“何を選ぶか”でその人の“体温”が伝わってくる。これはまさに、“道具を通じたコミュニケーション”の世界だ。

食べること、飲むこと──それは単なる生理行為ではない。彰人にとっては、“その瞬間を、どう味わうか”という哲学の表れ。その器ひとつにも、美意識が宿っている。

16巻以降で登場した新ギアとその意味

OGAWA Stacey ST-IIと“余白ある時間”の演出

16巻以降、「ふたりソロキャンプ」の世界は徐々に“ソロ”の定義を広げていく。そんな転機を象徴するように登場したのが、「OGAWA Stacey ST-II」。言わずと知れた老舗ブランドOGAWAによる名作テントだ。

このテント、収容人数は2～3人。つまり明らかに“ソロ仕様”ではない。それでもあえてこのモデルを選ぶというのは──キャンプのスタイルそのものが、変わってきている証ではないだろうか。

“自分だけの空間”だったものに、誰かが少しだけ足を踏み入れる。あるいは、一緒にいても干渉しない時間を分け合う。それは、単に道具が大きくなったという話ではなく、“時間の使い方”が変化してきたということだ。

そして、このテントにおいて特筆すべきは、2023年に追加された“スカート付き”モデル「Stacy ST-II FALDA」の存在。防風性と保温性がアップしたこの仕様は、まさに“快適さ”と“静けさ”を両立させる優れもの。まるで「人を迎え入れるための余白を持った静寂」だ。

つまりこのテントの選択は、“ふたり”という関係性を再定義するためのギア選びなのだ。孤独と共存、静けさのなかにある他者の気配──それこそが、16巻以降の「ふたりソロキャンプ」が描こうとしている新しい“孤高”のかたちなのかもしれない。

真空マグカップに見るキャラ別のスタイル分岐

さらに興味深いのが、巻末番外編で描かれた「真空マグカップ」の使い分けである。YETIのワインタンブラーを使うのは結衣、そしてSTANLEYのクラシックマグを使うのは海。どちらも保温性・保冷性に優れた高品質モデルだ。

ここで注目すべきは、同じような機能を持つギアであっても、それを“誰が使うか”によって空気が変わるということ。YETIの洗練されたデザインを選ぶ結衣は、どこか都市的でスタイリッシュな雰囲気をまとっている。一方、STANLEYを選ぶ海は、野趣あふれるクラシックスタイルで“無骨な温かさ”を感じさせる。

こうしてギアがキャラクターの延長線になることで、物語に厚みが生まれる。つまり読者は、道具そのものではなく、“その人の生き方”を感じ取っているのだ。

そしてこの描写、明らかに“滝川彰人の影響下”にある。彼が培ってきた“道具で語るキャンプ観”が、他キャラクターにも浸透してきたことの表れではないだろうか。

16巻以降のギアたちは、どれも“日常の延長としての非日常”を支えるアイテムばかり。それはまさに、“ふたり”であって“ソロ”であるという、この作品ならではの矛盾と魅力を、見事に象徴しているように思う。

ギアから読み解く「ふたりソロキャンプ」の世界観

道具は“キャラクター”──それぞれの生き様の延長線

「ふたりソロキャンプ」が読者を魅了してやまない理由──そのひとつは、登場人物の“ギアの選び方”にあると思う。なぜならこの作品では、テントやランタンといった道具が、単なるキャンプ用品ではなく“その人の価値観”を代弁しているからだ。

特に滝川彰人は、その象徴的存在。彼の持ち物はすべてが“語る”。Six Moon DesignsのLunar Soloには彼の静謐さが、Barebonesのランタンには彼の灯を守る意志が、そしてSTANLEYの真空マグには、彼が温度にさえ誠実であろうとする姿が宿っている。

そのギアの選定は、まるで“自分という人間を編集する行為”にも似ている。無数の選択肢の中から「これしかない」と言えるひとつを選び抜く。その過程にこそ、彼らの“哲学”がある。

そして面白いのは、ギアが“人物像の解像度”を上げる役割を果たしている点。ギアを見れば、そのキャラがどんな日常を送り、どんな静けさを愛し、何を手放してきたかが、うっすらと浮かび上がる。道具が、その人の“沈黙の履歴書”になっている。

こうした描写の積み重ねが、「ふたりソロキャンプ」をただのアウトドア漫画に留めない、深く豊かな物語へと昇華させているのだと思う。

ギア選びが語る、“孤独”と“つながり”の物語構造

そしてもうひとつ──この作品におけるギアの描写は、“人と人との距離感”を表す装置としても機能している。テントの広さ、ランタンの光量、コーヒーマグの大きさ。どれも些細なようでいて、その“ちがい”が語るものは決して小さくない。

たとえば、1人用テントから2人用テントへと移り変わること。それは、単に“居住空間が広がった”という話ではない。誰かを迎え入れる余白を持ち始めた、あるいは“孤独の中にある共鳴”を受け入れたという内面的変化の象徴でもある。

また、YETIやSTANLEYといったマグの選び方にも、“関係性”のニュアンスが込められている。同じ液体を入れる道具でも、どこかスタイリッシュな結衣と、クラシックで重厚な海。道具が語るのは、“温度”だけじゃない。“人の温度差”まで描き出してしまうのだ。

これはもう、単なるギア解説では済まない。読者は、登場人物が“何を持つか”によって、“どんなふうに他者と関わろうとしているのか”を、自然と読み取っている。そしてそこに、深い共感や、切ない予感を覚える。

「ふたりソロキャンプ」とは、“孤独”を肯定する物語であると同時に、“孤独なまま誰かとつながる方法”を模索する物語なのだ。その鍵が、道具たちの中に静かに潜んでいる──私はそう感じている。

ふたりソロキャンプ 彰人ギア特集まとめ

滝川彰人という人物の魅力を深掘りするには──彼が語る言葉よりも、彼が選んだギアに耳を傾ける方が、きっと早い。

「ふたりソロキャンプ」が私たち読者に訴えかけてくるのは、ただのアウトドアのノウハウや風景美ではない。テントの種類、ランタンの光、湯を注ぐマグカップの手触り──そのひとつひとつに宿る、“人の生き方”なのだ。

彰人が使うSix Moon Designsのテント、Coghlan’sのホットサンドクッカー、YETIやSTANLEYのタンブラーたち。それらはどれも、“孤独を楽しむための相棒”であると同時に、“誰かと静かに時間を分け合うための器”でもある。

そして、16巻以降に見られるギアの変化は、物語が“ソロ”という概念を再定義しはじめている兆しだ。ひとりであることと、誰かといることは、対立しない──その“矛盾”を描くために、ギアという無言の語り手たちが配置されている。

だからこそ私は思う。この作品におけるギアとは、“演出”であり“伏線”であり、“キャラクターの感情”そのものなのだと。

もし、この記事を読んで「このギア、気になる」「このスタイル、真似したい」と感じたとしたら──それはきっと、あなた自身の中にも“何かを語りたい”というキャンプ哲学が芽生えはじめている証拠だ。

さあ、次のキャンプには、どのギアを持っていこう。あなたの中の“滝川彰人”が、静かに教えてくれるかもしれない。